社会で求められる力を身につけ
「新しい自分、自分がなりたい自分」を実現する学校
保善高等学校

創立102年の伝統と歴史を誇る保善高校は、東京で数少ない高校単独の男子校だ。勉強とクラブ活動を両立する「文武両道」を実践する生徒が多く、大学への現役進学率も高い。英検などの検定試験対策や情操教育にも力を注いでいる。同校の魅力について、校長の安永武仁先生に話を聞いた。
―教育の特色についてお聞かせください。
安永 現在、男子校は減少傾向で、東京には約30校しかありません。その多くが中高一貫校で、高校単独校は本校を含めるとたった2校です。中高一貫校の場合、一貫生と高入生の学習進度が異なるケースが多いようですが、高校単独校は生徒全員が同じスタートを切ることができるのが魅力です。また、本校はほぼ全員が入学時から大学進学を目指しています。国公立大や難関私立大を目指す特別進学クラス、GMARCH(学習院大・明治大・青山学院大・立教大・中央大・法政大)以上の大学を目指す大進選抜クラス、中堅以上の私立大への現役合格を目指す大学進学クラスの3つのクラスを設置。各クラスの目標に応じて、高校3年間で学力をしっかり高めていくカリキュラムを用意しています。
―学習面ではどんな指導をしていますか。
安永 本校には、中学時代は平均レベルの成績だった生徒が多く、なかには勉強の仕方や学習習慣が身についていないケースもあります。高1の段階でその点をしっかり鍛え、自分で勉強できるように指導しています。定期試験以外に、数学の月例テストや英語のスペリングコンテストなど、各教科で小テストを多く取り入れているのも特色です。授業で学んだことを短いスパンで確認し、取りこぼしがないようにしています。
検定対策にも力を入れています。英検は年1回以上の受験を必須としています。最近は、準2級や2級の合格者が増えており、高1の段階で2級に合格する生徒もいます。英検については、今後さらに注力していきたいと思います。また、国語では漢検と文章能力検定に取り組み、日本語の4技能もしっかり高めています。
―文武両道も特色の一つです。
安永 多くの生徒がクラブ活動に積極的に取り組んでいます。25年度の現役大学進学率は約88%ですが、クラブ活動と両立した生徒は約90%で、より高い実績となっています。時間の使い方を工夫し、スケジュールを管理しながら、志望大学への合格を実現しているということです。クラブ活動は、社会で求められるPDCA(計画・実行・評価・改善)につながる力を身につける機会にもなっています。
運動部には、5つの強化指定クラブ(陸上競技、ラグビー、サッカー、バスケットボール、空手道)があります。全国レベルで活躍できる実力を備えた生徒が集まっています。学業成績が悪い場合は試合などに出られなくなるため、多くの生徒が勉強とクラブ活動の両方を頑張っており、文武両道を体現しています。

釣り研究部や科学部、鉄道研究会、映画研究会など、文化部も活発です。多様な個性を持つ生徒が互いに刺激し合いながら、楽しく活動しています。
―その他、力を入れている取り組みはありますか。
安永 特別進学クラスの「未来考動塾」は、自分の中で問いを立て、答えを出しながら問題解決能力を養う探究的なプログラムです。新宿区の課題について議論し、架空の政党をつくって模擬区長選挙を行う取り組みや、沖縄が抱える課題を考えて解決する方法を模索する取り組みなどを通じて、思考力・判断力・表現力を養います。3年次には自分の興味・関心がある分野について卒業論文を作成します。
情操教育にも力を入れています。生徒会主催の企画として、23年に宝塚歌劇鑑賞、24年にNHK交響楽団による音楽会を開催。今年は二期会のオペラを鑑賞しました。普段の学校生活では体験できない一流の芸術や演劇に触れることで、生徒たちの感性を揺さぶり、豊かな人間性を育んでいます。
一方、海外研修は外から日本について見つめ直すとともに、世界に向けて視野を広げる機会になります。希望者対象の海外ホームステイ英語研修では、ニュージーランドで2週間、現地の人々と交流しながら異文化を体験し、語学力やコミュニケーション力を磨きます。また、セブ島への海外英語研修は、語学力向上に特化した研修です。マンツーマンレッスンを軸に1週間、集中して英語に向き合っています。この他、学校にいながらセブ島の講師から指導を受けられるWEB英会話レッスンもあります。
―大学入試では年内入試の比率が高まっています。
安永 本校も、指定校推薦や総合型選抜、自己推薦などの年内入試を利用する生徒が増えています。大学進学後にミスマッチにならないように、自分の適性ややりたいこと、目指す職業など、将来へのイメージを明確にした上で大学や学部・学科、入試制度を選択するように指導しています。
また、年内入試で求められる志望理由書について、教職員向けの研修も実施しています。これまでは国語科の教員が対応していましたが、全教員が指導の手順やポイントを共有することで、生徒一人ひとりに対応しやすい体制が整いました。
―受験生や保護者に向けて、メッセージをお願いします。
安永 高校生活は約1000日のドラマといわれます。本校には、それまでの自分を振り返り、「新しい自分、自分がなりたい自分」へと成長したい生徒が数多く入学しています。3年間でより良い成長が遂げられるように、主役である生徒たちをサポートしながら、社会に貢献できる人間づくりに邁進していきたいと思います。

取材日:2025.8.1