アクティブラーニング型授業と探究、
キャリア教育で伸ばす多様な「学力」

桐蔭学園中等教育学校

アクティブラーニング型授業と探究、キャリア教育で伸ばす多様な「学力」

共学化5年目を迎えた桐蔭学園中等教育学校。2015年にアクティブラーニング(AL)型授業を取り入れたことを皮切りに、「社会に生きる主体として自ら考え判断し行動できる」生徒を育てる教育ビジョンを設定。6年間を3つのステージに分け、理論と実践を結びつけた「6年間のロードマップ」を土台に、「新しい進学校のカタチ」を実践している。その教育とはどのようなものなのか。英語科の山本英門先生に話を聞いた。


―カリキュラムの特色を教えてください。

山本 学びの根幹となる知識である“見える学力”も大切ですが、時代が大きく変わる中、思考力・判断力・表現力などの“見えにくい学力”や、学びに向かう力や人間性などの”見えない学力”がより重要になってきています。これらを包括的に捉えて、大きく成長させていくのが本校のカリキュラムの特色です。

教育の柱となるのがAL型授業と探究、キャリア教育です。なかでも、AL型授業は学習の土台になるものです。講義で学んだ知識を「個」としてしっかり蓄えつつ、グループワークやペアワークなどの「協働」の学習でフィードバックします。そして、再び「個」に戻って学んだことを振り返っていく。この「個⇒協働⇒個」を繰り返し、ふり返りシートなどを活用しながら、学んだことをしっかり深めていきます。AL型授業が浸透したことで、講義で教えた知識が定着しやすくなりました。

一方、AL型授業に慣れていく段階の1・2年次は、自分で発表したり、グループワークをする力を養うなど、他者とつながることにフォーカスする時期でもあります。ですから、進度を早めるのではなく、活発な意見交換を行う中で、対人基礎力を積み上げていきます。他者の意見を傾聴し承認する姿勢、自己肯定感などを養う機会になっています。

―AL型授業は、探究にも生かされています。

山本 AL型の教科教育や探究、キャリア教育はすべて密接に絡み合っています。探究については、週1回「未来への扉」の授業があります。自分の好奇心を原動力に、各自がテーマを設定して探究学習を進め、毎年11月に行われる「みらとび発表会」で発表します。

探究の象徴的なプログラムが3年次の「15歳のグローバルチャレンジ」です。このプログラムでは、模擬国連の活動を通して、世界が抱える諸問題の解決に挑戦します。3~4人のグループで担当国のアピールポイントや課題などを掘り下げ、その国の代表として意見を発表します。2学期には各国の特産品などから、世界中の人々が食べられるお弁当のメニューを考える国連弁当会議、3学期には実際の社会問題に立ち向かい、全会一致で議決するゴールを目指します。その国の立場から世界の課題にアプローチする過程で、多様な価値観を認め合い、より良い社会の構築に向けて踏み出す力を養っています。

また、日本の中学生という視点から離れて考えることも、模擬国連の狙いの一つです。本校に限らず、私立中高一貫校の生徒は、育った環境が似ている生徒が多い分、少し世界が狭いと感じることもありますが、模擬国連は物事を別の視点で考えるきっかけになります。この他、3年次の海外語学研修や、大学の研究室で院生と一緒に研究する4年次のアカデミックキャンプ、5年次のオープンキャンパス訪問などを通じて、外に目を向けてほしい。そこで、多角的な視座を得てほしいと考えています。

さらに、4年次の16歳のサイエンスチャレンジでは、データサイエンスに携わる企業を招いてデータ分析を学びます。5年次には15人前後のゼミ形式で探究の授業を行い、集大成となる論文を執筆します。

―最後の一年間は大学受験に向けたステージとなる。

山本 6年次は、進学校としての底力を発揮する一年です。生徒が希望する進路を実現することは進学校としての責務でもあります。普段の授業から大学入試に対応しているのはもちろん、放課後特別講習や夏期講習といったプラスアルファのサポートを校内で行うなど、万全の体制を整えています。

―探究の取り組みは、大学入試やその先の将来にどう関わっていくのでしょうか。

山本 以前は一般入試で大学を受験する生徒が中心でしたが、今は幅広い選択肢があります。探究で培った力は総合型選抜などにも発揮できると思います。また、キャリア教育の目標である、「ありたい自分」を考えるきっかけにもなります。「社会に出たときに、どんな自分でありたいか」「そのために大学で何を学ぶのか」「どんな入試で大学に入学するのか」を逆算して考え、自分の言葉で語れるようになってほしいと考えています。

その一端を担うのが5年次のプレゼン型三者面談です。担任と保護者に対して、自分の将来のあり方や大学で学びたいこと、大学受験に向けた自分の計画を話す機会です。わが子の成長に感動する保護者も多く、この学校に入れて良かったと思っていただける機会にもなっています。

―生徒の成長を感じるのはどんなときですか。

山本 特に、3年次の15歳のグローバルチャレンジで生徒の成長を感じます。6年一貫校は高校受験がない分、3年次をどう過ごすのかが大きなテーマです。この時期に外に目を向けるカリキュラムがあるのは、本校の魅力だと思います。私個人としては、このプログラムの最終目標として、大人になったときに担当した国に実際に行ってほしいです。

また、模擬試験でも生徒の成長が見られます。共学化1期生の模擬試験の推移をみると、3年次では5段階のうち上位のS・Aランクの生徒は4分の1程度でしたが、学年が上がるごとにその割合が増え、現5年次は半数を超えています。“見える学力”についても、3年次から5年次にかけて大きく成長しているということです。

また、本校では3年の終わりに英検準2級取得を目標にしています。グローバルチャレンジや海外語学研修など、様々なプログラムと結びつけながら支援し、7割程度の生徒が取得しています。

―2019年の共学化以降、学校の雰囲気は変わりましたか。

山本 共学化以降、校内には男女がお互いに尊重し合い、新しい学校を作っていく雰囲気があります。教員が新しいことにチャレンジする中、学校を良くしようと生徒たちが積極的に発案してくれる場面もあり、教員と生徒が一緒に新しい学校を作ってきたという実感があります。

様々なことに積極的に取り組める生徒は、桐蔭学園の良さを体感できると思います。そういうことが苦手でも、できるようになりたいという思いがあるなら、私たち教員が全力でサポートしますし、周りの生徒たちも助けてくれます。生徒同士が助け合う姿は校内で度々みられ、教員にとって大変うれしい光景になっています。

取材日:2023.7.19