コロナ禍で再確認した、学校の役割
生徒の安全安心の確保と、学びの保障への取り組み

保善高等学校

探究学習を通じて、社会を生き抜く力を養う未来考動塾

新型コロナウイルスの感染拡大によって、全国の学校では3月から5月末までの長期にわたり、休校を余儀なくされた。生徒の安全を守りながら、学びを止めないために、学校にできることは何なのか。保善高校の取り組みと、コロナ禍での生徒の変化などを、入試広報部長の鈴木裕教諭に話を聞いた。


—今回のコロナ禍の対応について、どのような点に留意されましたか?

鈴木 学校としては生徒の安全安心を第一に、まず正確な情報収集と休校の決定など学校から家庭への情報伝達を迅速に行いました。緊急時の情報の収集と伝達の重要性は、2011年の東日本大震災で学びました。

本校では震災の翌年から、「山吹ネット」という保護者と生徒、両者へのメール配信システムを導入しており、今回の休校期間も、事務連絡や授業配信のお知らせ等には、このシステムを最大限に活用しました。

備えという意味では、新型インフルエンザが猛威をふるった2009年から、本校ではマスクの備蓄を始めました。枚数にして約5000枚です。毎年冬のインフルエンザ流行時に、受験生に着用をうながすためなどに利用してきましたが、今回のマスク不足の際には非常に役立ちましたね。

一方、6月1日の学校再開に向けて、検温器や 飛沫防止アクリル板、消毒液などの手配には苦労しました。普段お付き合いのある業者の方をはじめとする関係各所にもご協力をいただき、充分な数量を確保することができました。

—休校期間の学習指導はどのように進めましたか?

鈴木 3月の休校期間中は、春休みの課題をプリントで準備し、生徒たちに取り組んでもらいました。その間に、生徒・教員両者にとってアクセスしやすく、双方向で学べる仕組みづくりをを進めました。

まず、本校の進路別3クラスのうち、先行してiPadを使った探求授業を実施していた特別進学クラスから、オンライン学習システムを導入し、そのノウハウを活かす形で、大学選抜クラスと大学進学クラスでもオンライン授業をスタートさせました。

授業は20分程度の動画にしてYouTubeを使って配信し、Dropboxというクラウドサービスを利用し、課題の配信・回収・添削を行いました。授業動画作成にあたっては、今年度より設置された「ICT学習支援チーム」が教員をサポートしました。

休校中に配信された動画は、のべ1100タイトルを超えます。主要5教科だけでなく、体育や家庭科なども動画を作成し、生徒は家庭内でできる運動や料理づくりに取り組みました。また、英検対策など対策講座も配信するなど、質量ともに充実したコンテンツになりました。作成した動画などは、今後も対面授業と併用して、生徒の学習の幅を広げるために役立てたいと考えています。

—オンライン授業実施にあたり、どんな取り組みを実施しましたか?

鈴木 本校独自の取り組みとして、全在校生家庭を対象に一律2万円を支給する「オンライン授業環境整備支援」を行いました。生徒の学習機会の平等を保障することは、オンライン授業を進める上で欠かせません。2021年度からは、生徒へのタブレット端末の貸与も開始します。

今後の感染状況により、再び休校措置がとられる可能性もありますが、どんな時も学びを止めない学習システムの構築を目指しています。

—再開後の学校の様子はいかがですか?

鈴木 生徒が想像以上に落ち着いて行動していることにおどろきました。本校は基本的に男子校らしくのびのびとした校風なので、元気がよすぎる生徒やふざけて羽目をはずしがちな生徒もいました。しかし、生徒たちは、我々教員が考える以上に、今回のコロナ禍による社会状況を冷静にとらえ、節度ある行動を心がけているように思えます。普段から挨拶や自己管理など、社会の一員としての自覚を促す生徒指導に力を入れてきましたが、その成果の一端であれば嬉しいですね。

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また、当たり前のように毎日学校に通い、友達と一緒に授業を受けたり、部活をしたりする生活が、決して当たり前ではない、大切な日常であったということに、生徒、教員共に気づくことができました。だからこそ、感染対策に充分に気を配りつつ、授業や部活動などに熱意をもって取り組めているのだと思います。

—最後に、受験生や保護者の方へのメッセージをお願いします。

本校は都内では数少ない、高校単独の男子校です。新しい仲間と、新しい環境で、一斉に学校生活をスタートすることができます。きっと生涯にわたる友人との出会いがあるでしょう。

今回のコロナ禍によって、学校はどんな時でも生徒の安全を守り、学びを保障する役割があることを、強く再確認しました。教職員一人ひとりが最善を尽くすことができたと、胸を張って言えます。ぜひ安心して、そして新しい環境でのスタートに希望を持って、本校を目指してください。

取材日:2020.9.15