中高一貫のきめ細かな指導体制で主体的に学ぶ
姿勢を養い、社会に貢献できる人材を育てる
埼玉栄中学・高等学校

建学の精神「人間是宝」=「人は生きた資本であり、資産である」のもと、日本人としての常道に基づく人間性豊かな徳操を養い、生徒個々の可能性を引き出す教育を実践している埼玉栄中学校・高等学校。25年中学入試の志願者は5226名と2年連続で5000名を超え、県内で志願者が多い人気校へと成長した。県外から通う生徒が増加傾向で、生徒の約3割が都内から通学している。大学合格実績も好調だ。今年卒業した医学クラスの4期生は、国公立大などの医学部医学科に計7名が合格。今年度校長に就任した勅使河原貞先生に、埼玉栄の教育について話を聞いた。
建学の精神のもと、生徒の可能性を広げていく
埼玉栄では創設者である佐藤栄太郎氏の意思である建学の精神「人間是宝」のもと、生徒一人ひとりの可能性を広げる教育を実践している。これを具現化したのが校訓「今日学べ」で、「すべての人に平等に与えられた時間を有効に使い、意義ある人生にするために、日々努力して知能と精神を養っていく」ことを学校生活の指針としている。そのもとで、5つの教育目標を設定。
・けじめある心を育てる
・自己開発に努力する心を育てる
・創意工夫する心を培う
・敬愛と感謝の心を育てる
・健全な体と心をスポーツと文化で育てる
これらの教育目標を実現する学習指導と生活指導が特徴だ。今年度校長に就任した勅使河原貞先生がこう話す。「本校にとって、教育における不易と流行、すなわち、時代が変わっても変えてはいけない根本的なものが、建学の精神『人間是宝』です。その理想を追求していくために、一度原点に帰り、教育目標など本校の基本的な内容を徹底していきたいと考えています」

学習指導と生活指導を両立した生徒主体のカリキュラム
6年間の中高一貫体制で学ぶ生徒には、入学段階から3つのクラスを用意。世界に通用する医師を目指す医学クラス、難関大学への進学を目指す難関大クラス、勉強と部活動を両立して基礎学力を確立する進学クラスで、それぞれの目標に応じたカリキュラムがある。勅使河原校長が言う。
「中学は定員120名の少人数制ですが、医学部を目指して学力を高めたい生徒や、勉強と部活動を両立したい生徒など、さまざまな生徒がいます。早い時期からクラスを分け、覚悟を持って学習することで、幅広い進路を実現しています」
クラス別のカリキュラムに加え、演習の機会が多いことも埼玉栄の特色の一つだ。通常の授業と演習授業を組み合わせて、学内で勉強を完結できる環境を実現している。朝の0時限と放課後の7時限には希望者対象の演習授業を実施。0時限は英語・数学・国語の基礎基本の定着をサポートする内容だ。応用的な演習が中心の7時限では、同校教員か外部講師の授業を選択できる。医学クラスは外部予備校による補習も行っている。
「医学クラスの演習授業は夕方4時から8時40分までで、他の演習より時間が長いですが、中1から参加している生徒もいます。授業と連動した演習も多く、教科担当の教員と外部講師が情報共有しながら指導することで知識も定着しやすくなります。こうした取り組みにより、実績も着実に上がっています」(勅使河原校長)
今年卒業した医学クラスの4期生は、国公立大を含む医学部医学科に計7名が合格。生徒一人ひとりに応じたきめ細かな指導体制が実績に結びついている。
授業力向上に取り組んでいることも、実績が上がっている要因の一つだ。年2回の研究授業月間では、教員同士が互いの授業を見学してアドバイスするなど授業をブラッシュアップしていく体制がある。また、生徒には授業評価アンケートも実施。生徒の意見を積極的に取り入れ、授業改善に生かしている。
課題の提出など学校生活のルールを守るための「凡事徹底」した生活指導も特色だ。これにより、けじめをつける心を育て、社会で活躍できる人間力を養っている。

クラス別の校外学習を実施、多彩な学習の場を用意
学校行事にも力を注いでいる。同校では文化祭や体育祭、合唱コンクール、英語スピーチコンテスト、伝統をつなぐ会といったさまざまなイベントを用意。伝統をつなぐ会は、各分野で活躍している先輩の話を聞く機会で、自分の数年後の姿を具体的にイメージしやすい。また、中学生全員が参加するパラスポーツ体験会は、オリンピック選手を数多く輩出している埼玉栄ならではの取り組みだ。選手の講演やスポーツ体験を通して、パラスポーツについて理解を深めている。
校外学習も多彩だ。クラスによって内容が異なり、医学クラスでは毎年医学部を訪問し、大学生と一緒に授業や実験を行う。難関大クラスでは、東大の史料編纂所や官公庁を訪問。進学クラスは、理科の授業の一環として天文観測所での学習を取り入れている。この他、夏には宿泊型の校外学習もある。「校外学習は、普段の勉強や将来へのモチベーションを高める効果があります」と勅使河原校長。
学校行事や校外学習については、振り返りをして、ポートフォリオに蓄積していく。自分の成長を可視化することで、普段の学習にも生かしている。
コロナ禍前に実施していた海外への修学旅行も来年から再開する予定。日本の伝統文化や風習、風土についてしっかり学習した上で、中学3年次にオーストラリア、高校2年次にアメリカに行き、国際理解を深めていく。
最後に、今後の目標について勅使河原校長がこう話す。「本校は生徒主体のカリキュラムのもと、東大からオリンピック選手まで多彩な進路を目指せる学校です。実績は着実に上がっていますが、さらに高い期待に応えられるように教育力を高め、生徒一人ひとりが希望する進路を実現していきます」
取材日:2025.5.15