社会で求められる教育に取り組み、教育イノベーションを実現
進化を続ける文化学園大学杉並

文化学園大学杉並中学・高等学校

グローバル教育やSTEAM教育など、独自の教育プログラムに定評がある文化学園大学杉並中学・高等学校。2025年に学校併設の教育研究機関BSICE(Bunka Suginami Innovation Centre for Education)を設置。26年には高校にイノベーションリーダーズ(IL)コースを開設するなど、学校改革が進行中だ。BSICEとILコースの新設により、同校の教育がどう変わっていくのか。理事長補佐とBSICEセンター長を兼任する染谷昌亮先生と、ILコースに進学予定の中3の生徒11人に話を聞いた。


建学の精神「感動の教育」と、スクールモットー「燃えよ!価値あるものに」のもと、生徒が主役になる学校づくりを進めている文化学園大学杉並中学・高等学校。2015年のダブルディプロマ(DD)コースの新設や、20年のSTEAMプロジェクトのスタートなど、この10年間数々の学校改革に着手してきた。改革の手をゆるめず、25年には学校併設の教育研究機関・BSICEを設置。同センター長の染谷昌亮先生がこう話す。

「様々な改革によって、本校が成長してきた実感があります。だからこそ、本校の歩みをより社会的に意味のある形で発信したいと考えるに至りました。自校の成長だけでなく、日本の学校教育の未来を見据えながら、新しい挑戦を続けてまいります」

BSICEのスローガンは「学校から社会の明日を照らす」。教育現場そのものを研究フィールドにする、これまでにない研究機関だ。企業や自治体、大学などとパートナーシップ協定を結び、専門的な知識を取り入れて、新しい時代の学校像を追究する。さらに、他の教育機関や教育者ともメンバーシップ協定を結び、共同研究に取り組む。それらの成果を公開し、波及していくことで、日本の教育や社会にイノベーションを起こしていく。

BSICEには、「プログラム開発部門」と、次世代教育を担う教員を養成する「教員養成・支援部門」、学術的なアセスメントを通じて社会的な価値を提案する「教育効果測定部門」の3部門を設置。現在、博物館と学校が連携して新しい学びを構築する「博学連携プログラム」や、学校における生徒・教員のコミュニケーション実態を可視化する仕組みの開発など約10のプロジェクトが進行している。染谷先生が言う。

「BSICEが主導するプロジェクトには、生徒向けのプログラムはもちろん、教職員や学校制度自体に着目したものもあります。多層的なアプローチを通じて、新しい学校像を追究します。ぜひ今後の取組みにご注目ください」

染谷 昌亮 先生

社会のリアルを学び、アクションを起こすILコース

26年度新設のイノベーションリーダーズ(IL)コースも、BSICEの研究開発事業の一つだ。BSICEから生まれた企業連携の知見を活用するコースで、「生み出す」「巻き込む」「形にする」の3つを実現するイノベーションリーダーを育成する。

特例校認可申請中であるILコースは、従来の学習指導要領に沿った科目の単位数を絞り、そのすべてをプロジェクト型で実施する。その他の時間には、社会のリアルや最前線を学ぶ「学校設定科目」と、生徒たち自身の力で社会をフィールドとした活動を行う「プロジェクト科目」を整備した。特に、学校設定科目にはサステナビリティやデザイン思考、AIと情報リテラシー、アントレプレナーシップなど多彩な科目を用意。これらの授業には、BSICEの外部パートナーが講師として参画する。また、1学期中は外部団体訪問の機会を毎週設けるようだ。

「ILコースは他者と関わることが多いので、共創的あるいは協働的な体験をしたい人や、新しいことに挑戦したい人は是非、入学してほしいです。他のDD・特進・進学の3つのコースにも突き抜けた教育メソッドがありますが、ILコースは特にその教育課程の独自性から日本初の取組みであると自負しています」(染谷先生)

ILコースの入試では一般的な学力検査ではなく、プロジェクト審査を実施。事前に授業体験会も行う。定員は30人で、内部生と高入生が混在するクラスになる。すでに、39人の内部生が応募し、16人が合格。進学が決まった内部生に志望理由や学びたいことについて聞いた。

「多彩なことに触れる機会があるILコースは、自分にとって将来につながる絶好の環境だと思った」

「私たちが1期生として、新たなコースを作っていけるのが魅力」

「会社訪問などを通して社会で起きていることを学び、新しいものを生み出すイノベーターになりたい」

「計画から実行まで、自分で考えたことを最後までやり遂げる体験をしたい」などの声が上がった。

想定している進路も多様だ。DDコースの実績を生かして、海外大を目指す道も開かれている。同校にはカナダの教員が所属しているため、海外大向けの進路指導を直接受けられるのも魅力だ。国内大進学については、総合型選抜を想定しているという。続けて、染谷先生がこう話す。

「パートナーシップ協定を結んでいる大学に送り出す準備も進めています。また、在学中の起業も推進しています。欧米では当たり前の選択であるギャップイヤーとして、自分のやりたいことに取り組むケースもあるでしょう。従来の偏差値にとらわれず、柔軟に進路を選択する生徒を応援したいと思います」

最後に、受験生に向けて生徒たちがこうメッセージを送る。

「文杉はプレゼンする機会が多いので、喋ることが好きな人や、前に出るのが得意な人にはおすすめです。英語に力を注ぎたいならDDコース、勉強を頑張りたいのであれば特進コース、イノベーションリーダーになりたいならILコース、洋服づくりにも取り組める進学コースの4つのコースがあるので、自分の好きを探究し、将来の選択肢を広げるには、すごく良い学校だと思います。なかでも、ILコースは個性豊かな生徒が集まるクラスになりそうです。内部生一同、入学を待っています!」

取材日:2025.9.16