チャレンジができる環境で生徒をのびのびと育てながら、
未曽有の状況下においても柔軟に対応できる力を身につける

聖徳学園中学・高等学校

STEAM教育で新たな価値を創造する教育

生徒の個性を尊重し、一人ひとりをきめ細かくサポートすることに定評のある聖徳学園。充実したICT環境と、新しいものに積極的に取り組む風土の下、生徒を伸ばしている。その教育について、学校改革本部長の品田健教諭に話を聞いた。


—ICT教育の充実で知られています。

品田 本校では2015年から、一人1台iPadを所持し、学習や学校生活に役立てています。また、生徒や保護者への連絡や、教職員間での情報共有のために、16年から「Talk note」を学内専用のSNSとして導入しています。情報を早く、正確に共有するために役立てています。

例えば、生徒が保健室に行った際には、養護教諭が保健室情報として登録します。校内の落し物も現物の写真を添付して情報を投稿できるので、落とし主がすぐに見つかります。この他、学校ホームページのトピックスになるような部活動の活動状況や試合結果などの情報も共有しており、学習面以外での生徒の状況を知ることができます。

なお、連絡禁止の時間帯を設定するなど、使用時のルールをしっかり決めています。学校であれば失敗しても大丈夫ですので、集団内でのSNSの使い方を、社会に出る前に学ぶことができます。

一方、コロナ禍における休校中は、さまざまなシステムを活用して授業を実施しました。普段の授業では、中学で「ロイロノート」、高校で「MetaMoji ClassRoom」という授業支援アプリを使用しています。オンライン授業による「同期型」の学習と、授業動画の配信による「非同期型」の学習がありますが、本校ではガイドラインを作成し、これらを組み合わせて授業を構成するように統一しました。

具体的には、最初にビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使って説明し、次にロイロノートなどで問題を送って演習の時間を設け、最後に再びZoomで集合して解答・解説を行います。対面型の授業とオンライン授業は異なりますので、Zoomで教員がひたすら話し続けるという授業では生徒が疲れてしまいます。非同期型の授業と組み合わせることで、休校中でも授業のクオリティを維持できました。

—休校中に行っていたことで、今後の授業にも生かせることはありますか。

品田 休校中の授業では、板書を書き写す時間がもったいないため、板書用のスライドを作成しました。スライドは文章化し、デジタルブックの形式でまとめて公開しています。さらに、説明の部分は動画にして「ユーチューブ」に限定公開し、デジタルブックからアクセスできるようにしました。生徒が自分で復習するときに、文章と動画のどちらでも好きな方を選べるようにしています。こうした取り組みは今後も続けていくことで、より一人ひとりのニーズに対応できると思います。

また、通常の授業において、必要以上に説明を繰り返していたことに気づきました。ユーチューブにアップロードした授業の説明動画の視聴回数を確認したところ、生徒数に対し視聴回数が少なかったため、授業で一度聞いたら説明を理解している生徒が多いことがわかりました。何度も説明するのをやめたところ、今までの半分の授業数で課題を完成させることができました。課題の提出率も良く、完成度も高かったため、効率的に授業を行うことができました。

—生徒が主体的に取り組めるプロジェクトについて教えてください。

品田 東京学芸大学にご協力いただき、授業に関するアンケートを取りました。4月と8月に実施したアンケートによると、生徒はiPadを使って互いに教え合ったり、交流したりすることへの期待感を高く持っていることがわかりました。また、休校中はじっくり自分の考えを深める機会が増えたことで、自分のアイディアがまとまり、発表したいという気持ちが強くなったようです。

生徒が自分の考えを発表する授業の一つが、動画編集アプリ「Clips」を使ったプロジェクトです。学んだことがない外国語を選び、その外国語の挨拶を教える動画を作成します。完成した動画はクラス内で共有します。教員のみが見るのではなく、クラスの皆が見てくれる環境が、生徒のモチベーションを上げるようです。

生徒が興味を持つようなプログラムを考えるのは大変ですが、本校は自由にチャレンジできる校風で、各教員が授業で新しいことに取り組んでいます。うまくいかないこともありますが、フェイスブックなどのSNSを使って日本各地や世界にいる先生方と意見や情報を交換し、解決方法を模索することもあります。

一方、休校中の放課後の取り組みとして、Zoomを使ったオンライン講座を開催しました。課外活動に代わるものとして、生徒が楽しめるように企画したものです。本校の教員や生徒、外部の方に自由に語ってもらった後、参加者によるディスカッションを行いました。ときには他校の生徒が参加することもあり、好評でした。

—受験生に向けて、メッセージをお願いします。

品田 本校では早くからICT環境を整えており、過去にうまくいかないことも経験しているため、問題に対するノウハウがあります。失敗しても大丈夫という風土があるので、安心して挑戦できます。時代は常々変わっていきますし、再び急変することがあるかもしれませんが、今の体制を維持していれば、対応できると思っています。今後も何が起きるかわからない社会において、ただ知識を身につけるのではなく、覚えた知識や技能をどう組み合わせて乗り切るかが重要です。本校での教育で、そうした力を身につけてほしいと思います。

取材日:2020.9.18