世界に向けて、才能を爆発させよ
ハーバード生らと学ぶ「ボストン研修」

巣鴨中学校・高等学校

スーパーエリートと過ごし情熱に火をつける6日間巣鴨サマースクール

「少年は可能性の塊」と捉えて歩み続ける巣鴨中学校・巣鴨高等学校。100年を超える伝統、男子校の魅力が光る質実剛健な校風、そして最先端の教育によって生徒一人ひとりの可能性を開き、世界へ羽ばたく才能を育てている。その柱の一つである国際教育にクローズアップ。2023年度にスタートした独自の海外研修プログラム「ボストン研修」についてレポートする。


「これからの時代、哲学を持った力強く発信できる人が求められます。生徒たちが自由に意見をぶつけ合い、正しさや“当たり前”を問い直すような白熱したトークの場を提供したい。ボストン研修の根底にはこのような思いがあります」

そう話すのは、研修を企画した進路指導部部長・国際教育部の丸谷先生。前任校を含め17年間、国際教育プログラムに従事してきた豊富な経験を持つ人物だ。なぜ、研修先にボストンを選んだのか。

「ボストンは知の交差点。伝統と未来の創造が同居する街。つまりボストンは治安も交通アクセスも良く、歴史的な街並みが残る一方で、最先端のテクノロジー発信の場でもあり、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などが集まる学術都市です。名門大学の学生の考え方に触れ、たとえ流暢な英語でなくても自分のすべてを出して彼らと本気で議論するという経験は、生徒たちのマインドセットを一変させるほどの力を持っています」

さらに、海外で学ぶことの価値についてこう続ける。

「人が成長するためには、自分が快適に過ごせる場所から抜け出すことも必要です。また、抜け出した先の環境はとても重要です。海外は、景色も文化も食事もすべてが普段と異なる非日常の環境ですよね。生徒たちが心のリミッターを外して、自分の中にある才能を爆発させるチャンスに満ちています」

丸谷 貴紀 先生

今回の研修では、現地で働くOBと交流する機会にも恵まれたという。

「巣鴨の卒業生が現在はロングウッド・メディカルエリアで臨床と研究の両方をしています。その方は、東大医学部で学び、医師となり、さらにハーバード大学で教授になるという、周囲から一目置かれるキャリアを築き上げた方なのですが、巣鴨には繰り上げ合格だったことに始まり、多くの努力を重ねられたという話をしてくださいました。生徒たちも驚くと同時に“努力すれば自分もできる”と大いにインスパイアされたようです。自分の限界の壁を壊す、素晴らしい出会いになったと思います」

最後に、今回の研修を通じた生徒たちの成長について聞いた。

「壁に向かってまず一歩踏み出してみる、すると壁が動く、“できる”という喜びが生まれる、また挑戦する…こうした体験を積み重ねていく中で、成長するために必要なマインドセットが日に日に生徒たちの中に沁み込んでいくのを目の当たりにしました。これを土台として、どんな環境でも世界のどこにいても、まわりに流されず、自分の中に羅針盤を持って行動できる人、さらにそれを発信できる人になってほしいと願っています」

STUDENT VOICE

参加生徒が語る「ボストン研修」で得たもの

永田 紡久さん(高校2年)
鎌田 悠汰さん(高校1年)

参加のきっかけ

永田 受験英語だけでなく、将来社会に出たときに使える実践的な英語を身につけたい。コミュニケーションが苦手で、積極的になれない自分を変えたい。そんな思いからボストン研修への参加を決めました。何よりプログラムが魅力的で、とくに興味を惹かれたのが、同調圧力やリーダーシップなど5つのトピックについてハーバード大学の学生と議論する「ハーバードワークショップ」です。難しそうだけれどやってみたいという挑戦心が湧きました。

鎌田 大学に入ったら留学すると決めているので、その下地を今から作っておこうと思ったのが参加理由です。出発前には事前学習として、参加生徒全員が「Heart Global」という表現教育団体のワークショップを体験しました。多様な国籍、年齢のメンバーやキャストとともに3日間でショーを作り上げるという内容で、言葉の壁にぶつかりながらも自分を表現することの楽しさを知り、「ボストンでは自発的に動こう」と心がまえができました。

印象に残った出来事

永田 5回にわたって実施された「ハーバードワークショップ」を筆頭に、現地の学生とディスカッションを重ねた時間はとても刺激的で、目の覚める思いでした。アメリカでは日本と違って積極的に発言することが常に求められ、受け身では何も始まりません。英語ができようができまいが、意見を言わざるをえないのです。そんな環境に身を置いて、研修初日は日常会話すら不安だった自分が、日に日に英語で考える力、表現する力がついてくるのを感じました。「企業訪問プログラム」でGoogle社を訪れたとき、世界各国から集まった優秀な社員の方々が自信にあふれ、イキイキと仕事をしていた姿も忘れられません。世界を舞台に生きていくには、積極性が不可欠なのだと肌で感じました。

鎌田 ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学の学生、Google社の社員、ロングウッド・メディカルエリアで働く医師や研究者をはじめ、プログラムを通じて出会ったすべての人たちの姿が心に焼きついています。みなさんスーパーエリートといわれる人たちで、今までは遠い存在だと思っていましたが、それぞれの考え方やキャリアを知る中で、「自分もこうなりたい、なれる」という思いが湧いてきました。これから生きていくうえでロールモデルとなる存在に、世界の頭脳が集まるボストンの地で出会えたことは幸運でした。同時に、世界最強国といわれるアメリカのパワーを実感し、自分も日本だけでまとまるのではなく、世界を視野に入れた学びをしたいと思いました。

変化・成長したこと

永田 大きな変化は「グロース・マインドセット」が身についたことです。これは、「人間の能力や才能は努力を通じて伸ばすことができる」という考え方で、研修中、自分で自分に制限をかけそうになったらこのマインドセットを思い出していました。そうすることで、「無理かも」の壁を越え、たとえ失敗しても挑戦しよう、すべては成長の機会だ、とポジティブに捉えて動ける自分になれたと思います。

鎌田 日本とまったく異なる環境に身を置いて、日本にいては決して出会えない人たちとともに学んだ約1週間。その中で、自分とはどんな人間で、これからどこを目指すのかということを、今までよりも広い視野と高い視座から考えられるようになりました。そのぶん、将来の選択肢も大きく広がったと感じています。将来、世界で活躍できる人になるために、常に高みを目指して努力を続けていきたいです。

国語科教諭|松井 慶太 先生

研修に同行した松井慶太先生のコメント

今回の研修中、「やってやる」と生徒たちの心に火がつく瞬間を何度も目撃しました。国際教育に注力する本校では、英語力の向上にとどまらず、英語を通して思考力、表現力、プレゼンテーション能力など幅広い力を養う多様なプログラムを設置しています。そうした普段の学びがベースにあるからこそ、生徒たちはボストンで力を発揮し、質の高い学びができたのだと思います。

取材日:2025.9.16