ありのままに自分を表現し、感覚的に他者理解を深める美術教育で
協調性を養い、世界の調和を目指す

文教大学付属中学校・高等学校

学校改革を進め、新たな学校づくりに取り組んでいる文教大学付属中学校・高等学校。2022年には文教生に必要な資質「発見力」「思考力」「行動力」「探究力」「表現力」を養うための文教ユニバーサルコンピテンシーを策定。グローバルコンピテンスプログラム(GCP)も導入した。24年度からは中学と高校それぞれに校長を据えて2人体制とし、改革のスピードが増している。改革による学校の変化や、建学の精神「人間愛」を基盤とする特色ある教育について、中学校長の神戸航先生と高等学校長の能村英達先生に話を聞いた。


―校長先生が2人いることで、どんな利点がありますか。

神戸 2人体制になったことで、中学と高校の発達段階が異なる生徒に応じた指導がしやすくなりました。また、校長であると同時に、互いに副校長も兼務しているので、学校運営に関わる意思決定について、対話を通して慎重に進められるメリットがあります。2人とも大学を卒業してからずっと本校で教員をしてきたので、これまでの学校の歴史も見てきました。これまで取り組んできた学校改革の背景や目的を理解している分、現在の改革についてもスピーディに進めることができています。

能村 本校には、中学から入学した生徒と高校からの生徒がいるため、6年間と3年間の2つの教育課程があります。これまでは、中高一貫の教育に比重を置いていた部分がありますが、それぞれに校長を置くことで、中学で行っている教育を生かしつつ、高校からのカリキュラムをより良い内容にブラッシュアップできたと感じています。また、神戸先生はこれまで入試広報部長として外交的なキャリアを積み重ねており、私は学年主任や教頭として校内の運営に務めてきました。同じ学校にいても、歩んできた道や視点が少し異なる分、対話しながら最適な方向性を導き出しやすくなりました。2人いるので分業もしやすく、これまで通り部活動などにも関わることができています。

―現在取り組んでいることや、学校の変化について教えてください。

神戸 就任後、教育内容をより充実させていくために改革を進めています。生徒が主体的に物事に取り組むマインドや英語力を高める「グローバルコンピテンスプログラム(GCP)」もその一つです。また、26年度入学生から高校修学旅行の行き先を海外(フィンランド・エストニア/ブルネイ・シンガポール/台湾から選択)に変更する予定です。世界に出て、様々な経験をすることで、自分と世界がつながっていることを自覚し、世界の課題を自分事として捉えてほしいと思います。

能村 2人体制になったことで、学校への期待感が高まり、生徒や保護者から積極的な意見が出るようになりました。文化祭には後夜祭ができましたし、保護者企画なども検討中です。また、今年から高1全員の面談を始めました。1年かけて約260人に行います。現時点で思っていることや将来の夢など、自由に話してもらうことで生徒一人ひとりと向き合っていきます。

高等学校長|能村 英達 先生

―独自の取り組みについてお聞かせください。

神戸 新しい価値観を創造し、チャレンジしていくために4年前に始めた取り組みがGCPです。以前は中2から高2のプログラムでしたが、中1から高1に変更。世界標準の貢献力を育てるマインドづくりに早くから取り組めるようになりました。授業は外国人講師と担任の教員のチームティーチング形式で、原則英語のみを使用しています。グローバル社会を生きる上で必要なスキルや知識、生きる姿勢、価値観などを養う機会になっています。

能村 中1〜高2の探究の時間「クリエイティブチャレンジ(CC)」も力を入れているプログラムです。中1・2の基礎的な探究学習を経て、中3〜高2では縦割りのグループで、興味・関心がある分野について主体的に社会とのつながりを持ちながら探究活動を行います。大学で学ぶような高度な内容を進めている生徒もいます。多彩なジャンルから選べることも特色の一つ。いろんな化学反応が起きる面白いプログラムになっています。

―高1の段階で、高校からの入学生と一貫生がともに学ぶ体制がありますね。

能村 「人間愛」は本校の教育の根幹です。中学からの生徒は3年間でそのマインドを醸成した上で、高校から入学した生徒を温かく迎え入れ、ともに新しいコミュニティを作っていきます。また、中学では基礎・基本をしっかり身につけた上で得意な分野を伸ばしていくことを重視しています。先取りをしていないので、高校から入学した生徒と進度のズレがないことも大きいでしょう。生徒にとっても、高1での合流が人間関係を広げる良いきっかけになっているようです。25年中学入試では志願者数が大きく増えました。

神戸 受験生や保護者に、本校の学校改革や新しい取り組みがしっかり伝わっていると感じています。今年の説明会も現段階で参加者が倍増しており、本校の教育内容や学校改革への期待感が高まっているようです。

能村 中学ほどではありませんが、高校も人気が高まっており、説明会や外部相談会などには多くの方に足を運んでもらっています。これまでの受験層とは違う家庭にも興味・関心を持ってもらえているようです。

―大学合格実績も右肩上がりです。

神戸 15年前は国公立大の合格者がほとんどいませんでしたが、24年に初めて東大合格者を輩出。25年は国公立大に14人が合格しました。医療系の大学・学部への実績も大きく伸びています。社会に出てから必要な力を養う本校独自の文教ユニバーサルコンピテンシーと、志望校合格を目指すキャリア学習が実績に結びついています。大学進学をゴールにせず、将来社会で活躍・貢献することを常に意識しながら、学校生活を送ってもらいたいと思います。

中学校長|神戸 航 先生

―最後に、受験生や保護者に向けてメッセージをお願いします。

神戸 GCPやCCなどにより、体育祭や文化祭といった行事や課外活動についても自分事として考える生徒が増えています。学校運営に主体的に関わっていく意欲がある生徒も目立つようになりました。生徒自身、大きく成長できる学校ですし、学校としても日々新しいことにチャレンジし、成長していきたいと考えています。

能村 本校には、本物に触れ、実践する場が豊富にあります。自分や他者を生かしながら世界を広げ、新しい自分や関係性を築き上げていくことができると思います。今後も、校長として互いに連携を取り、学校改革を進めながら、生徒たちをバックアップしていきます。

取材日:2025.6.24