生徒一人ひとりの「自問自答探究」を、
学校が一丸となって丁寧にサポート

二松学舎大学附属柏中学校・高等学校

2011年の中学校開校以来、自然豊かな環境を生かして生徒たちの探究心を育んできた二松学舎大学附属柏中学校・高等学校。当時から掲げていた「自問自答」の力を身につけるために中学校で行われているのが、1年次から始まる「手賀沼地域探究」と、3年次の「自問自答探究」だ。3年間で、生徒たちはどのようにして探究能力を身につけるのか。グローバル探究室長の森寿直先生と、実際に「自問自答探究」に取り組む中学3年生の3人に語ってもらった。


―まず、御校の探究活動の概要を教えてください。

森 主軸は大きく3つです。中1、2の「手賀沼地域探究」、中2、3で取り組む「自問自答探究」(卒業探究)、そして高1、2の「自由探究」です。中学入学後、生徒はまず手賀沼をフィールドにして、野鳥観察、水質調査、歴史、文学などの既存のテーマから1つを選び、探究の基本を学びます。そして「問いを立てる力」「情報を集める力」「考える力」「判断・決定をする力」「伝達・表現する力」の5つの力を、段階的に身につけていきます。

―皆さんは、中1でどんな探究をされましたか。

U・H 野鳥観察に参加しました。実際に鳥が観察できる楽しさを知り、その後は手賀沼周辺の野鳥観察会に自主的に参加したり、両親と手賀沼に出かけたりするようになりました。

K・F もともと鳥好きだったので、迷わず野鳥観察を選びました。それまでは鳥を見ても「かわいいな」くらいで終わっていたのですが、中1の探究を通して、「これらの鳥は周囲の環境や人間生活にどんな影響を与えているのかな」というところまで考えるようになりました。

T・E 僕は水質調査に参加しました。近くのビジターセンターで過去の水質の資料を集めたり、水質から手賀沼の現状を分析したりしたあと、水質を改善する方法などを探りました。一連の調査結果をまとめて発表するのですが、問いの立て方からスライドの作り方、発表の仕方まで、一通りの手法が学べました。

森 寿直 先生

「自問自答探究」のテーマは教員が時間をかけて精査

―中3の「自問自答探究」のテーマ決めはどのように行うのですか。

U・H 「自問自答探究」は、探究を論文にまとめ、12月に提出するものです。中1のうちから、中3生や高校生の発表を見る機会が多いので、テーマ決めについては早いうちから意識させられます。先輩たちは堂々としていて、仮説から調査の仕方、考察までもしっかりしているので、圧倒されます。

T・E 先輩方の姿はとても参考になります。中3から始めた探究テーマを高校でも継続していたり、途中で失敗してもその原因を分析してアプローチ方法を変えたりと、どんなふうに探究を掘り下げれば良いのかがよくわかります。

森 上手にテーマ設定をしないと論文が成立しないので、生徒たちには中2の終わりごろに、希望するテーマをレポートにして提出してもらいます。それを教員が会議にかけ、本当に1年間かけて取り組むべき内容か、中学校という環境で実現できるか、簡単に答えが出てしまわないか、などを徹底的に議論します。その結果、多くの生徒はレポートの再提出を何度も命じられることになります。類似したテーマを挙げる生徒たちには共同研究をしてもらうことも多いですね。テーマは実に多岐に渡るので、中・高の教員をできる限り動員して、生徒全員に寄り添える体制を組んでいます。

―厳しい審査を乗り越えた皆さんのテーマと、進捗状況を教えてください。

U・H 中1でせっかく鳥に興味が湧いたので、「カワウ」をテーマにしました。カワウは植物を枯らす害鳥としても知られているので、手賀沼での実態を調べています。現時点の調査では、ここのカワウは近隣から飛んできているだけで、手賀沼で繁殖したり頻繁に魚を獲ったりしているわけではないとわかりました。手賀沼の植物に与える被害も少ないと推察しています。今後は調査範囲を広げてカワウの被害マップを作るなど、もっと生態を明らかにしたいです。

手賀沼に通ってカワウを観察し、その行動を調査(U.Hさん)

T・E 僕は、理科の授業で物質の導電性を学んだのがきっかけで「導電性プラスチック作り」に取り組んでいます。非金属なのに電気を通すプラスチックが開発されていると知ってびっくりして、どうしても自分で作りたくて、実験室でできる手法や材料をとことん調べました。先生が材料となる溶液をアメリカから購入してくださったり、一緒に実験装置を考えてくださったりして、ついに自作の導電性プラスチックでオルゴールを鳴らすことに成功しました。今は導電性プラスチックを使ったタッチパネルを作るための準備をしています。

実験手法を工夫して、理科室で導電性プラスチックの作成に成功(T.Eさん)

K・F 私は昔から、居酒屋さんを巡るテレビ番組を見るのが好きなので、人をこれほどまでに魅了する酒宴について調べたいと思いました。お酒は歴史が古く切り口も無数にあるので、先生と相談を重ね、テーマは「酒宴空間と社会の変遷をたどる」に決定しました。主に図書館で文献を調べています。平安時代には「取り食み(とりばみ)」といって、大きな宴会で残った料理を貧しい人に与える風習があったことや、昭和初期には戦争の影響で酒税のしくみが変わったことなど、新しい知識にたくさん出会えています。

膨大な資料をもとに、日本の酒宴の変遷について調査(K.Fさん)

―最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

U・H 入学当時からは考えられないほど主体的に動けるようになって、自分でも成長を感じています。この学校の環境を積極的に利用してください。

T・E 先生方が気さくで相談しやすいです。ぜひ学園祭(松陵祭)に来て、学校の雰囲気を味わってください。学食も美味しいです!

K・F 設備が綺麗で明るく、雰囲気がいいです。蔵書が豊富な大学図書館を利用することができるのも長所です。

森 本校では、手賀沼を始め、博物館、科学館、記念館、海外研修など、本物と触れ合う機会をどんどん提供します。生徒の探究心が芽生えたら、その芽を一丸となって育てますので、どうぞ皆さんの探究を見つけにきてください。

取材日:2026.9.28