「教科センター方式」で、
自主性を育み、学びの可能性を広げる
青山学院中等部
青山学院では、2017年に、地下1階地上6階建の中等部本校舎が完成した。大きな特徴は、教科ごとに専門のゾーンを設ける「教科センター方式」を取り入れたことだ。導入から4年を経て、生徒や学校にどのような変化が生まれたのか。新校舎設立構想時から関わり、「教科センター方式」を中心となって推し進めた、筒井祥之教諭に話を聞いた。
教科センター方式とは
教科ごとに専用教室や担当教員の研究室などをひとまとめのゾーンに配置し、生徒が時間割に従って目的の教室に移動する授業方式のこと。各クラスのホームルームとして併用する教室には、隣接してロッカースペースがあり、鞄や教科書といった生徒個人の持ち物は各自がロッカーで管理する。青山学院中等部では、フロアごとに「メディアスペース」と呼ばれるオープンスペースを設け、教科に関する本や図鑑などの図書資料を集め、生徒の学習発表やグループワークの場として活用している。
―教科センター方式導入のきっかけを教えてください。
筒井 中等部新校舎の構想が動き出した当初、「21世紀のこれからの教育をどのようにしたら良いか」を考えるため、さまざまな学校を見学させていただきました。多くの先駆的な取り組みの中でも、「教科センター方式」の学校では、生徒たちがのびのびと学んでいるように感じたことが、導入を決めた理由です。
―実際に導入し、生徒にどのような変化がありましたか?
筒井 授業が終わると、予め次の授業に必要な持ち物を準備し、決められた時間内に移動するという行動を繰り返すことで、生徒に自主性が生まれました。今は新型コロナウイルス対策のため、近い距離での会話は控えめになっていますが、友達と話しながら移動する様子はとても楽しそうです。
―生徒同士のコミュニケーションにも変化があったということでしょうか?
筒井 教科ごとに教室が変わるため、生徒の関係性の枠組みが自然に広がったようです。また、全学年が一斉に移動するため、以前はフロアで区分けされていた他学年の生徒とも、お互いに交流が生まれています。
―教員側では、「教科センター方式」はどのように受け止められていますか?
筒井 これまでは、学校とは、教員が生徒を管理し、指導する場所だという意識が強くありました。しかし、「教科センター方式」を導入することで、生徒の自主性や自律性に任せる部分が大きくなりました。教科担当としては、教員側は移動しないため、より多くの時間を授業準備などに割くことができ、授業の質を更に高められるようになりました。
校舎内をめぐることで多くの情報にふれる機会が増える
―「教科センター方式」導入にあたって、新校舎にはどのような工夫がされていますか?
筒井 フロアは中庭を取り囲む口の字型にし、複数の階段へのアクセスをしやすくすることで、生徒の動線の自由度を高くし、混雑しにくいデザインにしています。廊下は広く取り、またベンチなどくつろげる場所もたくさんつくっています。
―各教科のメディアスペースは、どのような役割を果たしていますか?
筒井 基本は、教科ごとの参考書などを設置し、生徒たちのグループワークや研究発表の場として活用できるようにしています。これまでは図書室に集約されていた図鑑や関連図書も、生徒たちの目につきやすくなり、利用率が高くなりました。
設計段階から各教科担当教員が関わり、社会科であれば発掘史料など専用の展示ケースが備えつけられています。展示物や掲示物に対しても、生徒は興味津々で、クイズがあれば集まって解いていたり、前年度の生徒の研究発表にも熱心に見入っています。授業でも利用していますが、基本はオープンスペースなので、興味関心のある生徒が自由に学びを深める場所になっていますね。
―廊下の壁などにもたくさんの掲示物がありますね。
筒井 移動中の生徒の目につく場所に、教科関連のニュースや学習資料、生徒が作成したレポートなどを掲示しています。中学3年間は、多くのものを吸収し、興味関心の幅を広げるのに最適な時期です。多種多様な情報から、将来の進路選択に繋がる種を受け取ってほしいと思っています。
―受験生や保護者に、「教科センター方式」で学ぶよさを伝えてください。
筒井 約50年前から選択授業を取り入れるなど、本校には、生徒が好きなことをのびのびと自由に学ぶことができる伝統があります。「教科センター方式」はそれをさらに推し進めたものです。教員が教えるだけでなく、生徒が自ら学び、吸収していける環境をつくっています。自由な学びの場で、ぜひみなさんの可能性を広げてください。
取材日:2020.7.17