「好きなものをとことん突き詰める楽しさを!」
生徒がのびのびと育つ駒東の自由なクラブ活動

駒場東邦中学校・高等学校

「自主独立の気概」と「科学的精神」を教育の土台にすえる駒場東邦中学校・高等学校。日々の学習とともに、「文化部」「体育部」「同好会」によるクラブ活動も生徒が自ら考え、行動する姿勢を養う場となっている。日本の城を専門に研究する活動で学外からの注目も高い「日本之城研究会」会長の小倉君(高2)と副会長の小田切君(高1)、大川君(高1)、そして、顧問の藤山由彦教諭、石上健士郎教諭にお話を聞いた。


本物に触れるとは

「歴史研究会」のある中学や高校は多いが、日本の城を専門に研究する部活や同好会は珍しい。もともとは有志数人が横浜市にある小机城についての校外発表をするために立ち上げた同好会で、50年を超える歴史を誇る。現在会員は24名、週2回の活動日が設けられているほか、春と夏に日本各地の城を巡る合宿などフィールドワークに重点をおいた活動を行っている。

「通常の活動日はおもに文化祭の展示のための模型づくりなどに取り組んでいます。ほかの部や同好会と兼部している生徒も多いので、すべての活動はあくまで自主参加です。ただ、合宿は中1から高2までほとんどの会員が参加します。やはりみんな城が好きなので」と同会会長の小倉君が語る通り、やりたい会員が各自のやりたいことに取り組むなど、活動方針は自由だ。顧問の先生がたも基本的には生徒に任せていると話す。

とはいっても多くの会員の活動へのモチベーションは高い。特に毎年秋の文化祭で展示される城の模型づくりには、心血を注いで取り組む。図面などの資料をもとに型紙を引くところから始め、厚紙などを材料に、数ヶ月をかけて完成させる。城ごとに異なる天守や櫓などの特徴をとらえ、素材感などにもこだわって仕上げている。

「文化祭の来場者には小学生も多いですが、自分のつくった城を見て『すごい!』と喜んでくれるととても嬉しいですね。城好きの来場者の方と話が盛り上がることもあります」(小田切君)

「僕自身、小学生の時に駒東の文化祭で城研の発表を見て、城の模型に感動した経験があるため、文化祭の展示発表には力が入ります」(大川君)

同会が活動の場としている社会科教室には生徒たちの力作がところ狭しと並び、城に関する資料なども多数収集されている。なかには同会の活動を知った城愛好家が寄贈をしてくれた城の図面など貴重な資料もあるという。

「歴代の生徒たちによる、長年の活動の成果ですね」(藤山先生)

フィールドワークで培う五感を通じた体験と多面的な視点

文化祭では模型の展示のほか、夏合宿で訪れた日本各地の城についてのレポート発表も大きな柱となっている。城の構造に着目したもの、戦術をふまえて城を観察したものなど、ユニークな着眼点で城の魅力を解説したレポートは教室内に掲示される。

石上 健士郎 教諭

石上先生は、合宿などで現地を訪れ「五感で感じる」フィールドワークは城研究に欠かせない活動だと語る。

「今はインターネットなどで、さまざまな写真や動画を見ることもできますし、情報を収集することもできます。しかし、たとえば城はどのような地形に建てられているかも大きなポイントです。山なのか平地なのかで城の役割や構造なども大きく異なるからです。石垣のスケールの大きさなども実物を目の前でみて初めて実感できる。また土地ごとの気候のちがいなど地域差を肌で感じることも重要な経験でしょう。さらには城を中心とした観光への取り組みなどを知ることで、地域振興のあり方に興味を抱くなど、フィールドワークは生徒の社会に対する見方やものの考え方を大きく広げるきっかけになっています」

合宿などの校外活動が生徒の自主性や社会性を育てる

通常の活動だけでなく、こうした合宿などの校外活動もすべて生徒が企画し、実施するのが日本之城研究会のスタイルだ。日本之城研究会では、公益財団法人日本城郭協会が選定した「日本100名城」を中心に、合宿などで日本各地の城を訪れている。現在は新型コロナ感染症対策のため、都内など近郊の城の日帰り見学となっているが、たとえば、2019年の夏合宿では、四国地方に向かい3泊4日で香川県の丸亀城、高松城、愛媛県の宇和島城、大洲城、湯築城、松山城、高知県の高知城を巡る“城三昧”な合宿を実施した。

藤山 由彦 教諭

長年顧問を務める藤山先生は、合宿などの校外活動の意義をこう語る。

「自分たちの目的に合った行程を考え、切符や宿泊場所を手配し、準備する大変さはもちろん、実際に旅行に出れば大小さまざまなトラブルが起こり、決して予定通りにはいきません。慣れない土地で不安もある中、生徒同士が協力しあい臨機応変に対応することで無事にトラブルを乗り越えるという経験は得難いもの。私たち教員は最終的に生徒を守る立場として引率をしていますが、基本的には生徒に任せています。上級生がしっかり下級生の面倒を見て、下級生は上級生の姿に学びつつ成長していきます」

生徒がのびのび活動できる場づくりが教員の務め

最後に先生がたに駒場東邦のよさを聞いた。

「城研のように自分の好きなこと、やりたいことに思い切り取り組める場所がたくさんある学校だと思います。自分の好きなものを持っている生徒たちなので、ほかの生徒の好きなものに対する情熱も『すごいな』と認め合える空気があります。そういう生徒の人間的な優しさや懐の深さも誇りに思っています」(藤山先生)

「クラブ活動だけでなく、文化祭や体育祭などの学校行事も生徒による実行委員会が主体となって活動しています。日々の授業もふくめ、教員は生徒がのびのびと活動できる場づくりを常に大切にしています。お互いに信頼関係があるからこそ、よい距離感でともに学校生活をつくり上げていくことができているのだと思います」(石上先生)

STUDENT VOICE

小田切くん(高1)
大川くん(高1)
小倉くん(高2)

小田切 もともと歴史が好きで城研に入りました。合宿では城郭のみならずご当地グルメなど地域の様々な特色を知ることができ、興味関心が高まりました。

大川 夏合宿では城攻めの視点で宇和島城に登城し、築城者の技術や工夫を実感。その考察を文化祭でレポート発表しました。

小倉 城研では好きなことに全力で打ち込めました。先輩に教えられた多くのことを後輩にきちんと伝えられていれば嬉しいです。

取材日:2021.8.25