最先端の環境でIT技術を学ぶ
独自のプログラミングキャンプ

海城中学高等学校

主体的に行動し、ベストなプランを考えるグローバル部の挑戦

海城のKSプロジェクトは、各教科のカリキュラムを超えた生徒の主体的な学びの場だ。生徒の興味・関心を掘り起こす様々なプログラムがある。その一つ、プログラミング講座ではプログラミングやコンピュータサイエンスの基礎を学ぶ。週1回の講座の他にも年1回、校外でIT・プログラミングキャンプを開催。ICT教育部の平田敬史教諭と竹田昌弘教諭に話を聞いた。


IT技術は将来の可能性を伸ばし、人生を豊かにするために必要なツールだ。その技術を使って、自分がつくりたいものや思いを形にしていくというのが、海城のプログラミング講座の目標だ。週1回、放課後に行われる講座では、情報科の教員と大学生メンターのサポートを受けながら、生徒一人ひとりが独自のアプリを開発している。

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このプログラミング講座の他に、海城では年1回、プログラミングスクールを運営するLife is Tech!(ライフイズテック)が主催する3日間のIT・プログラミングキャンプを実施。ゲームや広告・メディア事業を展開する株式会社ドリコムの支援を受けて同社で開催された。内藤裕紀社長は海城の卒業生だ。今年2回目となったこのイベントには、中2から高2まで、プログラミング講座の受講者以外の生徒も数多く集まった。キャンプの狙いについて、平田敬史教諭がこう話す。

「今の中高生は、子どもの頃からパソコンやスマートフォンに触れていますが、情報やサービスを消費するだけの人も多い。このキャンプは、そういう生徒たちが実際に作り手側になる貴重な機会です。作り手としての意識を持つと、IT機器の活用の仕方や世界の見方が変わってくるので、テクノロジーの使い方を学び、自分の可能性を広げてほしいと思います」

このキャンプでは、「iPhoneアプリ開発」「Androidアプリ開発」「LINEスタンプ開発」「Unityゲーム開発」「Webデザイン」「デジタルミュージック制作」「映像制作」の7つのコースから各自がコースを選択。6人で1つのチームになり、チーム内でコミュニケーションをとりながら、一人ひとりが独自の作品を制作した。

今回、初めてプログラミングを体験する生徒も多かったが、チームを誘導する大学生のメンターのもと、スムーズに作業を進めていた。

「海城生は学年が違っていてもお互いのコミュニケーションがよくとれており、仲が良いのが印象的でした。また、プログラムへの理解力が高く、パソコン操作にも慣れている印象を受けました。学んだことを自分の中に取り入れて、それを発展させていく力もかなりのものでした(Life is Tech! 吉原恵子さん)」

一方、IT業界の第一線で活躍する内藤社長の講演も行われた。竹田昌弘教諭が言う。

「講演後、内藤さんには生徒からのさまざまな質問に答えていただきました。時代の急激な変化にどう対応していくべきか、というような質問も多く、内藤さんのお話は生徒にとっていい刺激になったと思います。この時代に自分たちが何を考え、どのように生きていくべきかを考える機会にもなったでしょう」

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海城のICT教育

海城の情報科では、2017年度からコンピュータ教室のパソコンをすべて、アプリ開発やウェブ制作、画像編集がしやすいMacに変更した。また、高1の情報科の授業でも、音楽や画像・映像編集、ウェブデザイン、アプリ制作など、自分の好きなものを制作する課題を出している。竹田教諭が言う。

「クリエイティブな活動は、生徒の創造力や知的好奇心を満たす場でもあります。今後、プログラミングで学んだことを他のさまざまな教科に生かしていくことで、学びの相乗効果も期待できます」

情報科の取り組みにより、生徒のITリテラシーは年々、高まっているという。

最後に、海城の特色について平田教諭がこう話す。

「海城は、これまでの伝統を受け継ぎつつ、生徒にとって必要なことを柔軟に取り入れる改革を進めています。そうした、"伝統と革新"の融合が海城の特色の一つになっていると思います」

海城OBインタビュー

株式会社ドリコム 代表取締役社長 内藤 裕紀さん

テクノロジーによって世界が急激に変化しているさまを、IT業界で間近に感じる者として、将来子どもたちがこの業界に飛び込むきっかけをつくることは使命の一つだと考えています。中高時代の早い段階でIT技術を体験することは、将来の職業について考えるきっかけになるかもしれません。ですから、ご縁がある海城の後輩たちをプログラミング教室などの様々な形でサポートしています。

海城の教育の目的は「新しい紳士」の育成。偶然ですが、私の会社も同じバリューを掲げています。高校時代の多感な時期に海城で育まれた資質があるのだと感じています。海城での3年間は自由にいろんなことにチャレンジした時間でした。先生に叱られることも多かったのですが、勇気を振り絞って既存のレールからはみ出し、その中で自分の道を見つけていく体験をしました。それが、今の自分を形づくる原体験になっています。

私が起業した背景には、子どもの頃に体験したものづくりの楽しさがあります。今回のプログラミング教室を通じて、IT技術を使ったものづくりを知ってほしい。そして、将来エンジニアや起業家として、世の中を変える一歩を踏み出す人材を多く送り出したいという思いから、今後も海城生を支援していきたいと考えています。

取材日:2019.7.12