「一隅を照らす」
最先端の教育を実践
駒込中学校・高等学校
駒込中学校・高等学校は1682年に開設した勧学講院を前身としている。約330年を超える歴史と伝統を受け継ぎながら、最先端のSTEM(Science Technology Engineering Mathematics)教育を取り入れるなど、時代のニーズに応える改革を数多く実施している。首都圏の学習塾を対象に大学通信とサンデー毎日が行ったアンケート調査では、「生徒や保護者に勧めたい学校」ランキングで第1位、「面倒見が良い学校」で第3位、「グローバル教育に力を入れている学校」で第10位に選ばれている。その教育の特色について、河合孝允校長に話を聞いた。
—様々な改革を進めています。
河合 本校は、「一隅を照らす」という仏教の精神を受け継ぎながら、時代を先導する様々な改革を進め、新時代を生きる生徒に必要な教育を実践してきました。ハード面では、2003年に地上6階・地下1階の高校校舎が完成しました。その後、順次ICT環境を整備して、現在はすべての教室がWi-Fiでつながり、1800名の生徒全員がタブレット端末を活用してアクティブラーニング型の授業を受けています。
また、本校は5年前、教育特区校に選ばれ、中高一貫のカリキュラムを自由に組み立てられるようになりました。そこで着手したのが最先端の次世代育成教育です。高校は国際教養コース、理系先進コース、Sコースの3コース制に、中学は今年から国際先進コースと本科(AGS)コースの2コース制になりました。各コースの具体的な目標のもとで質の高い授業を行い、目標に向かって着実に実力を磨いていける環境が整っています。
—御校の教育は、多方面で高い評価を受けています。
河合 30年後には人工知能(AI)が人類を追い越す「シンギュラリティー」の時代を迎えるといわれています。そんな時代を生きる生徒に必要な力を養う教育の一つがSTEM教育です。高校の3年間を通してSTEM教育を行っているのは日本では本校だけです。
理系先進コースでは、STEM教育を先導する埼玉大STEM教育研究センターと提携し、科学・技術・工学・数学の各分野を相互横断的に学ぶことで最先端の技術を身につけています。これにより、明確な答えのない問題を多角的に考え、解決法を探る力を養っています。今年、理系先進コースの生徒8人が、ロボットの自動制御の技術を競うWRO(World Robot Olympiad)大会に出場しました。授業で学んだことを最大限に生かして農業ロボットを完成させ、予選大会を優勝。決勝大会への出場を果たしました。また、インドで開催された、「STEM CAMP」にも理系先進コースの生徒が参加しました。インドの高校生とペアになり、英語でワークショップやプレゼンテーションを行いながらロボットを作成しました。
一方、サッカー部に所属している国際教養コースの3年生は、スペイン・レアルマドリードの提携クラブであるモラタラスと個人的に交渉し、契約を勝ち取りました。自分がどのポジションに立ち、どんな戦術をたてていくのか、第二外国語で学んだフランス語でプレゼンテーションしたことが、正式な契約につながったといいます。
このように、本校の教育で実力を磨いた生徒たちが世界で活躍していることが、本校の評価につながっているのだと思います。
—具体的に、どのような教育を行っているのでしょうか。
河合 本校では、人間教育・グローバル教育・キャリア教育・ICT教育を4つの柱とした教育を実践しています。中でも、330余年に及ぶ伝統の下で行われる人間教育には定評があります。高1の比叡山研修は、坐禅や写経のほか、夜明け前から約30キロを無言で歩き続ける回峰行を行う伝統的な行事です。こうした体験を経て、両親からの愛情に気づき、自己肯定感を高めてほしいと考えています。
また、グローバル時代に必要な力を身につける代表的な授業が、イマージョン講座です。毎年200人近くの生徒が受講するこの講座では、数学や理科などの各教科をオールイングリッシュで学びます。また、異文化を理解する体験型のプログラムも充実しています。
—受験生に向けて、メッセージをお願いします。
河合 本校は、自分がやりたいことを一流のレベルまで高めている生徒が大勢います。ご縁のある生徒はすべて「仏様からの授かり者」として、生徒の個性を見極めつつ全力で伸ばしていく教育の中に、心を育てる文化があります。そのことが、多方面での生徒たちの活躍を後押ししているのだと思います。
取材日:2018.9.19