興味があることを自由に
深めていける海城の教育

海城中学校・高等学校

興味があることを自由に深めていける海城の教育

今年、地学部では部員が行った「新宿区立おとめ山公園周辺の地下水の変動把握及び涵養域の推定」の研究が、日本地球惑星科学連合の2015年大会で、全国43校77件の中から最優秀賞に選ばれた。地学部の部員たちと、顧問の上村剛史先生に話を聞いた。


地学部では7年間、学校の近くにある「おとめ山公園」の湧水に関する研究に携わってきた。今回、研究を発表した高2の清水彬光さんたちは、これまで計測してきた湧水量のデータと、学校付近の民家にある井戸の地下水位のデータをもとに、降水量から地下水の変動を求める数値モデルを作成した。その結果、雨のあとは湧水量が増え、近くの井戸の水位も上がることを確認。また、地下水の涵養域が半径3キロ以内の約10㎢と予想以上に広いことを割り出した。清水さんは言う。

「先輩たちが7年間、積み重ねてきたデータを受け継ぎながら、毎日計測を続け、今回の研究にまとめました。湧水の大部分は地下にあり、直接目に見えず、形にもとらえられないものなので難しいと感じることもありましたが、それがやりがいにもなりました」

この研究は文化系の部活動に勤しむ高校生の祭典、全国高等学校総合文化祭の東京都代表にも選ばれている。

フィールド調査を通して、研究活動に触れる地学部

地学部には天文や恐竜、気象などに興味がある部員が多い。好きなことに思い切り打ちこめるため、部員たちは縦と横のつながりが強く、学年に関係なく仲良くなれるようだ。地学部には今回、最優秀賞に選ばれた気象・水文班のほか、天文、地質、自然災害の各班がある。同大会では、おとめ山公園の湧水の研究以外にも、天文班が研究した夜空の明るさについての研究が2位と3位を受賞している。顧問の上村先生が言う。

「私は大まかなテーマを設定することもありますが、基本的に部員たちが内容を決めて、各自で研究を進めています。また、研究活動では自分たちの手で観測したり、調査を行うことが大切です。ですから、地学部では合宿などを行い、フィールドで巡検・調査する機会を豊富に用意しています」 発表の際、資料や原稿の作成なども部員が行っている。また、膨大なデータを解析していく際、プログラミングなどの技術が必要となるが、それらの技術も部員が自分たちで身につけているという。

将来につながる幅広い視野を養う教育

海城では特別なクラスを設けず、みんなが同じ環境の下、勉強や部活動に励んでいる。高2から文系と理系に分かれるが、理系を選択しても、受験に使わない科目も履修する。上村先生は言う。

「受験に直接関係なくても、社会に出た時に必要なことはたくさんあります。ですから、海城では各教科のほとんどの分野を学びます。その時は分からなくても、一度でも学んだことがあると、必要になった時に理解しやすいはずですから」

このほか、海城には社会と理科、英語と理科など各教科を融合させたユニークな講習も多い。分野の枠にとらわれない幅広い視野と教養を磨いている。

最後に、地学部の部員たちが、受験生に向けてこうメッセージを送る。

「海城は受験に関わることだけでなく、社会に出てから必要なことを教えてくれる学校です。例えば、社会の入試では論述問題があり、かなりの分量を書くことになると思いますが、入学後も、社会科の授業では自分で調べたことをレポートに書く機会が数多くあります。このように、入試問題は海城の学びを知るきっかけにもなると思います」

中学の時、気象の授業で地学に興味を持ち、地学部に入りました。当時は新宿区おとめ山公園の湧水量を調査していましたが、大学でそのデータを「東京都区部の湧水量に水道漏水が与える影響」の研究にまとめ、公園の湧水量の減少が水道管からの漏水の減少によることを突き止めました。受賞できたのも、後輩がデータを取り続けてくれたおかげです。今後は大学院で、地球の大規模な水の流れについて研究したいと思います。海城の教育で印象に残っているのは、中学での社会科の課題です。毎学期、かなりの量のレポートを書かくことになりますが、そこで文章を書くことに慣れることができました。また、高1で気象予報士の資格を取得しましたが、海城には勉強したいことを自由に学べる環境があります。いろんなことができる学校なので、入学したら6年間、楽しく過ごせると思います。

取材日:2015.6.6