地球を守る自覚と実践力を兼ね備えた
次世代のリーダーを育成
光英VERITAS中学校・高等学校
千葉県松戸市の聖徳大学附属女子中学校・高等学校は、1983年に創立された中高一貫校。2021年4月から男子の受け入れを開始し、光英 VERITAS(ヴェリタス)中学校・高等学校に校名が変更される。共学化及び校名変更の背景や将来の展望について、川並芳純校長にお話を伺った。
学びの多様化を推進し進路の多様化を加速させる
―共学化の背景と、新たな校名の由来についてお聞かせください。
本校では「探究プロジェクト学習」を重視しており、情報収集から課題発見、解決策のプレゼンテーションまでのプロセスに男子的な発想を融合させ、よりダイナミックで創造的にしたいと考えました。既成概念にとらわれない“尖った”発想力が生まれ男子生徒が加わることにより、学びの多様化への期待ができると考えています。探究プロセスを体系化し、男女協働の効果を最大化させ、学校生活全体に連鎖させる「トルネードラーニング」を導入します。
また、進路面での多様化を加速させたいという狙いもあります。併設の聖徳大学に、卒業生の7割以上が進学していたかつての状況は様変わりし、近年は7割以上が聖徳大学以外の大学に進学しています。女子の中高一貫校という価値にこだわる必要性が薄れています。さらに、本校の進路指導のノウハウは男子生徒にも有効に機能するという確信があります。
新たな校名は、本校の決意を示すものです。「英」には「優れた」という意味があり、グローバル社会への意識もあります。そのうえで、「光」は自分が光り輝き、周囲も輝かせてほしいという願いを込めています。「VERITAS」は「真理」を意味するラテン語です。真理の探究に挑み続け、成長し続けようとするメンタリティー、地球規模での課題解決に挑む探究意欲や知的好奇心を伸ばしていきたいと考えています。
―グローバル人材の育成こそが教育機関の責務だというお考えでしょうか。
新型コロナウイルスの世界的な蔓延は、グローバル社会のつながりを再認識させました。だからこそ、世界の課題を克服する人材を育成するべく、「地球を守る自覚と実践力のある次世代リーダーの育成」をビジョンに掲げています。ユネスコスクールにも加盟申請中です。
また、本校では従来から「和の精神」を重んじています。個を埋没させて周囲に合わせることが「和」ではありません。人間は一人ひとり違いがあり、その違いを認めたうえで、次のアクションにつなげるべきもの。多様な個性を尊重しながら活発に意見交換を行い、答えを導き出そうとするマインドを育みたいのです。その過程での相手への配慮や繊細な心づかいの指導は、道徳教育の一部でもあります。
そのため、約40年にわたって行ってきた本校独自の人間形成・マインド形成ツールである「小笠原流礼法」も、時代の変化に応じた改編を行います。これまでは、日本の文化的な学びを中心とした学習単元でしたが、今後はグローバル社会を意識し、「国際プロトコル」と呼ばれる内容も加えて進化させます。もともとは武士の作法が源流にありますので、男子教育との親和性も高いといえます。
英語グローバル教育と理数教育を軸にICTをフル活用
―カリキュラムの特徴やICTの活用例についてお聞かせください。
まず、英語は授業での集団学習と、自分のレベルに合った個別学習との両輪で指導を展開します。しっかりと4技能に取り組み、なかでも「話す」については、必ずしも流暢でなくても対話する意欲や対人表現力の向上をめざす「コミュニケーション」と、聞く側の理解のために正しい文法を重視する「プレゼンテーション」に分類。留学などの体験型プログラムも学年別に用意し、相手に伝わる喜びが実感できる機会を豊富に設けます。
次に、理科では、“理解したつもり”を回避すべく、実験や実習といったリアルな体験型学習を充実させます。実験では、成功も失敗も貴重な経験になると考えています。
本校では「一人1台のiPad」を始めて7年になります。現在のコロナ禍におけるオンライン授業では、「学びを止めるな、学びを溜めるな」と生徒に伝えています。教員は生徒と双方向で電子ペーパーをやりとりするアプリケーションを駆使した授業を行い、2021年度以降もオンライン英会話や理科での実験結果の撮影・記録・共有など、さらに有効活用していきます。
その結果として重視しているのは、現役での進学実績です。妥協することなく、生徒の志望する大学に現役で合格させることです。6年後の進学目標として難関国立大学と医学部へ30名以上、難関私立大学へ100名以上の現役合格をめざします。
体を鍛え、心を磨き生徒が主役の学校
―授業時間以外の構想についてはいかがでしょうか。
習熟度・到達度に差が生じることを前提に、学習面でのバックアップ体制を充実させます。放課後に全生徒が使用できる自習ルームを設け、大学生・大学院生のチューターを常駐させるほか、東京理科大学と提携して教職に関心のある学生がインターンシップ先として訪れる体制を整えます。生徒は5教科を中心に自由に質問し、大学生が回答。学生から大学の情報を得ることもできます。
部活動では、野球部やサッカー部といった運動部の拡充を予定しています。丈夫な体がなければ社会貢献もできませんし、フェアプレー精神を身につけることも大切です。練習の結果、できなかったことができるようになると実感できる点も運動部の魅力です。壁を乗り越えていく体験は、もちろん勉強にも通じるものです。
―最後に、現在の校風で守り続けていきたいことをお聞かせください。
生徒自身が主体的につくり上げていく学校であることです。校則も含めて生徒に裁量を与え、今まで以上に生徒中心の強い集団をつくりたいのです。ルール違反があれば教員が注意するまでもなく生徒同士で注意し合い、ルールを遵守させる校風ができています。本校はチームとしての一体感が強く、相互に思いやるマインドが根づいています。そして、どんなことにも明るく真面目に、前向きに取り組む姿勢も本校の誇りです。
人は環境に染まるもの。光英VERITASという学校もまた、生徒の人間形成にとっての重要な環境であると認識し、校風作りを大切にしています。社会へ羽ばたいた卒業生が、出身校を紹介せずとも「この人は光英VERITAS出身だろう」と認識されるような人材を育てていきたいと考えています。
取材日:2020.4.24