「知・仁・勇」を備えた
リーダーを育てる伝統男子校
成城中学校・高等学校
創立以来、文武両道主義のもとで人間力を養う教育を実践してきた成城中学校・成城高等学校。今年から中高完全一貫校となり、変化する社会状況や大学入試改革に対応したカリキュラムの構築を目指している。校内のICT化やグローバル教育、表現力を育てる取り組みなど成城の「今」について、今年4月に就任した岩本正新校長に話を聞いた。
―約25年間、理科教員として生徒を指導されてきて、どんなことをお感じになりますか。
岩本 着任当初と比べると、学校周辺の雰囲気は大きくかわりました。当時、都営大江戸線は開通していませんでしたが、今は牛込柳町から徒歩1分と利便性が上がって生徒も通いやすくなったと思います。成城生の雰囲気は以前とあまり変わりません。理科の実験などでは驚いたり楽しんだり、素直なところが成城生の特徴だと思います。本が好きな生徒も多く、図書館をリニューアルしたことで本に触れる機会はさらに増えたようです。
―現在、進めている改革について教えてください。
岩本 高校募集をやめて今年から中高完全一貫校になったので、カリキュラムの前倒しがしやすくなりました。数学は中3で高校の分野に進めるようになり、大学入試に向けて対策を立てやすくなりました。また、学校行事を見直して、授業と関連させながら効果的に実施できるように改革を進めます。
これまで行ってきたグローバル教育の取り組みは、コロナ禍で難しい部分もありますが、継続していきます。本校が全国に先駆けて始めた「エンパワーメント・プログラム」は、1日6時間、5日間の校内研修を通して、自己啓発を促すプログラムです。海外の大学生と議論を重ねることで、自ら課題を発見し、自分の意見を論理的に表現する力を養っていきます。コロナ禍により、今年は1年ぶりの開催となりましたが、このプログラムを通して生徒のコミュニケーション能力が上がっていく実感がありました。自分の行動に責任が持てるグローバルな人材を育てるために、今後さらに内容を充実させていきます。この他、探究的な取り組みについても増やしたいと思います。
―地域とのつながりも重視しています。
岩本 本校には学校が楽しいといってくれる生徒が多いので、学校が落ち着ける環境になっているとは思います。ただ、世の中が急速に変わる中、外部と交流を持ち、彼らに刺激を与えていくことも大切です。その一環として、中2の技術家庭では栽培の授業を取り入れました。敷地の一部を改修し、江戸時代に新宿で栽培されて一大ブームになった「内藤とうがらし」を育てています。これを新宿地域のブランド野菜にするプロジェクトに携わっている人に来ていただき、新宿の文化や歴史について教わっています。今後、家庭科の調理実習など、教科を超えた取り組みにも広げていきたいと思います。外から見える場所に畑があるので、地域の方に話しかけられる機会も増えました。学校がある新宿区に通っていても、周辺の地域について知らないことも多いので、こういった取り組みの中で、新宿に愛着を持ってほしいと思います。
―ICT化も進んでいますね。
岩本 昨年はコロナ禍で約2カ月間休校になりました。対面授業の良さを再確認する一方で、ICTの便利さを知る機会にもなりました。通常の授業に戻ったあともオンライン配信を継続したケースもあります。全教室にWiFiを整備するなど、環境も整いました。端末については今年度中に生徒全員が所持できるように準備を進めています。一部の教科では端末を使った授業も検討しています。
ただ、すでに個人が持っている端末を使って様々なことに取り組んでいる生徒もいます。例えば、鉄道研究部では鉄道で地域をどう発展させていくかなど、探究型の活動の中でICTを積極的に活用しています。部活動の連絡ツールにGoogleのワークスペースを使用している部もあります。
―これからの時代に向けて求められる表現力を養う取り組みがあります。
岩本 本校は男子校ということもあり、文章を書くことが苦手な生徒が目立ちます。自分の考えを人に伝えていくとき、構成を考えながら文章化することを、中学3年間で訓練してもらいたいと考えています。そこで、国語の中で週1時間、伝えたいことを文章にする力やプレゼンテーションスキルなどを養い、母語である日本語の4技能を磨いていく時間を設けています。実践を繰り返しながら、表現力を養っていき、その集大成として高1での論文作成を取り入れていく予定です。
―求める人物像を教えてください。
岩本 校訓にもある「自学自習」「自治自律」を実現し、自分でいろんなことを打開していく力を養うことが最終的な目標です。そのために、客観的な視点で自分を見つめていく、メタ認知的能力を高めてほしいと考えています。ただ、自分で考えて行動できるようになる時期は人それぞれなので、全員を枠に当てはめるのではなく、その成長を見守っていくというのが本校のスタンスです。
―受験生や保護者に向けてメッセージをお願いします。
岩本 受験勉強に忙しく、自分のやりたいことができない受験生も多いと思います。今はそれを温めておいてください。突拍子がないことでも相談することで形になるものがたくさんあります。今年、本校に誕生したビオトープもそうです。科学部の生徒の相談を受けて場所を提供したところ、2〜3人であっという間に作り上げました。池の中に段差をつけ、水流をつくり、植物を植え、メダカとタニシを住まわせるなど、日々進化しています。このように、成城には生徒がやりたいことを実現できる環境があります。入学したらぜひ、興味があることに取り組んでもらいたいと思います。
取材日:2021.8.27