探究学習を通じて、社会を
生き抜く力を養う未来考動塾

保善高等学校

探究学習を通じて、社会を生き抜く力を養う未来考動塾

保善高等学校は都内でも数少ない高校のみの男子校だ。特別進学クラスでは昨年から、自ら考え主体的に行動することができる学習活動の場として未来考動塾をスタート。2年目を迎え、その進捗状況とこれからの目標について、特進部長の山田優教諭に話を聞いた。


保善高等学校には、特別進学・大進選抜・大学進学の3つのクラスがある。このうち、国公立大学や難関私立大学を目指す特別進学クラスでは、学校生活のすべての場面を学びの場と捉え、「しなやかな知性」と「豊かな感性」を育む教育を実践している。昨年からは、総合学習の時間を活用した未来考動塾がスタート。「考え」「動く」ことをテーマに、自ら問いを立てて調査し、その成果をまとめてプレゼンテーションをする探究学習の取り組みだ。その中で、自ら物事を考え、主体的に行動する力を養っている。

開始2年目を迎え、生徒たちの様子について特進部長の山田優教諭がこう話す。

「最初の頃は、自分で調べ、まとめて発表することを面倒がる生徒もいましたが、最近は多くの生徒が面白くなってきたと意欲的に取り組むようになっています。自分が面白いと思うテーマを深く掘り下げていくことや、凝ったスライドを作ることなど、面白いと思うポイントは生徒によって違うようですが、1年間でそれぞれが成長を遂げ、2年目の学習に歩を進めています」

1年次は「知の技法」と題し、探究学習の一連の流れを学ぶ。1学期は、一つのテーマについて自分で調べて発表するために必要な基本的スキルを磨く時間となる。最初のテーマは「他己紹介」だ。クラスの生徒にインタビューし、情報を引き出して一つのストーリーに組み立てることで、相手がどういう生徒なのかという“問い”に答えていく。その中で、コンピュータやプレゼンテーションソフトの使い方も学ぶ。

また、特別進学クラスでは1年生全員が夏休みの勉強合宿に参加する。合宿内でも未来考動塾の時間を設け、講義型の授業でメディアリテラシーと論理的思考力を磨いている。

2〜3学期には、同校がある新宿区に焦点を当てた「新宿まちづくりコンペティション」を実施している。新宿区の歴史や背景を理解し、抱えている複数の課題の中からテーマを選択。自分が区長になったとしたら、どういう政策を立てるか考える。「学力を上げるにはどうしたらいいか」「新宿区の緑化推進について」「公害対策のために公共の交通機関をどう生かしていくか」など、生徒一人ひとりがさまざまな問いを立てて調査を進めているという。その上で、プレゼンテーションの場となる模擬政見放送を行い、模擬区長選挙を実施する。

2年次は「知の深化」と位置づけている。1年次の活動で培ったスキルをもとに、沖縄学と銘打った探究学習に取り組む。沖縄について生徒たちの興味を掘り起こした上で、生徒自身に問いを立てさせ、各自でその答えを探り、発表する。12月に行われる沖縄修学旅行を経て、1年間の成果を最終的に一つのガイドブックにまとめていく。山田教諭が言う。

「生徒が最も苦労しているのが、テーマを見つけることです。彼らには、問いの質にこだわり過ぎず、調査を進める中で行き詰ったら、方向性やテーマを柔軟に変えていくように促しています。また、今後は文献やインターネットで情報を集めていくだけでなく、直接人に会ってインタビューすることにもチャレンジしていきたいと考えています」

3年次の「知の創造」では、国際的視野に立ち、各自の興味・関心に従って知的生産活動を行う。1年間かけて研究を進め、集大成となる論文を完成させる。

特別進学クラスの生徒の変化について、山田教諭は次のように話す。

「未来考動塾の活動によって、自分の人生設計や進路についても早くから具体的な目標を設定し、どうすればその目標を達成できるのか、その実現までを具体的にイメージして行動できる生徒が少しずつ増えてきました。進路の面でも成果が出てきたと感じています」

一方、特別進学クラスは昨年、自分たちで勉強をして、課題に取り組む自学自習の姿勢を養うカリキュラムへと変更した。7時間授業を4日間から2日間に減らしたことで、教員たちも生徒たちに自宅でどう学習させていくのか考えながら授業を行うようになったという。

さらに来年度から、3年次は国公立大と難関私立大の各コースに、それぞれ文系・理系を設置した計4コースに再編する。山田教諭がこう話す。

「大学入試改革によって主体性評価が求められるようになってきていますが、高校の3年間、未来考動塾のさまざまな活動で身についた力は、これからの入試に生かせるスキルになっていくはずです。今後、未来考動塾の活動を外部のコンテストなどに結び付けていくことで、さらに効果が上がっていくと思います。高校時代のさまざまな活動を記録していくeポートフォリオの導入も含め、その点についても検討を重ねていきたいと思います」

取材日:2018.9.11