知性と感性を磨く
未来考動塾がスタート

保善高等学校

知性と感性を磨く 未来考動塾がスタート

保善高等学校は創立90年を越える伝統校だ。今では数少なくなった男子の高校単独校として、文武両道の学びを実現している。今年から、特別進学クラスでは未来考動塾のプログラムを開始した。その取り組みとは—。


保善高等学校では、特別進学クラス、大進選抜クラス、大学進学クラスの3つのクラスを設置している。

このうち、国公立大や難関私立大を目指す特別進学クラスでは、今年から未来考動塾のプログラムを開始した。その狙いについて、特進部長の山田優教諭が次のように説明する。

「2020年の大学入試改革が一つのきっかけになっています。思考力や表現力が求められるようになる中、未来考動塾では教科の枠組みを超えて、様々な力を身につけられるプログラムを用意しています。3年間を通して自ら考え、行動できる人材を数多く輩出していければと思います」

未来考動塾は、総合的な学習時間を活用したプログラムだ。「生きることは考えること」をキーワードに、国語、数学、英語の3人の担当教員が、教科の枠組みを超えて連携し、様々な授業を進めている。その中で、自ら物事を考え、主体的に行動していく力を養っている。

1年次には、「知の技法」を磨くプログラムが用意されている。多彩な授業を通して、調べ学習をしたり、自分の考えを発信するために必要なスキルを磨いていく。

その第一歩となるのが、入学前課題だ。入学前に、自分の興味・関心があることをテーマにレポートを作成。それを入学後、冊子にまとめて各自が意見を出し合い、良いレポートとはどのようなものなのか考えていく。

1学期の授業では、ロジカルトレーニングを行ったり、ワークシートを活用して三段論法や論理の仕組みを体感し、論理力を養っていく。また、パワーポイントを使ったプレゼンテーションの基本も身につける。情報分析スキル(メディアリテラシー)の授業もある。山田教諭がこう話す。

「1学期は、一つのテーマについて自分で調べて発表するのに必要な基本的スキルを磨きます。また、同じテーマについて意見が異なる二つの記事を読ませ、意見交換をすることで、同じ出来事でもまったく違う意見があることを認識するなど、マスコミやインターネットの情報を鵜呑みにしないように指導しています。こうした授業を通じて、多面的に物事を見る力を養ってほしいと思います」

1学期の終わりには、入学前に決めた自分のテーマを再考する。夏休み期間中に、各自のテーマについて仮説を立て、調べ学習を進める。特別進学クラスでは全員が夏休みの勉強合宿に参加する。そこでも、未来考動塾の時間を設けて、研究を進めていく。

2学期以降は、文献調査やウェブ調査を行い、パワーポイントなどを使ってプレゼンテーション用の資料やレポートを作成。研究発表会で、自身のテーマについてプレゼンテーションを行う。

10月以降は官公庁や企業などに赴き、働いている人たちに話を聞く機会を設けるなど、フィールドワークの機会を通して、視野を広げていく。

また、2年次は「知の深化」、3年次は「知の創造」を実現する多彩なプログラムを用意するという。沖縄への修学旅行とリンクした取り組みを行ったり、国際的視野に立った学習や、3年間の集大成となる卒業論文の執筆などだ。高校生活を通して知的生産活動が展開され、各自が問題意識を持ちながら段階的に学んでいく。

詰め込み型から知的体力を養うカリキュラムへ

一方、カリキュラムの改革も進んでいる。特別進学クラスでは昨年まで平日4日間、7時間授業を実施していた。しかし、授業の時間数を確保するだけでなく、自分たちで勉強して課題に取り組む姿勢を身につけていくことも大切だ。そこで、知識を詰め込むのではなく、知的体力を自分たちで養っていくことも重視して、未来考動塾の導入を機に7時間授業を2日間に減らした。

「英語科では、夏休みに一つの課題に対して各自で調べてまとめる宿題を出しましたが、何の問題もなく取り組んでいました。未来考動塾の成果が出始めているのだと思います」(山田教諭)

また、3年次からのコース分けも、国公立大の文系と理系、難関私立大の文系と理系の計4コースに再編した。今後の課題について、山田教諭がこう話す。

「未来考動塾で学んでいる1年生は、以前の生徒たちと比べると、自分の意見を発信したり、書くことにあまり抵抗がないようです。課題には積極的に取り組む姿勢が見られます。また、未来考動塾は自分たちの視野が狭いことに気づくいい機会になっているようです。2020年の大学入試改革については、未来考動塾の取り組みと、我々がこれまで行ってきた教育で、十分にカバーできると思います。今後は、各教科と未来考動塾が連携する授業の設置も視野に入れています。そうなると勉強の取り組み方が変わり、さらに効果が上がっていくと思います」

取材日:2017.9.6