地球規模でものを考え、身近な地域で足元から行動する
“地球市民”を育てる中村の国際コース

中村中学校・高等学校

詩や読書を通じて感性を磨く国語教育

中村中学校・高等学校は、2022年度より高校のコースを再編成する。現行の普通科(特別進学コース、総合進学コース)、国際科の体制から、普通科(先進コース、探究コース、国際コース)の1科3コース体制に変える予定だ。3つのコースのうち、国際コースの特色について、外国語科で、国際科担任である佐藤恭太教諭に話を聞いた。


高校の国際コースの理念は、“Think Globally, Act Locally”(地球規模で考え、足元から行動する)というものだ。人種や国籍、文化、思想、宗教などの違いを乗り越えて、人として尊重される社会の実現のために活動する、地球市民の育成を目指している。

3年間のカリキュラムで身につけるのは、自己表現力、コミュニケーション能力、問題発見解決能力、行動力の4つだ。この4つの力を養成するために、さまざまな取り組みを行っている。

最大の特徴は、生徒全員が高校在学中に留学することだ。英語圏の国(アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド)の高校に、原則として1校1名で留学する。イヤー留学(12カ月)に加え、22年度からはセメスター留学(6カ月)とターム留学(3カ月)も選択可能になる。留学中の単位は中村の単位として認定されるため、3年間で卒業できる。佐藤恭太教諭がこう話す。

「"どの国に行って何がしたいのか"について、生徒と何度も面談を重ねます。単に英語力を高めたいということにとどまらず、生徒が目的意識を持って留学できるようにサポートしていきます。しかし、留学することが最終目標ではありません。留学経験と学校での学びを通じて真の地球市民になることを目指しています」

英語劇を演じるドラマの授業では、それぞれの登場人物を演じることで、異なった複数の立場の考え方を体験する。DD(ディベート&ディスカッション)やDW(ドラマワーク)を通して、相手のことを考えて意見を交わし、他者と自分の考えをあわせて合意形成を図ることを目的としている。

「自分とは違う立場を体験することで、"相手だったらどう考えるのか"という思考のトレーニングをします。こうした経験は、海外に行って自分がマイノリティであることを実感したときに、どのように対処すればいいかを考える際の手助けとなります」(佐藤教諭)

3年間にわたって取り組むのがThesis Projectだ。ジェンダー、健康と福祉、住み続けられる街づくりの3つを大きなテーマとして、自分の興味・関心のある事柄を組み合わせて英語で論文を作成する。留学中も現地でフィールドワークを実施し、留学後に論文として完成させる。

また、高校在学中にアメリカの大学の科目を早期履修し、単位取得できるDual Enrollmentの制度を設けている。留学から帰国後、一定の学力や条件をクリアした生徒は、テンプル大学ジャパンキャンパスで学ぶことができる。このほか、英語外部試験のTOEFL対策なども行っている。

一方、国際コース以外のグローバル教育にも力を入れている。中2の国内サマースクールは、海外の方々に英語で学校周辺の深川の地を案内する行事だ。3日間のプログラムの最終日には、その期間の成果を英語のプレゼンテーションで発表する。また、中2・中3や高1・高2を対象にした海外の語学研修も実施している。

留学経験によって視野を広げ、多彩な進路を形成

進路指導では、将来やりたいことから逆算して、大学で何を学びたいかを考えるように指導している。

「国際コースでは国際関係の学部・学科を目指す生徒が多いですね。留学して自分の目で海外の状況を見て、日本と他国を比較して考えた結果、経済学や経営学、社会学、法学などに興味を持つ生徒もいます。海外大進学へ向けたサポートも行っており、一昨年にはカナダのブリティッシュコロンビア大に進学した生徒もいます」(佐藤教諭)

最後に、佐藤教諭が受験生にこうメッセージを送る。

「本校は、生徒と教職員の距離が近い学校です。一人ひとりに対して、その子がやりたいことや学びたいことをサポートできる体制が整っています。また、女子校ですので、異性の目を気にせずに、自分らしくいられる環境があります。ぜひ一緒に学びましょう」

国際コース(現:国際科)に通う生徒の声

高3 Iさん

アメリカに留学していました。学校に通えたのはコロナ禍になるまでの約1カ月間で、それ以降の授業はすべてオンラインでした。ホームステイ先に中国人留学生のルームメイトがいて、辛いときはお互いに励まし合うなどして乗り越えることができました。また、月に1回、現地のコーディネーターの人と電話面談の機会があり、それも心の支えになりました。教育学に興味があったので、夏休みに幼児教育に関するオンラインのプログラムを受講しました。大学では教育社会学や比較教育社会学を学びたいと考えています。私は留学によって、何事も自分の目で見て確かめるようになりました。高校生の間に留学することはとても貴重な経験になります。ぜひ国際コースに飛び込んでみてください。

高3 Kさん

カナダの高校に留学していました。留学生が多い学校で、さまざまな国籍の人たちと友だちになれたことが印象に残っています。3月の春休み以降は新型コロナウイルスの影響で休校になり、夏休み後の9月からは対面とオンラインの併用で授業を受けていました。夏休み中はニューヨークの大学のファッションに関するオンライン講座を受講したり、フードバンク(食料銀行)のボランティアに参加したりしました。留学したことにより、行動力や挑戦する力が身につきました。自分がどう頑張れるかで、自分がどう変わるかが決まると思います。将来はファッションの文化を通じて、日本と世界をつなぐ架け橋のような存在になりたいです。

取材日:2021.7.29