スカイプ英会話やイートン校への
サマースクールなど、心の壁を破る
巣鴨中高の英語教育

巣鴨中学校・高等学校

スカイプ英会話やイートン校へのサマースクールなど、心の壁を破る巣鴨中高の英語教育

巣鴨中高は今年、創立106年を迎えた男子校だ。「硬教育」の伝統の下で行われる多彩な学校行事に大きな特色がある。その一つが、イギリスの名門パブリックスクール、イートン・カレッジへのサマースクールだ。サマースクールと今年度から始まったスカイプによる英会話の授業について、話を聞いた。


2002年から始まったイートン・カレッジでのサマースクールは、中学3年〜高校2年の希望者を対象としている。希望者が多い人気のプログラムのため、成績と人物評価をもとに選抜される。毎年、40名が参加している。今年、引率した舟久保栄一教諭がサマースクールの魅力について、次のように説明する。

「サマースクールは、実際にイートンの校舎や施設を利用しながら学べる贅沢なプログラムです。また、多くの著名人を輩出してきたイートン校で受け継がれる伝統的な人間教育を受けられることも魅力の一つとなっています」

イートン・カレッジのキャンパスには、生徒が過ごすハウス(寮)や教室のほか、スポーツ施設や劇場、博物館などが点在している。サマースクールに参加する生徒たちは、そうした歴史ある施設を使用しながら過ごすことになる。

サマースクールでは、生徒と巣鴨の教員、現地のスタッフが一つのハウスで約3週間生活する。現地のスタッフは計5名。このうち1名は、イートン・カレッジで教鞭をとっていた元教員。2名は現在、大学に通っているイートンの卒業生だ。

コースでは、午前中の3時間、教室内で授業を受ける。少人数によるレベル別のクラス編成で語学力を磨くとともに、イギリス文化について学んでいく。自ら発言する機会も多いという。午後は歴史的な名所・旧跡をめぐり、イギリス文化について教養を深めていく。夕食後にはスポーツや音楽、ゲームなどのイブニング・アクティビティーが行われる。

イートン・カレッジのサマースクールに学校単位で参加しているのは、東京の男子校では巣鴨だけだという。受け入れられている理由について、羽場逸夫教諭は次のように推測する。

「評価されているのは、生徒たちの規律正しさではないでしょうか。巣鴨では5分前行動を基本に、さまざまな場面で時間を守ることを徹底しています。そういう面がイートン・カレッジの教育に通じており、彼らが目標としている人材育成にもつながっているのだと思います」

一方、学内では英語教育において新たな試みを始めた。昨年秋から放課後に実施していたスカイプによる英会話の講座を、今年度から中3の授業で週1回取り入れている。

授業では、話す内容を教員と読み合わせた後、25分間、フィリピンの現地スタッフと英語で会話する。内容はすでに習った文法が中心のため、理解しやすく、相手とのコミュニケーションに集中しやすい。また、言葉に詰まっても、相手が丁寧にフォローしてくれる。「スカイプ英会話やサマースクールなどのプログラムを通じて、英語を一つのツールとして積極的に使おうという姿勢が養われます」と山田純三教諭。

イートン・カレッジの参加者の中には、スカイプの授業を受けた生徒もいる。現地で物怖じせずに話すことができたと好評だ。スカイプの授業を担当している高津了之教諭が言う。

「英語力の差は確かにありますが、まずは心の壁を破り、英語を使ってコミュニケーションをとることが大切です。週1回のスカイプの英会話を1年間続ければ、通常の授業の何倍もの効果があるはずです。この取り組みによって、本校の英語教育は変わりつつあり、模試の成績が急激に上がるなど、成果が出始めています。今後、この取り組みをさらに発展させていきたいと考えています」

サマースクールの体験を通して感じたこと

—サマースクールへの参加を決めた理由と、事前の準備について教えてください。

福家 巣鴨のサマースクールは入学前から知っており、入学を決めた理由の一つでした。参加できる年になったので早速、応募しました。

福井 サマースクール前に、授業で1学期間、スカイプで英会話の授業を受けました。授業では、学びたての単語を使うより、よく知っている単語を正しい文法で説明すれば、より伝わりやすいと学びました。その経験が、現地で役に立ちました。

—印象に残ったことはどんなことですか。

福家 授業形態が日本の学校と異なり、対面式の20人1クラスの少人数での授業が新鮮でした。一方、巣鴨では3S精神(スウィッチ、スピード、スマート)といって、「頭を切り替え、すばやく、賢く行動する」ことをよく言われます。そういった巣鴨独自の教えは、イートン校の教育にも通じるところがありました。

福井 広大な敷地にあるイートン校には、博物館もあります。展示のレイアウトが日本と違っていて面白かったですし、展示品を一つひとつ説明してもらえたのが良かったです。また、生活を送る上で大切な規範についても教えられました。

—巣鴨の教育で、どんなところが良いと思いますか。

福井 課題は多いけれど、こつこつ地道に進めていく習慣が身につきます。そういう教育が自分には合っていると感じています。

福家 サマースクールをはじめ、さまざまな行事があることも巣鴨の魅力です。

取材日:2016.9.8