スーパーエリートと過ごし情熱に
火をつける6日間巣鴨サマースクール
巣鴨中学校・高等学校
2002年から英国の名門イートン校へのサマースクールに参加している巣鴨中学校・高等学校。このプログラムに触発された生徒が今年、オックスフォード大へ進学、世界を舞台に活躍する人材が育っている。そして、昨年からはもっと多くの生徒が参加できる5泊6日の巣鴨サマースクールがスタート。その独自のプログラムについて紹介する。
巣鴨は、イギリスの名門パブリックスクールであるイートン校でのサマースクールへの参加を、首都圏の男子校で唯一認められている学校だ。もっと多くの生徒に同様の体験をしてもらいたいという考えのもと、17年より、巣鴨サマースクール(SSS)を開始。中2・中3、そして今年は新たに高1を対象に加え、長野県蓼科にて行った。国際教育部部長の岡田英雅教諭はこう話す。
「最も力を入れたのは、授業内容の充実です。事前に講師から届いたレッスンプランをフィードバックする、というやりとりを何度も行いました。徹底的にこだわり、昨年より充実したレッスンになりました」
講師にはイギリスのスーパーエリート7人を招いた。オックスフォード大、ケンブリッジ大といった一流大学出身で、歌手や水泳の元イギリス代表選手のキャリアを持っていたり、イギリス政府に勤務していたりするなど、華々しい経歴を持つ精鋭だ。講師たちは来日前に、参加する生徒全員の顔と名前を覚え、生徒のインタビュー映像を見て、一人ひとりの英語力を把握。SSS期間中も毎晩ミーティングを行って、生徒たちの心を開く工夫を重ね、情熱をもって向き合った。
授業は、ドラマ、歴史、建築など講師の得意分野を生かした内容で、人間のおもしろさを伝えるという観点から構築した。たとえば、プロ歌手による音楽の授業は、ウォーミングアップで体を動かしたり、クイズ形式で楽器の名前を当てたりと、終始アクティブ。生徒たちは英語の勉強ということを忘れ、「知りたい、答えたい」という好奇心が活発になり、自然とリスニング力が鍛えられた。最終日に全員で“コースソング”を歌った時の表情は、見違えるほど生き生きとしていたという。
最も特徴的な授業は、「モチベーション・カーブ・レッスン」だ。輝かしい経歴を持つ講師たちが、成功体験だけではなく、失敗体験、苦境からの脱出法についても赤裸々に語った。この授業のねらいを、岡田教諭はこう説明する。
「新しいことに挑戦しようと思ったら、必ず失敗が伴います。失敗を恐れない姿勢を多感な時期に学ぶことで、今後の人生の青写真が大きく描けるようになります」
今年は52人の定員に約2倍の応募があった。成績上位者だけでなく、中位の成績であれば応募できるようにし、大半を抽選で決めている。やる気があり努力する生徒にチャンスを与えている。
岡田教諭は、英語教育の展望について、こう話す。
「中等教育段階では、英語を勉強する目的を大学受験や就職に結び付けるのではなく、純粋に楽しい、勉強したい、という好奇心に火をつけることが大切です。英語を勉強すれば世界が広がる、と気づかせることが重要です。ただ、英会話力の習得だけではグローバル教育とは言えません。日本人としての文化的価値観を持ち、人間としての魅力がなければ世界に出ても相手にされません。そのためにも、生徒にはいろいろな経験を積んで、真の国際人になって欲しいと考えています」
SSSのほかにも、さまざまなプログラムを用意している。高校ではターム留学、オーストラリアでのウインタースクールなどを実施。さらに、今年はイギリスの名門校クライストカレッジ・ブレコンとフレンドシップアグリーメントを締結。イギリスの伝統校への留学の道が開かれたことになる。
中学入試においては、19年より算数選抜入試を新設。さまざまな能力を持つ生徒の特性を伸ばし、世界にはばたく人材を育成してゆく。
SSS参加者の声
中学3年生の生徒
「昨年も参加しましたが、語彙力が足りずに悔いが残ったので、改めて勉強して参加しました。一番おもしろかったのは、ドラマの授業です。二度目で慣れていたので、楽しく演じることができました。学校での授業よりも、先生が話すスピードが速く、聞き取るのに苦労しましたが、リスニングの能力が鍛えられたと思います。だんだんと先生にも積極的に話しかけられるようになり、成長したと思います。 来年は、イートン校などへ留学したいと考えているので、本場の英国の先生とコミュニケーションをとることができたことは、良い経験となりました。海外に行かずに日本で、しかも素晴らしい先生たちに教えてもらえる体験は、SSSでしかできません。ぜひ皆にも参加して欲しいと思います。
高校1年生の生徒
最もおもしろかったのは、歴史の授業です。歴史を学ぶ意味について、改めて考えさせられました。モチベーション・カーブ・レッスンでは、人生の波が落ち込んだ時も、気持ちを切り替えて、解決に向けて努力することが必要なのだということが分かりました。これだけすごい才能のある人たちと会うことができたのは、人生でも滅多にない経験だと思います。学校の授業とは異なり、文法のミスも許されるので、気軽に受けられました。先生にフレンドリーに話しかけることができるので、とにかくコミュニケーションをとることに主眼を置いて、会話をたくさんこなしました。視野が広がり、英語を使ってコミュニケーションをする能力が伸びたと感じています。
取材日:2018.9.6