「一隅を照らす」人間教育で、
AI時代を生きる力を養う駒込イズム
駒込中学校・高等学校
時代に先駆けた学校改革により、中学・高校ともに志願者が大きく増えている駒込中学校・高等学校。仏教的情操教育を基盤とする人間教育と、ICT教育やSTEAM(ScienceTechnologyEngineeringArtsMathematics)教育など、最先端の教育を融合したカリキュラムが特色だ。先を見据えた教育を目指して、さらなる学校改革を進める河合孝允校長の思いとは——。
―様々な改革を進めています。
河合 本校は、創立342年の伝統を持つ仏教校です。教育理念「一隅を照らす人間の教育」を土台に、生徒一人ひとりの個性が光る、多様性あふれる学校づくりを進めてきました。新たな時代を見据えた「駒込ミレニアム改革」にも積極的に取り組んでいます。
学力より思考力・判断力・表現力が重視されるようになる中、中学入試ではPISA型(適性検査型)入試やプログラミング入試、英語入試、自己表現入試などの多彩な入試を導入しています。また、高校では国際教養、理系先進、特S・Sの3つのコースを設置。生徒一人ひとりが希望する進路を実現するために数多くのプログラムを用意しており、生徒たちは着実にステップアップしています。
様々な改革を実行してきましたが、高校入試では偏差値が飛躍的に伸び、志願者が増えています。中学入試も志願者数は右肩上がりです。時代を先駆けたICT教育やSTEAM教育、グローバル教育などの最先端の学びとともに、主体的・自律的に学ぶ力を育てる本校の教育が評価されているということだと思います。
―どのような教育を行っていますか。
河合 本校はICT教育の先進事例校として高い評価を受けてきました。その一端を担っているのが理系先進コースです。理数先進コースでは、日本の代表的なSTEAM教育研究機関である「埼玉大学STEM教育研究センター」と提携し、AI時代に即した探究の授業を展開。数学と理科の専門的な力を伸ばしながら、「ものの見方・考え方・伝え方」についてSTEAMの視点から考えています。
また、グローバル教育ではオセアニアを含めたアジア・太平洋地域での教育を強化。世界で活躍する力はもちろん、日本の文化を世界に発信していく力を身につけていきます。高1の希望者対象のハワイセミナーやマルタ島短期留学など多彩なプログラムがあり、多くの生徒が参加しています。また、今年から留学する生徒向けの英語キャンプも再スタートしました。
―生徒が多様な分野で活躍しています。
河合 本校には、生徒が主体的に取り組む探究活動が数多くあります。特に理系先進コースでは、探究活動の参加者が年々増えており、多くの生徒が様々な分野で活躍しています。例えば今夏、国際的なロボットコンテスト「ワールドロボットオリンピアード(WRO)」では、高2の生徒が東京大会で優勝し、全国大会に出場。また、昨年の宇宙エレベーターロボット競技会ではリージョナル部門で第3位、東京都公立高校主催のロボット競技会ではエキスパート部門で第3位になるなど、生徒たちの活躍は目覚ましいものがあります。
また今年、AIを使って制作したアート作品を競う「AIアートグランプリ」では、高3の生徒が佳作を受賞しました。
総合文化祭では、郷土芸能部門の特別企画として、和太鼓奏者が映えるようなプロジェクションマッピングの制作に、大学と連携して取り組みました。この他、新素材で世界の熱問題を解決することを目指す、名古屋大学発のベンチャー企業との共同研究など、大学や企業と連携した取り組みも数多くあります。
―創立以来、大切にしている人間教育とはどのようなものですか。
河合 本校の教育の根底には、仏教の人間教育があります。仏陀が残した「自らに帰依しなさい」という言葉は、本校の校訓にもなっており、「自己への気づき学習」として、仏教修行生活を体験する日光山研修や比叡山研修などを行っています。こうした非日常的な体験を通じて、自分と向き合い、他者を思いやる「利他心」を養ってほしいと考えています。
一方、自分や社会、時代は大きく変わっていくという「変革の思想」も、仏教の教えの一つです。すべてのものは変化しており、永久不動になることはありえません。様々な体験を経て、どう変わっていくべきかを自分なりに考えながら、学校生活を送ってほしいと思います。
―受験生や保護者に向けて、メッセージをお願いします。
河合 ChatGPTなどの生成AIツールが発達し、社会は大きく変わりつつあります。教育についても転換期ですが、これからの社会を生きる次世代の生徒を育てるために、全教職員が一丸となって学校改革を進めていきます。
また、本校が最も大切にしているのが、生徒の夢を志に変えていくこと。本校には勉強はもちろん、部活動や課外活動、探究活動など、様々なことに積極的に取り組む生徒が大勢います。いろんなことに挑戦する中で、「自分はこれで生きていく」という志を見出せるような教育を行うことが、本校の役割だと考えています。
取材日:2023.8.4