水晶やアンモナイトなどを発掘
好きなものに全力で取り組むクラブ活動

駒場東邦中学校・高等学校

全国屈指の男子進学校である駒場東邦中学校・高等学校では、文化部、体育部、同好会によるクラブ活動が積極的に行われている。多くのクラブが生徒主体で活動しており、生徒が自ら考え、行動する力を養う機会になっているという。高い人気を誇る地学部の活動について、高2の大寺慶太郎さん、小林泰久さん、田所和廉さんと、顧問の先生方に話を聞いた。


駒場東邦の地学部は、鉱物・化石や海洋をテーマに活動している。中1から高2まで、63人の部員を擁する人気のクラブだ。

「小学校のときから石に興味があり、駒場東邦の文化祭で地学部の展示を見学して、絶対にこの学校に入りたいと思いました。他校には、天文関連を含めて活動している地学部もありますが、駒場東邦は鉱物や化石をメインテーマに活動できるところが魅力の一つです」そう語るのは高2の大寺慶太郎さん。小林泰久さんと田所和廉さんも、地学部を目指して駒場東邦に入学したという。

化学部から独立してできた地学部は、60年以上の歴史を誇る。週2日、鉱物や化石に関する講習などを行い、見識を深めていくというのが普段の活動内容だ。また、興味がある分野の研究に力を注ぐ部員もいる。小林さんもその一人だ。

大寺 慶太郎さん
小林 泰久さん
田所 和廉さん

小林さんが中2のときに行ったのが、海岸の砂浜に含まれる磁鉄鉱の含有量に関する調査だ。そのときの研究「鎌倉市極楽寺川河口周辺に分布する砂鉄の起源」が校内のコンテストで最優秀賞に選ばれた。その後、田所さんと研究を重ねて日本地学教育学会が主催する全国大会のジュニアセッションに出展。優秀賞に輝いた。

地学部は、部員それぞれの興味・関心に応じて、鉱物、化石、海洋・気象の三つの班に分かれる。最も人気があるのが鉱物班だ。上級生が下級生を指導しながら、ともに活動するという。小林さんがこう話す。

「我々高2も、入部した当初は知識がほとんどない状態でした。中1のとき、先輩は僕たちが理解できる内容に限らず、いろんなことを教えてくれました。僕も同じように後輩に接し、多くの情報を共有することで、石への興味を深めていってほしいと思っています。また、後輩に質問されることも多いのですが、自分で考えてみることも大切なことです。間違ってもいいので、自分で考えてもらった上で、正しい知識を伝えるようにしています」

文化祭では、三つの班ごとに活動内容をまとめたパネルを展示する。当日は下級生が来場者に展示品や活動内容を紹介。自分たちの思いが伝わるように、何度も練習して本番に臨むという。

自分たちで行動するフィールドワーク

校外でのフィールドワークも積極的に行っている。年2回の合宿と年に数回行われる採集会では、生徒自身の手で鉱物・化石類を発掘する。部員たちが採集したものは、文化祭でも展示される。

「なかには高価なものもあります。なにより、みていると採ったときのことがよみがえります。思い出を呼び起こしてくれるという意味でも価値があるものばかりです」(大寺さん)

フィールドワークもすべて、生徒が主体的に進めていく。目的の鉱物・化石が採集できる産地を選び、事前に下見した上で、発掘作業を行う。当日のスケジュールを組み立てるのも生徒の役割だ。「毎回、旅行会社顔負けのプランを立てています」と顧問の飯田先生。

関東近郊に限定して日帰りで行われる採集会に比べ、泊まりがけで実施される合宿では、対象地域を全国に広げている。これまで、北海道や山口県など全国各地で実施しており、地学部OBに協力を仰ぐことも多いという。2016年の北海道合宿では大型のアンモナイトを発掘。文化祭の展示品の中でもひときわ大きく、存在感がある化石だ。

今年の夏合宿では近畿地方を巡った。一日目は奈良県にある黄鉄鉱の産地、二日目は煙水晶などを産出する京都府の鉱山、三日目はアンモナイトやニッポンハコエビなどの化石で有名な兵庫県の産地で、様々な石を発掘した。また、夏合宿中に90分200点満点のテストを実施。最も詳しい部員が作成したこのテストは、教員も舌を巻くような難しい内容だ。成績優秀者には景品も授与された。

高2は文化祭を最後に、引退する決まりだ。これまでの活動を振り返り、田所さんがこう話す。

「生徒は5年間しか活動できませんが、顧問の先生方はこれまでいろんな場所で石を採集しているので、そういうエピソードを聞いているのは楽しかったですし、今後の参考にもなりました。また、地学部では不定期で部誌を出しており、先輩たちの過去の活動を垣間見ることができます。そういう歴史や文化は地学部の大きな財産だと思います。ぜひ後輩たちにも受け継いでいってもらいたいです」

先生からのコメント

顧問|小家 一彦 校長
顧問|堤 裕史 先生
顧問|飯田 和也 先生

小家 「採集会で石に出合う感覚は特別なものです。本物に触れ、そこからいろんなことを感じて、多角的に考察していくきっかけにもなります。その体験で磨かれる力はどんな分野においても生かせると思います」

 「採集会で、人よりたくさん採れる生徒がいます。人一倍石が好きだからこそ、あきらめずに努力できるのだと思います。好きなものは、勉強へのモチベーションにもつながるので、その思いを大切にしてください」

飯田 「彼らのやりたいことを尊重したいので、介入しすぎないようにしています。文化祭や合宿など、いろんなことを仕切るのは大変そうですが、生徒の成長を実感する機会でもあります。ぜひ文化祭や体育祭にきて、彼らの活躍をみてほしいと思います」

取材日:2022.9.18