独自の検定試験「本数検」で、
自ら学び考える習慣を身につける

本郷中学校・高等学校

すべての経験から学ぶ姿勢を身につける本郷の教育

1922年創立の本郷中高は、「文武両道」「自学自習」「生活習慣の確立」の3つを教育方針とする男子校だ。大学進学実績だけでなく、部活動での活躍も注目を集めている。本郷の教育の特色について、数学科を担当する入試広報部長の野村竜太教諭に話を聞いた。


級・段位制で生徒のやる気を引き出す本数検

2003年から行われている「本数検」は、正式名称を「本郷数学基礎学力検定試験」と言い、学校独自の数学検定試験だ。年3回、長期休暇後の4月・9月・1月に実施している。50分間100点満点のテストで、得点に応じて級・段が認定される仕組みだ。本数検の成績優秀者や学力伸長者は、朝礼などにおいて全校生徒の前で表彰される。部活動等で活躍した生徒同様、勉強を頑張った生徒も評価される機会を用意している。

中3の第2回まではその学年専用の問題が与えられるが、それ以降は中学生も高校生も同一の問題で試験を受ける。高1から高3までのすべての問題が配られるので、生徒は自分で好きな問題を選んで解答する。高1の生徒たちに高3数学の難しさを体感してもらうのが目的だったが、数年前から高3の問題を解く者も出てきたという。また、当初は段位を設けていなかったものの、上の級を取る生徒が増えてきたため、初段、弐段、参段が追加された。本数検実施の経緯について、野村竜太教諭は次のように説明する。

「以前は実力テストを行っていました。本校では、過去の生徒の得点と大学入試合格結果を相関させたデータを蓄積しています。自分の到達点を把握しやすくし、さらに通過点がわかるようになればいいと思い、本数検を考案しました。模試の偏差値ではどれくらい力を伸ばせば志望校に手が届くのかがわかりにくいのですが、校内で行う本数検の級や段に置き換えることで努力の度合いがイメージしやすくなります。過去問も参照できますので、どれくらいの点数を取ればよいかもわかります」

本数検の問題の特徴は、試験範囲が広いことだ。一夜漬けの勉強では通用しない。休みの間に今まで習ったところを復習し、継続して勉強してほしいという願いが込められた出題だ。そのため、問題は普段の授業で扱っている問題集から出題される。野村教諭が言う。

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「中学受験で入学した生徒たちは、勉強に関するマネージメントを塾の先生や保護者が行っている場合が多いのです。中学に入ったらわからない問題は自分で把握し、それを解くために何をしたらいいかを自分で調べてほしいと思います。与えられた問題をそのまま解くのではなく、きちんと試行し、それに伴う準備をするという“自学自習”のスタイルを身につけてもらうのが狙いです。これは数学に限らず他の科目にも生かすことができます」

中1と中2が互いに刺激し合って高め合う合同授業

本郷には先輩と後輩が関わる機会がたくさんある。その一つが中学で行われる合同授業だ。中2が中1に数学の学習に関するアドバイスを行うもので、今年で9年目を迎える。毎回異なるテーマに沿って、年に4〜5回実施している。

「自分だけ高い点数を取ることを中高の6年間で磨いてもあまり意味がありません。本気になればいつでもできるからです。そうではなくて、互いを高め合うことを味わってもらうために実施しています。本校は部活動が盛んで、先輩と後輩が互いに切磋琢磨していますが、それを勉強面でも実践するというのが合同授業の趣旨です」(野村教諭)

思春期真っ盛りの中学生には、先生や保護者の言葉がしばしば受け入れにくいことがある。同年代の先輩から言われたことは素直に受け止めやすい。また、当初は中1のために始められた合同授業だが、中2のためにもなっている。教えるためにあらかじめ勉強して備えるなど、責任感が芽生えるという。

自学自習の精神は英検対策にも表れている。二次試験の面接対策を学校で行っており、放課後に該当の級を保持している高校生が、これからその級を受ける生徒の面接相手をしている。教員が対応していた頃よりも質問が増え、時間も多く取れるようになったので、英検の取得率が上がったという。

完全中高一貫化に向けての取り組み

一方、本郷中高は来年度に中学校の募集定員を増やし、翌2021年度には高校募集をやめて完全中高一貫校となる。野村教諭がこう話す。

「高入生は高2で中高一貫生と同じクラスになります。高1の時に数学の補習授業を行い、一貫生のカリキュラムに追いつかせていました。そのため、負担が大きく部活動に参加する時間も少なくなるなどの弊害があります。今後は新学習指導要領の改訂があり、高校で習う内容もボリュームアップします。現在は高入生に合わせて進度を遅くしている科目もありますが、完全一貫校化によってすべての科目で進度の緩急がなくなり、違和感なく6年間勉強することができるようになります」

さらに野村教諭はこう続ける。

「中学入試の定員が増えるので、本郷を第一志望とする生徒にとってはチャンスが広がります。本郷では縦のつながりを大事にしているので、わからないことがあれば何でも先輩に聞けるという文化があります。受験校を決める際にはどこに行きたいかだけではなく、その学校で何をしたいのかをぜひ考えてほしいと思います」

取材日:2019.8.30