生徒を中心とした学校完結型の学習環境の下、
一人ひとりを希望する進路へと導く教育
安田学園中学校・高等学校
近年、安田学園は大学合格実績が伸びている。進路指導部が主導して学習環境を整えており、英語教育にも力を入れている。教育の特徴について、進路指導部長の市川祐教諭(国語科)と、広報部長の藤村高史教諭(英語科)に話を聞いた。
安田学園では、家庭学習の管理・支援を行うため、ICTツールを利用した「新学習支援システム」を今年からスタートさせた。授業での取りこぼしをなくすために、その都度テストを実施し、理解が曖昧な部分は教員が補習を行ったり、生徒が自分で勉強したりするという取り組みだ。
具体的には、これまでに習ったところを確認する習熟度チェックテストを、朝の15分間を使ってWeb上で実施する。対象教科は英語と数学だ。結果はその場で確認でき、不合格者は帰宅後に学習動画を視聴し、続けて確認テストを受講する。翌朝に再テストを実施し、合格を目指す。それでも理解できない場合は、放課後に教員が補習を行ったり、卒業生のチューターが自習の面倒を見たりする。
また、並行して現在習っているところを確認する単元チェックテストも行い、授業で習った内容を確実に身につけさせている。市川教諭がこう話す。
「本校では、生徒がやりたいことに対し、学校がすべて用意をするという体制で学習環境を整えています。今までは、習熟度チェックテストの作成や採点を教員が行っていましたが、システム自体をオンライン化したことで、即時採点が可能になりました」
また、中高の6年間を3つのステージに分け、段階を踏みながら成長できるようにしている。
STAGE1(中1〜2)では、生活リズムを整え、学習習慣を身につけることから教員がサポートする。副担任を配置した2名担任制で指導体制を整え、補習も基本的に教員が行う。
STAGE2(中3〜高2)では、習熟度チェックテストなどでわかった弱点箇所について、できるだけ自分で勉強できるように指導する。学習に対し、生徒が自ら取り組めるようになったら、徐々にサポートの手を離していくのが特徴だ。
STAGE3(高2〜3)では受験生としての意識を持ち、自分の希望進路に向かって学習を進めていく。
STAGE3に上がるまでの間に、生徒が学習計画をしっかり作れるように指導する。最初は週単位の短いものから作成し、徐々に期間を伸ばして夏期計画表や年単位の長期計画表などを組み立てている。
一方、英語教育においてもさまざまな改革を行っている。代表的なものが、ネイティブスピーカーとのオンライン英会話だ。パソコンを使って毎週35分間実施し、毎回異なる講師と話す。授業で学んだことを実践する場を設けており、英語での表現による苦労や、自分の考えが相手に通じたときの喜びを知ることができる。
また、ライティング力をつける「英語表現」の授業では、日本人教員と外国人教員の2名体制で、自由英作文を学ぶ。以前は、選択肢を並べ替えて一つの文章を作るという英文法の授業が中心だった。自由英作文の授業では、書きたいことを自由に書かせることで生徒の考えがわかるので、個性を把握しやすくなったという。
さらに、英語を話す楽しさを経験させるために、今後は全員が海外に一カ月間留学できるような機会を作っていく。市川教諭がこう話す。
「大学受験のためだけではなく、その先もきちんと英語を使える人材を育てるために、4技能(聞く・話す・読む・書く)に力を入れています。以前は指導内容を各学年の担当教員に任せていましたが、年度の違いで生じる学年間の差をなくすために、進路指導部がサポートして指導内容を統一化しました。AIを使った記憶定着システムを導入していますが、これも進路指導部の提案です」
きめ細かな進路指導による大学合格実績の伸長
志望校や将来のキャリアについて考えるきっかけを作るために、安田学園では進路シラバス(計画表)を用いて指導している。まず職業観について考え、次に学部・学科について学び、最後に志望大学を決めるというのが一連の流れだ。
また、自分が興味・関心を持つ対象について深く学ぶのが「探究プログラム」だ。探究の授業では、個人やグループで気づいた疑問について、仮説を立てて検証をしていく。自ら考えて学ぶ力が育成され、社会に出てからも役立てることができる。
さらに、大学に現役で合格する力を身につけるため、高2の3学期以降に放課後進学講座を実施している。今年は東京大学に現役で2名が合格するなど、大学合格実績が伸びた。近年、実績が好調な理由について、市川教諭が説明する。
「これまでの教育の成果が現れてきました。授業をしっかり受けていれば、GMARCH(学習院大、明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)に合格するレベル以上の力が身につきます。より高みを目指す生徒は、放課後進学講座などでプラスアルファの学習で学力を伸ばせます。上位校に合格した生徒は、ほとんどが放課後進学講座に参加していました。学校の指導にしっかり向き合っている生徒がいい結果を残しているようです」
最後に、受験生に向けて藤村教諭がこうメッセージを送る。
「本校ではステージ制というレールがあり、それに乗れば成長できるようにサポートしています。上手に乗れない生徒には、乗れるようにサポートします。また、授業はもちろん、放課後の講座も本校の教員が担当しています。一人ひとりのレベルを把握した状態で講座を設定しており、生徒の個性を意識した指導ができます。卒業後に進路に悩む生徒が相談に来ることもありますが、卒業生もきちんと面倒を見るなど、手厚く指導しています」
取材日:2020.8.28