1885年の創立以来、「知・仁・勇」を備えた人間力を育てる教育を行っている成城中高。伝統の男子教育や独自のグローバル教育などに定評がある。特色の一つである探究型学習について、社会科の佐藤暢章教諭と村田裕教諭、入試広報室の宮本八太郎教諭に話を聞いた。

中学1年から自分でテーマを設定し、調査して結果を発表する探究型学習を行っている。中学1・2年では、社会科の夏休みの研究として環境地図を作成する。自分の住む地域の環境について調べ、その研究成果を一枚の地図に表す取り組みだ。

この取り組みは地理の地域調査の一環として実施されている。優秀な作品については、環境地図教育研究会が主催している「私たちの身のまわりの環境地図作品展」に応募。入賞する生徒も多く、2016年度には、国土交通省国土地理院庁賞に選ばれた生徒もいるという。

成城では2006年度からこのコンテストへの参加を開始した。その経緯について、社会科の佐藤暢章教諭がこう説明する。

「地域調査は地理で扱う単元の一つです。しかし、学外でのフィールドワークが必要になるため、授業で教えるのは難しい分野です。授業内でそうした時間を取りづらいこともあって、どう扱うべきか考えていたときにコンテストのことを知り、夏休みの研究として取り入れました。毎年、私たち教員には思いつかないような多彩な地図が集まります」

生徒たちが自分で決めたテーマには、「家の周辺にある街路樹の種類」や、「電車の騒音」「マンホールの形」などさまざまなものがある。普段の生活の中で、気にとめられないような身のまわりの事象について目を向け、調査を進めている。村田裕教諭がこう話す。

「夏休みの宿題の一つではありますが、地理に興味がある生徒はかなり熱心に調査を進め、力を入れた作品を提出してきます。この機会を通して興味のあることに積極的に取り組み、関心の幅を広げていく体験をしてもらいたいと考えています。また、研究成果を一枚の地図に表すことは、表現力の育成にもつながります。表現するにあたって試行錯誤し、自分なりの表現を突き詰めてほしいと思います」

地図を作成するために、自分でテーマを決めて計画を立て、どのような調査が必要なのかを考えた上で、テーマとなる環境を観察・記録していく。この取り組みを行うために、1学期の社会科の授業の中で地域調査の仕方を教えているほか、過去に出展した先輩の作品を提示してイメージを伝え、人に理解してもらえるような地図の作成につなげている。

「地図作りについては、教員はきっかけを作っていく程度で、あまり口を出さないようにしています。夏休み後、生徒に自分の地図について1分間の説明をしてもらいます。その土地に暮らしている人でないと知らないような情報を短時間で人に理解してもらえるよう、伝える力も磨いています」(佐藤教諭)

探究型学習には、社会科の環境地図作成のほか、中1の夏休みの課題である、自分の好きな生き物について観察しまとめていく理科のポスター発表もある。中3の公民では希望者を対象に、投資学習の一つとして企画されたコンテスト「日経ストックリーグ」に参加する取り組みも行う。様々な科目において、生徒の興味をひくような課題を用意することで、それがきっかけとなり、自ら学びとる意欲と姿勢が育まれていく。村田教諭が言う。

「地図を作成することで地理に関心を持ってもらいたいというのが社会科としての願いですが、地理のほかにも、男子の知的好奇心を吸い上げ、視野を広げていく多彩な取り組みがあります。そうした環境の下で一人ひとり好きなことを追究し、卒業後には様々な分野で活躍してほしい。それが私たち教員の目指しているところです」

中高完全一貫化に向けて、新たなカリキュラムを整備

 一方、成城中高は来年度から高校募集をやめて、中高完全一貫校となる。それに向けて現在、カリキュラムの再構築が進められている。入試広報室の宮本八太郎教諭がこう話す。

「中学から入学した生徒と高校から入った生徒では培ってきた土台が異なるので、探究型学習など様々な場面で学習歴に差が生じてしまうケースがありました。中高完全一貫校になることでこういった取り組みがしやすくなります。例えば、中3で行っていた卒業研究を、中3・高1の2年間かけて調査・分析し、論文にまとめて発表するというようなこともできるようになります。生徒のためになるものは随時検討して、カリキュラムに取り入れていきたいと考えています」

新カリキュラムでは、生徒の知的好奇心を発揮する場をさらに増やしていくという。現在進んでいる大学入試改革によって、高校時代の学校生活の過程が重視される推薦・AO入試は増加傾向にある。探究型学習の機会が増えることで、こうした入試にもチャレンジしやすくなる。最後に、宮本教諭がこうメッセージを送る。

「生徒はみんな異なる個性を持っています。成城には昔から、生徒を型にはめることなく、一人ひとりをしっかり伸ばしていく風土があります。学校生活を面白く過ごしていくきっかけになる仕掛けをたくさん用意していますから、いろんなことに好奇心を持って、入学してもらいたいと思います」

取材日 2018.8.27
成城中学校・高等学校HP
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