あらゆる場所で活躍できる場が与えられ、
「自分の居場所」を見つけられる学校

桐蔭学園中等教育学校

あらゆる場所で活躍できる場が与えられ、「自分の居場所」を見つけられる学校

共学化して4年目を迎えた桐蔭学園中等教育学校。中高の区切りがない6年一貫教育を行っている。今年、共学1期生は4年生(高1相当)になった。母体となる桐蔭学園は、1981年に女子部を開設して以来、男女別学を維持してきたが、2018年に高等学校を共学化。中学校(男子部・女子部)は2019年より、それまで男子のみだった中等教育学校に募集を一本化し、共学校となった。新しい桐蔭学園について、桐蔭学園中学校・高等学校の卒業生で数学科の江口祥子教諭に話を聞いた。


自由に活動できる場が多く、自然と自主性が育つ

―在学当時と現在とを比較して、桐蔭学園はどのように変わりましたか。

江口 昔は学業や生活面などで細かな制約のある学校でした。厳しいと感じることもありましたが、ルールに従うことでやりやすい面もあったので、私には向いていたと思います。今は反対に、生徒の自主性を尊重するとても自由な環境です。さまざまな行事や企画が教員ではなく生徒によって運営されています。例えば運動会であれば、種目や当日のタイムスケジュールなど、すべてを生徒たちが決めています。

共学化してからは、男女関係なく仲が良く、和気あいあいとした雰囲気です。女子は物事に対してこつこつと取り組み、男子はここぞというときに集中するという、それぞれ違った良さがあります。男女が尊重し合ってお互いの良さを出せていると思います。

江口 祥子教諭

―自主性はどのようにして身につきますか。

江口 生徒会活動や運動会・学園祭などのイベントは生徒主体で企画から運営まで行っています。教員が決めたことをやるのではなく、自分で決めて動くことで責任感が身につきます。そうした経験を積み重ねることで、要領をつかんで自信をつけていき、もっと他のこともやってみようという気持ちが芽生えるのだと思います。

―縦のつながりが以前より強くなったそうですね。

江口 「メンターになろう/メンターを見つけよう(メンター/メンティー)」という企画を行っています。中等の1年生と2年生が対象で、2年生が相談を受ける「メンター」、1年生が相談をする「メンティー」となります。1年生と2年生が4人ずつ8人程度のグループになり、ペアトークを決められた時間ごとに、相手を替えながら行います。グループは男女別で作り、1対1でいろいろな先輩・後輩と会話ができるので、自分と合う人を見つけやすいようです。不安などを話せる相手を学校内で作れたらいいなという思いから、この取り組みが始まりました。友だちのことやプライベートなことなど、教員にはなかなか相談しづらいことでも、歳の近い関係だからこそ言えることもあるでしょう。ペアトークの活動が終了してからも、交流が続いている生徒もいるようです。

一人ひとりをしっかり見て、手助けは最小限に

―なぜ教員になろうと思ったのですか。

江口 私は数学科の教員なのですが、中学3年生くらいの頃から、数学に興味を持ち始めました。友だちと教え合いをする中で、教えることの楽しさを実感したのが教員を目指すようになったきっかけです。また、在学時に担当していただいた数学の先生に大いに影響を受け、その先生のようになりたいという思いで教員を志望しました。

―生徒と接する際に心がけていることは何ですか。

江口 授業ではできるだけ生徒個々の習熟度を見ることを心がけています。その生徒が他の生徒と比べてどれだけできているかではなく、それまでの授業と比べてどれだけできるようになったかを見ています。授業中は黒板の前にずっと立っているのではなく、机の間を回って生徒がどのように理解しているのか確認し、前よりできるようになった点を直接伝えるようにしています。

生徒が自主的に活動している場面では、どこまで関わればいいのか判断が難しいこともあります。生徒の意見を尊重したいので、フォローは最小限にしています。

勉強や部活動だけではない、自分の居場所が見つかる

―桐蔭学園の魅力について教えてください。

江口 生徒が活躍できる場がクラス以外にもたくさんあるところです。本校では「アフタースクール」と呼んでいる希望者参加型の放課後の活動があり、さまざまな取り組みを行っています。例えば、地域連携企画の一環としてフィールドワークやタケノコ掘りを行ったり、英語を使ってネイティブの教員や友人たちとコミュニケーションができるグローバルラウンジを設置しています。「アフタースクール」は生徒主体で行われるものも多く、その内容は多岐にわたります。勉強や部活動以外での活躍の場が数多く設けられているため、自分の居場所が見つけやすく、自分に合った人間関係を構築できるのが魅力です。また、本校のシンフォニーホールでは、映画の上映やミュージカル・歌舞伎の上演、オーケストラを招いたコンサートなどを行っています。生の芸術に直接触れる機会が多いのも特色の一つです。

STUDENT VOICE 生徒の声

―勉強のほか、学校で頑張っていることは何ですか。

宮永 生徒会役員の書記を務めています。役員会議では、一つの議題に対して幅広い視点から意見が交わされるため、毎回議論が白熱します。会議の内容の厚みが伝わるように心がけながら議事録を作成しています。生徒会では生徒たちからの意見を集める目安箱を設置したり、iPadの中に入っているロイロノート・スクールというアプリを使ってアンケートを実施したりしています。昨年は特に要望の多かった「昼休みの校庭開放」に着手し、先生方との交渉を重ねて実現することができました。

坂元 テニス部に所属しています。部員が居心地よく過ごせるように、練習を盛り上げたり、相談に乗ったりしています。また、グローバルラウンジのスタッフとしても活動しています。海外の文化を紹介するイベントの企画や運営を行っており、最近はSDGs(持続可能な開発目標)についての発信にも力を入れています。オープンスクールでは受験生に向けて、世界の国々の国旗を紹介しました。

宮永 百音さん(中等3年生)

―将来、やってみたいことは何ですか。

宮永 ミステリー小説が好きなので、著名な作家を多数輩出しているロンドンに行ってみたいです。英語と絵を描くことに興味があり、将来は英語を生かせる仕事やデザインを考える仕事をしたいと考えています。

坂元 留学です。異文化に触れて、自分の視野を広げたいです。自分の英語が外国でどれくらい通じるのか試してみたいですね。また、桐蔭学園でさまざまな行事や企画に積極的に参加して、自分がのめり込めるものを探し続けたいと思っています。

坂元 彩加さん(中等3年生)

―桐蔭学園のいいところを教えてください。

宮永 先輩と後輩の交流の場がたくさんあります。メンター/メンティーの企画では、1年生のときに先輩に具体的なアドバイスをもらい、不安が解消されました。2年生になって自分が先輩の立場になったときは、どのように接すれば適切な距離で交流を深められるかということを学びました。

坂元 生徒一人ひとりの個性が際立っています。いろいろな人がいるので、自分と気の合う人がきっと見つかるはずです。校舎がとても広く、緑豊かな自然環境に囲まれていることも魅力です。授業では、プレゼンテーションの機会が多く、自分の意見を伝える力が鍛えられます。私も最初は発表するのが苦手でしたが、ペアワークで意見を出し合うことから始まり少しずつ進んでいくので、自然と慣れることができました。

取材日:2022.7.14