伝統と歴史を受け継ぎながら、
これからの時代に先駆けた教育を実践

駒込中学校・高等学校

「一隅を照らす」最先端の教育を実践

グローバル教育やSTEM(Science Technology Engineering Mathematics)教育、ICT教育など、21世紀に求められる教育を実践している駒込中学校・高等学校。首都圏の学習塾を対象に、大学通信とサンデー毎日が行ったアンケート調査では、「面倒見が良い学校」ランキングで第2位、「アクティブラーニングに力を入れている学校」で第7位、「生徒や保護者の満足度が高い学校」で第8位になるなど、高い評価を受けている。その教育の特色について、河合孝允校長に聞いた。


—社会が大きく変化する中、求められている教育とはどのようなものですか。

河合 人工知能(AI)の発達により、現代社会は「超スマート社会」に向けて急速に進んでいます。そうした社会を前にして、私たち教育現場にいる者に問われているのが、これからの「学校づくり・教育づくり」です。

本校は江戸時代に創立した勧学講院を前身としており、今年、337年目を迎えました。これまで、生徒中心主義の学園として生徒の個性を重視し、未来を見据えた「一隅を照らす」人材を育てる教育を実践してきました。

これからの学校教育では、一斉一律の授業スタイルから、基礎的学力を確実に習得させた上で、個人の進度や能力、関心に応じた学びが求められるようになります。私たちが先んじて行ってきた個性を重視した教育は、これからの社会でさらに注目を集めていくと思います。

—教育の特色を教えてください。

河合 通常の授業をICTを活用したアクティブラーニング(能動的学習法)にシフトするなど、「学び」の意味や目的、構造、機能などを大きく変えていかなければいけない時代になりました。本校では他校に先駆け、5年前からすべてのコースにICTを導入し、主要5教科だけでなく、音楽・美術・書道・体育・保健などにもICTを取り入れています。アクティブラーニングでペアワークやグループワークを行う際、瞬時に、そして効率的に発表や共有ができるICT機器は欠かせません。そのため、教室には電子黒板を、生徒それぞれにタブレット端末を導入しました。主体的に学ぶ姿勢が育っていることを実感しています。

グローバル時代に必要な力を身につける代表的な授業がオール・イングリッシュのイマージョン講座です。数学や理科、社会などの教科を英語のみで学習しており、1クラス20人程度に分けて実践しています。

また、人間教育も大切です。本校では自己への気づき学習として、仏教精神に根差した教育を行っています。仏教修行生活を体験する日光山研修と比叡山研修では、非日常的な体験を通じて自己と向き合うことで、他者のために役立っていく人材を育成しています。

—「面倒見が良い学校」ランキングで上位に選ばれるなど、高い評価を受けています。

河合 伝統と歴史を持ちながら、新たな取り組みに積極的に力を注いでいる点が、多くの人から評価されている理由だと思います。本校では教員と保護者が親密に連絡をとり、問題が小さなうちに解決する体制を整えています。一人ひとりに向き合い、きめ細かなサポートを行っています。また、多様性あふれる生徒の個性を伸ばし、幅広い進路を実現していくことも、学校としての役割の一つです。本校は勉強以外にも吹奏楽部や和太鼓部、サッカー部など課外活動も盛んです。さまざまな部が賞を受賞するなど、生徒たちが多方面で活躍しています。

—学校改革を進めておられると聞いています。

河合 中学校は2年前から本科コースと国際先進コースの2コース制になりました。本科コースでは、基礎学力を4年間で徹底して身につけ、多様な分野に興味・関心を広げていきます。国際先進コースは、高1から始まる「国際教養」「理系先進」の2系統のどちらかに接続して、高い専門性を身につけていくコースです。英語力のある生徒をスーパーイングリッシュコースとして、英語の取り出し授業も実施しています。

高校には、国際教養コース、理系先進コース、Sコースを設置して、進路の方向性にあわせた密度の高い授業を行い、着実にステップアップできるコースとなっています。

IB的要素を兼ねそなえた駒込独特の「国際カリキュラム」を学ぶコースとして4年前に立ち上げた国際教養コースの第一期生が今春卒業しました。東京外国語大、千葉大、 慶應大、早稲田大といった国内の難関校に多数の合格者が出ただけでなく、延世大(韓国)、カンタベリー大(ニュージーランド)など海外の大学に合格した生徒もいます。

また、理系先進コースでは埼玉大学STEM教育研究センターと提携したSTEM教育を導入しています。来春は第一期生が卒業します。生徒のうち有志の8人が「世界ロボットコンテスト」に出場し、地区予選大会で優勝を勝ち取り全国大会に進出しました。彼らの来年の進学実績が楽しみです。

Sコースは、国公立への進学をはじめ5科の総合的な学びと芸術系を含む、バランスよい高度な学習を実現するコースです。上位グレードコースを「特Sコース」として編成しています。

—中学入試では多様な試験を行っています。

河合 従来の2科・4科の入試のほか、適性検査型入試や国・算・英の3科入試など、さまざまな入試を行っています。昨年からは2月2日午後にSTEM入試と自己表現入試の特色入試も加わりました。STEM入試では算数とプログラミングで合否を判定しています。自己表現入試は、タブレット端末やPC、図書室の蔵書を活用して必要なことを調べたうえで、解答用紙にプレゼンテーション資料を書いてもらう試験です。

これらの特色ある入試は、これからの社会を見据え、今までの既成概念にとらわれない自由な発想や能力をもった生徒に入学してもらうことを狙いとしています。

—受験生に向けて、メッセージをお願いします。

河合 駒込学園には、仏教の教えをもとにした不遍的な価値と、これからの新しい時代に求められる価値を融合した形で学べる環境があります。これからの時代は、教科書だけの知識にとどまらず、自分がどんなことを学びたいのかを考えた上で、積極的に物事に取り組んでいかなければなりません。最も大切なのは好奇心です。本校で、いろんなことに興味や関心を持ち、“なぜ”“どうして”と考えられる力を養ってほしいと思います。

取材日:2019.9.12