独自の検定試験の取り組みで、
一人ひとりの意欲を引き出し、
自ら学ぶ生徒を育てる

本郷中学校・高等学校

独自の検定試験の取り組みで、一人ひとりの意欲を引き出し、自ら学ぶ生徒を育てる

東京・巣鴨にある本郷中高は、創立95年目を迎えた男子校だ。「文武両道」「自学自習」「生活習慣の確立」を教育の柱に、これまで有為な人材を数多く送り出してきた。近年は、大学進学実績が飛躍的に伸びる一方で、部活動など、課外活動でも目覚ましい活躍を見せている。本郷の教育の特色について、進路指導部長の山梨英克教諭に話を聞いた。


—教育の柱である「文武両道」「自学自習」「生活習慣の確立」についてお聞かせください。

山梨 本校では、「自学自習」を尊重しています。物事に主体的に取り組み、生徒が自ら学ぶ意義を見出せるよう、さまざまな工夫をしています。

例えば、独自の数学検定試験「本数検」は、得点によって級や段が認定される取り組みです。毎学期初めに全学年で実施されており、試験結果は成績に関係ありませんが、取得した段位は自分の到達度を知る目安になります。多くの生徒が、目標とするレベルをめざして自発的に勉強を進めています。これと同じように、中学では英単語の検定試験「本単検」があります。なかには2年生で3年分の英単語を勉強し、高得点を取る生徒もいます。

また、高校生向けの夏期講習「サマーセミナー」には、「古典文法の基礎」や「小論文対策」など100以上の多彩な講座があります。生徒は自分に必要なものを自由に選択できます。対象学年を定めていないので、学習内容を先取りした講座を受講することも可能です。希望者のみの講習ですが、7割以上の生徒が参加しています。

生徒たちの学習を支える施設・設備の拡充も進めています。今年7月には、6号館の自習室をリニューアルしました。ここは私語厳禁で、勉強に集中するには最適の場所です。これに対し、新2号館の「ラーニング・コモンズ」では、仲間と相談したり問題を出し合いながら勉強できます。多様な学習環境を用意し、生徒の「自学自習」を促す学校づくりを実践しています。

また、生徒が主体的に行動するためには「生活習慣の確立」が欠かせません。本校では、目的から逆算して計画を立てる習慣を身につけるため、“いつ・何があるか”を常に意識するよう指導しています。教室には1カ月先まで把握できる予定表を掲示しているほか、入学直後から全員が手帳を活用し、自己管理能力を高めています。

教育方針の三本柱のうち、創立当初から受け継がれてきたのが「文武両道」の精神です。本校の生徒は、勉強はもちろんのこと、それ以外でも打ち込めるものを見つけて、学校生活を充実させています。部活動は、運動部・文化部ともに活発で、数多くの部が全国レベルで活躍しています。

—10年前と比較して、早慶の合格者数が129名、国公立難関大は29名も増加するなど、 大学進学実績が飛躍的に伸びています。

山梨 10年前と比べると、生徒主導で行われる行事などが増え、先輩、後輩の関係が強くなりました。進路指導でも、縦のつながりをいかした取り組みを行っています。夏休みに開催する「難関大進学セミナー」では、毎年多くの卒業生に来てもらい、進路実現への具体的なアドバイスをしてもらっています。生徒にとって、身近な先輩の言葉は一番の刺激になるようです。このほかにも、学内情報誌などを通じて、先輩の体験談や受験データを積極的に生徒に提供しています。

また、本校の進路指導では、保護者との連携も重視しています。その一環として、保護者向けのセミナーを開き、卒業生やその保護者から受験時の経験を話していただく機会を設けています。保護者にも受験生の本音を知ってもらい、教員と保護者が一丸となって生徒をサポートしています。

—今後のビジョンについてお聞かせください。

山梨 本校は伝統的に課外活動や行事が盛んですが、これまで以上に、生徒の興味・関心を広げる機会を充実させたいと考えています。夏休みには中学生の希望者対象の「教養講座」を実施しています。料理やお菓子作り、韓国語、裁判員裁判の模擬体験など、多彩な講座を用意しています。

また、今年6月に開催された東京医科歯科大学との高大接続ワークショップに、本校から2名の生徒が参加しました。大学生と一緒に、英語で医療問題に関するグループワークやディスカッションを行うという難しい内容でしたが、参加した生徒はとても楽しんでいましたし、勉強にもなったようです。校外での活動に興味を示し、挑戦する生徒は今後さらに増えていくと思います。幅広いものに興味を抱く生徒は、勉強面でも探究心が強く、着実に力を伸ばしていく傾向があります。今後は、学習以外の面でも、生徒が持っている意欲や好奇心を引き出す教育を発展させていきたいと考えています。

取材日:2017.9.4