個性を尊重した教育により、
これからの時代を生き抜く人間力を養う

本郷中学校・高等学校

個性を尊重した教育により、これからの時代を生き抜く人間力を養う

東京・巣鴨にある本郷中高は、1922年創立の男子校だ。近年、大学進学実績が飛躍的に伸びる一方で、運動部や文化部の全国的な活躍も目覚しい。本郷の教育の特色について教頭の木村友彦先生に話を聞いた。


自学自習の教育方針を具現化するラーニング・コモンズ

創立以来、日々の学習やクラブ活動などを通して、数多くの有為な人材を輩出してきた本郷中高。「文武両道」「自学自習」「生活習慣の確立」を教育の柱に、教員が一丸となって生徒を指導している。その教育について、木村友彦教頭は次のように説明する。

「中学受験を経て入学してくる生徒たちは、保護者や塾に促されながら勉強している場合が多く、主体的な学習に対する姿勢が乏しい場合があります。ですから、本校では日常生活の中でするべきことをきちんとする、人との約束を守るなど、当たり前のことを当たり前のようにできるようになる教育を心がけています。そのことがやがて、大きな力になるからです」

そのために重視しているのが先に挙げた「生活習慣の確立」と「自学自習」だ。毎日決められたことをぶれずに行っていく習慣を身につけるために、中1から生活記録表を作成し、自分の生活を客観的に振り返る指導を行っている。

施設・設備の面でのサポートも充実している。昨年1月に誕生した新2号館にはラーニング・コモンズを設置した。ラーニング・コモンズとは、学生同士のディスカッションやゼミナール授業での発表を行う学びの共有スペースである。さまざまな活動を行う空間として多くの大学で取り入れられている施設だ。本郷でも友達同士で一緒に勉強したり、問題を出し合ったり教えあったりするなど、声を出しながら勉強できる環境となっている。他にも、公民や国語の授業、クラブ・委員会でのミーティングなど、多様に活用している。木村教頭が言う

「6号館には私語厳禁の自習室もあります。そこで集中して勉強したい人もいれば、ラーニング・コモンズの開放的な雰囲気の中で友達と一緒に競い合いながら、楽しんで勉強したい生徒もいます。生徒たちが何を望んでいるのかを見極め、それに対応できる環境作りを常に実践しています」

自分を見つめる時間となる卒業論文

本郷では中3で卒業論文を課している。卒論に取り組みながら自分の興味を深め、将来、どんなことに力を発揮していきたいのかを自問自答する機会となっている。

卒業論文は3000字以上。「高速道路の無料化の影響」や「臓器移植の歴史と問題点」「納豆の食文化」「ペンギン飼育」など、各自が興味・関心に沿ってテーマを設定し、論文の形にまとめていく。優秀作品は本郷の機関誌『塔影』にも掲載される。

本郷の生徒は大学入学後、自分の生き方について真摯に考え、資格試験や就職など、次の目標に向かって地道に進んでいく人が多いという。木村教頭が言う。

「時代が移り変わる中、学力観にも変化が見られますが、物事を着実に積み重ねていくことや人の言うことをきちんと聞くことは、どんな時代でも必要なことです。しかし、その人自身に学ぼうとするエネルギーがない限り、そういう能力は身につきません。学校生活を通して生徒たちの主体的な学習姿勢を養い、生徒の中に眠っている可能性を少しでも多く導き出していきたいと思います」

段階的に知識を積み重ねていく本郷のオリジナル
数学科主任 吉村 浩先生

「なぜそうなるのかが、相手に伝わるように記述せよ」

これは「本数検」の記述問題の前書きです。数学は相手と理詰めで話すという大人社会でも重要な力を養ってくれます。

本郷では中学2年生が1年生を教える機会を年に3回設けています。この経験を通して、中2生は自分が理解している筈の事柄を相手に伝えることの難しさを実感し、中1生は自分の知らないことを親身に説明してくれる先輩に接し1年後の自分を考えます。

「本数検」は年3回、春・夏・冬の休み明けに行われます。それまで学習したすべての内容が試験範囲で、得点によって級・段位制を採用。一夜漬けではない、日々の蓄積こそが結果に現れます。中3以降は学年に関係なく同一問題で試験が行われます。先輩・後輩のつながりの中で互いに切磋琢磨し、知識を積み重ねていくことで自分がどれだけ成長したかを感じられる環境があります。

取材日:2015.9.3