日本とカナダの高校卒業資格をダブルで取得。
英語「で」学んで二文化教育を行うダブルディプロマコース

文化学園大学杉並中学・高等学校

あらゆることに挑戦できる環境を整え、一人ひとりの才能を開花させる

日本で初めてダブルディプロマを導入した文化学園大杉並中高。今年で6年目を迎えた高校のダブルディプロマ(以下、DD)コースは日本とカナダ、2つの国の高校卒業資格を取得できる。教育の実情について、青井静男副校長に話を聞いた。


DDコースでは、カナダ・ブリティッシュコロンビア(以下、BC)州と日本の高校のカリキュラムを並行して学ぶ。BC州の授業はもちろん英語で、日本の授業は日本語で受けるバイリンガルスタイルだ。日本とカナダの卒業資格を持つことで、国内外の大学を容易に受験することができる。DDコースの開設の経緯について、青井静男副校長がこう話す。

「これからの日本の経済を考えると、先細りになるのは目に見えています。世界と戦える人材を育てるために、中高からそのような教育を行いたいと思い、当初はIB(国際バカロレア)教育の導入を検討していました。ただ、日本でIBの修了資格を全員が取得するのは非常に難しく、その点、BC州のカリキュラムは本校に合っていると判断しました。カナダは移民が多いため、移民の人たちがカナダの国民になるための教育が確立されています。つまり、英語を話せない人たちが英語を理解するための仕組みが整っているのです」

中学ではDDコースにスムーズに進学するための段階を踏んだカリキュラムがある。中1のアドバンストクラスは英語の授業を週10時間行う。10時間のうち8時間はBC州の教員が担当し、残りの2時間はアメリカやイギリスなど他の国の教員が文法を教える。中2ではDD準備コースに進み、BC州の教員による教科横断型の授業を受け、より深く英語を身につけていく。中3になるとDD準備コースの上級者は「DD9」と呼ばれるプログラムにも参加できる。これは英語10時間に加え、数学4時間、理科2時間を英語で学び、週16時間の本格的なBC州の教育を受けることができる。

英語活用力を高めるだけではない、カナダ独自の教育

DDコースに入学の決まった生徒は入学式前の3日間でDDオリエンテーションキャンプに参加する。文法の間違いを気にせず、積極的に英語を話すためのマインドセットを構築するのが目的だ。また、入学して約3カ月後の7月から、BC州にて5週間の短期留学がある。ホームステイをしながら現地の学校に通い、「Social Studies 10」の単位を取得する。青井副校長がこう説明する。

「『Social Studies 10』は社会科学系の科目です。カナダの歴史や文化、アート、環境などについて学びます。現地で見たり体験したりすることで学習を深め、短期留学後、生徒はBC州の教員が話すナチュラルスピードの授業に十分ついていけるようになります。精神的にも大きく成長し、自立の第一歩を踏み出します」

BC州の教育の特徴の一つにキャリア教育がある。「キャリアライフエデュケーション」と呼ばれる、自分のキャリアについて考える授業を実施している。また、カナダ大使館のバックアップにより、多くの講演会が開かれている。BC州教育大臣や、カナダで性別の垣根を超えて活躍するトランスジェンダーの政治家など、招かれる要人はさまざまだ。

もう一つの特徴は生徒中心の探究型学習だ。教員や生徒が投げかけるトリガークエスチョンに対して、グループディスカッションを通して答えを追い求める。教員はあくまでファシリテーターであり、話し続けることはしない。

「グループディスカッションや二人一組のペアワークでは、メンバーの組み合わせを何度も変えています。誰とでも組めるようにして、他者と協働する力を育てます。授業はグループでのプレゼンテーションが多く、生徒は発表の準備に膨大な時間をかけます。皆で協力して乗り越える力が身につきます」(青井副校長)

また、教室内で行う授業だけではなく、学校の外に出て自分の目で見て確かめる機会も豊富に用意されている。例えば、物理の授業では東京ドームシティに出向いてジェットコースターの遠心力を調べる機会を設けている。

そうした教育を受けた生徒の評価は「ルーブリック」を用いて行っている。ルーブリックとは、レポートや発表での学習到達状況の評価基準のことだ。BC州の教育省のホームページには教科ごとの細かなルーブリックが示されており、教員はそれに沿って教えていく。評価が非常に透明で分かりやすいため、生徒が自分で評価をしてみて教員の評価と違ったらすぐに聞くことができる。目標までの道のりが数値化されており、生徒のモチベーションアップにもつながっている。

こうした取り組みの結果、DDコースの進学実績は好調だ。青井副校長は「BC州から来た先生たちは非常に熱心に教えてくれています。今年はDDコース卒業生の93%がカナダの成績優秀者に認定され、現地校と海外校の中で本校がトップになりました」と言う。世界大学ランキングで東大を上回るカナダのブリティッシュコロンビア大に毎年合格者を出している。他では東京外国語大、早稲田大、上智大、ICU、立命館大などに合格している。

最後に青井副校長は受験生にこうメッセージを送る。

「カナダの教育は非常に進んでおり、ジェンダーフリーの考え方も浸透しています。本校では世界に貢献できる人材を作っていきたいです。勉強は辛いかもしれませんが、将来役に立ちます。今は人と話すこと、本を読むこと、考えることを大事にしてほしいと思います」

取材日:2020.7.3