2024年度から完全中高一貫に
新校舎も完成予定
広尾学園小石川中学校・高等学校
広尾学園小石川中学校・高等学校は、2024年度から高校募集を停止し、完全中高一貫校へと歩みを進める。24年12月には新校舎も完成予定だ。進化を続ける広尾学園小石川の教育について、松尾廣茂校長に話を聞いた。
ー「自律と共生」の教育理念や校風について教えてください。
松尾 「自律」は自分で考え、発見し、方策を立てる問題解決能力のベースになるものです。自律するためには、他者と認め合う「共生」の力が必要です。本校には探究活動の成果などを発表する機会が多くあり、この教育理念を実践している生徒の姿を頻繁に見かけます。相手の発表を真剣に聞き合い、疑問点を共有してお互いに高めあう雰囲気があります。学園生活のさまざまな場面で、生徒同士がお互いに認め合い、切磋琢磨しながら成長していく姿があります。
本校には、本科コースとインターナショナルコースがあります。インターナショナルコースは、外国に滞在した経験があり、高い英語力を持つ生徒(AG)と、これから英語力を身につける生徒(SG)で構成されており、生徒同士がお互いに教え合いながら生活しています。
コースやクラスのカラーは異なりますが、部活動や委員会活動、行事などは本科コースもインターナショナルコースもすべて一緒に行います。また、スポーツフェスティバル(体育祭)では、コースやクラス、学年を超えた縦割りのチームを組みます。こうした活動を通じて、生徒同士が自然に交流しやすい雰囲気が生まれています。
ーどのような教育を行っていますか。
松尾 勉強する中で新しい知識を身につける楽しさを知り、小さな成功体験を積み重ねて自信をつけてもらいたいと考えています。その一環として、毎日0限目に小テストを実施しています。日々の積み重ねが結果として自分の得点や学力につながることも感じてほしいと思います。
多くの生徒が参加する夏期講習にも特徴があります。主要5教科はもちろん、東京芸術大学の先生によるアート体験講座やロボットプログラミング講座など、内容は多岐にわたります。学年を越える講座もあり、興味関心があれば、中学生も上級生向けの講座に参加できます。下級生がいるからといって講座のレベルは下げませんが、学年にとらわれずに独学で勉強を進めていく向上心のある生徒も多くいます。
キャリア教育も多彩です。社会の第一線で活躍する講師による質の高い講座を、年間を通して多数実施しています。また、広尾学園のキャリア教育プログラムにも参加できます。高度な内容に触れて、極めることの大切さを肌で感じ、高い目標を設定する生徒も多くいます。
文教地区という環境を生かした教育活動も進めています。日本最大の東洋学専門図書館である「東洋文庫」と博学連携協定を結び、ワークショップを実施するなど、多彩な取り組みがあります。また、歴史がある男子学生寮「和敬塾」とも、さまざまな形で交流しています。武道場などの施設を利用しているほか、放課後には東大の学生をチューターとして迎えて、質問や相談ができる機会も設けています。
24年度から高校募集を停止し、完全中高一貫校になります。6年間、じっくり学べるカリキュラムのもとで、学ぶ楽しさを知ってもらいたいと思います。そして、挑戦し、努力し続けることの大切さを学びながら、自分の強みを見出し、発揮できる場所を探してほしいと思います。
ー進路指導はどのように行っていますか。
松尾 生徒がチャレンジすることが大切なので、日常の授業や各種講座でも、目標をより高く設定することを心がけています。生徒が安心して挑戦できる場所の一つとして学校を利用し、より高い目標にチャレンジしてほしいと思います。
本校には日本の大学だけでなく海外大学を視野に入れている生徒もいます。今年の春に実施したボストンへのキャンパスツアーでは、広尾学園の卒業生にキャンパスを案内してもらうなど、非常に有意義な時間を過ごしたようです。また、夏のオーストラリア短期留学には高校生14人、中学生30人が参加しました。海外大学への進学者が多い広尾学園との連携があることは本校の強みの一つです。今後はインターナショナルコースに限らず、本科コースでも海外大学を志望する生徒が増えていくと思います。
ー現在建設中の新校舎にはどのような特徴がありますか?
松尾 24年12月に完成予定の新校舎は地下1階、地上4階建てです。ラーニングコモンズや130人収容できる多目的ホールを設置するなど、生徒の活動スペースを広げ、主体的に学ぶことができる生徒を育成していきたいと思います。本校での6年間で、社会で活躍する力を伸ばすために、教職員も一丸となってサポートしていきます。
ー最後に、受験生や保護者にメッセージをお願いします。
松尾 子どもが成長する時期は一人ひとり異なりますが、大切なことは、真摯に努力して挑戦し続けていく姿勢だと思います。ただ、子どもが努力し続けるためには、安心して羽を伸ばすことができる場所が必要です。そのような場所を作るためにも、身近な家族を含めた周囲の方々や子どもの話を聞いて尊重することが大切です。そして、小さなことでも応援し、成長を一緒に喜んであげてください。そういう環境があれば、自分で物事を決めてチャレンジする力が身についていくはずです。
取材日:2023.9.14