左から松倉功和教諭、笠間芳幸教諭、諌山佳子教諭

1935(昭和10)年に創立された私塾を前身に、1948(同23)年に誕生した麗澤高等学校。創立者の廣池千九郎が重んじた道徳教育をベースに、心を育てる「知徳一体」の教育を実践している。なかでも80余年の寮教育には定評がある。そこで、男子寮担任の松倉功和教諭、女子寮担任の笠間芳幸教諭と諌山佳子教諭に寮教育について話を聞いた。

道徳教育を人間教育の柱とする麗澤高校では、道徳を実際の生活の中で学ぶために、創立当初から寮教育を実践してきた。現在は高校生の約1割が寮で生活している(中学生は通学のみ)。

寮(麗寮)は緑豊かな自然に囲まれたキャンパスの一角にある。自分と価値観や背景が異なる生徒と一緒に生活し、さまざまなことを実体験として学ぶ場だ。その中で道徳心を育てるとともに、自己管理力・コミュニケーション能力・行動力・学力の4つの力を培い、世界で活躍するグローバルリーダーを育成している。

麗寮は男女それぞれ2つの寮を編成し、高1〜3の各学年が混ざった3〜4人の部屋で共同生活を送る。多くの人と触れ合えるように、1年毎に寮生が入れ替わり、部屋の顔ぶれも学期ごとにかわる。上級生が下級生を指導・サポートする体制の下、自分たちの力で寮生活を運営するというのが基本的な方針だ。上級生が率先して行動し、下級生はその姿を見て成長する「率先垂範」の精神を養うことで、周囲への心遣いや判断力なども身についていくという。寮生の中には、生徒会長やクラス会長に選出される生徒も多いようだ。男子寮担任の松倉教諭がこう話す。

「寮生だから特別に選ばれているわけではなく、そういう資質を寮で磨いているということだと思います。寮でリーダーシップを身につけ、クラスなどでも生徒を引っ張っていこうという気持ちが自然に育まれているのでしょう」

麗寮では、定められた日課に沿って一日の生活が組み立てられている。一日の始まりである朝礼では、各自の故郷の方向に向いての家族へ挨拶、ラジオ体操などを行う。夜には、各寮ごとに夕礼を行い、一日をふり返る。女子寮担任の笠間教諭がこう話す。

「毎日、朝礼、夕礼を繰り返すことで、国や親の恩が少しずつ心に染み渡っていきます。そういう生活の中で、感謝の心、自立の心、思いやりの心など、道徳的な心が育くまれていくのだと思います」

朝食後は学校に登校し、通学生とともに授業や部活動に取り組む。夕食後には約3時間の自習時間が設定されている。授業と同じように時間を区切りながら、授業の予習・復習などを行う。自学自習の習慣を身につけながら集中して学ぶ時間となっている。高3は外部の塾などに通うことも可能だ。ただ、隣接する校舎で行われる夜間講座などきめ細かな指導体制があるため、学内の取り組みだけで志望する大学に合格する生徒も多く、難関国立大や医学部に進学するなどの実績をあげている。

麗寮には生徒の居室のほか、学習室や集会室、洗濯室、浴室が整備されている。女子寮には調理室やピアノ室、男子寮にはトレーニング機器を整備したロビーなど、自由時間を楽しく過ごせる施設も充実している。

また、年間を通して様々な行事も行われている。新入生歓迎会やバーベキュー、ハロウィーン、遠歩きなど、男女合同で行われるイベントも多い。寮で3年間、仲間と生活することで、寮生の絆は自然と深まっていくという。最後に麗澤の教育について、諌山教諭がこう話す。

「本校には多くの生徒が人間性を高めたいという意識を持って入学しています。教員と生徒、上級生と下級生など、人と人との関わりの中で心を育てていくという校風は、創立以来、変わらず受け継がれてきています。私たち教員も生徒から学ぶことが多くあり、互いに学び合えるところが麗澤の良さだと思います」

寮を選んだ理由や大変だったこと、得たもの、麗澤の魅力などについて教えてください。

左:佐々木 日菜さん

麗澤の卒業生だった祖父から話を聞いて、いろんな経験ができそうなので入学を決めました。日課が多いので慣れるまで大変でしたし、今は5年生(高2)として下級生を指導することの難しさを感じています。でも、寮生活を通してかけがえのない友人ができ、些細なことにも気遣いができるようになりました。勉強の面もそうですが、実践しなければ学べない道徳を寮の中で学べるので、人間的にも成長できたと思います。

右:砂川 瑚幸さん

家族以外の人が常に一緒にいるので、入学間もない頃は一人の時間がほしいと思いましたが、少しずつお互いのことが分かるようになり、一緒にいても素の自分でいられるようになりました。価値観が異なる人たちと関わるようになって視野や世界観が広がり、いい関係を築くことができています。尊敬できる先生が多いことも魅力の一つで、個別指導を頼むとわかるまで付き合ってくださいます。

左:尾島 玲穂さん

母が麗寮の出身で、勧められて寮体験に参加したところ、先輩たちがかっこよく、こんな先輩になりたいと思い、入寮しました。親と離れたことで、親の存在の大きさを感じ、感謝ができるようになりました。係活動などさまざまな仕事をこなしていく中で先輩や後輩と関わり、コミュニケーション能力が上がったと思います。寮のロビーにはトレーニング機器やテレビがあり、フリータイムにはいろんな人と楽しく過ごせる環境があります。

右:佐藤 銀河さん

中学から麗澤に通っており、尊敬する部の先輩の影響を受け、寮に入りました。寮で暮らす中で、何気ないことにも感謝の心が持てるようになりました。また、寮での係活動を通して大きな声で、はきはきと話せるようになったとみんなからいわれます。先輩や後輩、先生に挨拶するのは当然ですが、校内を歩く一般の人たちにも挨拶をする習慣ができました。麗澤は、そういう当たり前のことを実践していける学校です。

取材日 2018.9.27
麗澤中学・高等学校HP
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