数学からみえてくる
巣鴨の特色ある教育

巣鴨中学校・高等学校

スーパーエリートと過ごし情熱に火をつける6日間巣鴨サマースクール

創立100年を超える伝統校として、長きに渡って男子英才教育に力を注いできた巣鴨中学校・高等学校。真のエリートを育てる教育の中で、力を入れているのが数学だ。その教育について、数学科の森山敦史先生、爲貝基文先生、今坂直哉先生に話を聞いた。


巣鴨の数学は、中学1・2年で中学の内容を終えて中3から高校の分野に入り、高2の終わりに高校の学習範囲がすべて終了。高3の1年間は大学入試に向けた演習問題が中心になる。高2から志望の学部・学科によって文数系・理数系に分かれるが、文系学部を目指す文数系でも、高3まで数学が必修だ。

中2で中学の内容、高2で高校の内容を終えるのでペースが速いと思われがちだが、進度的には他の進学校と大きな差はない。今坂直哉先生がこう話す。

「数学が得意な生徒もそうでない生徒も、細かなところまでしっかり学び、確かな基礎を築いてほしいと考えています。生徒がつまずきそうなポイントは時間をかけて丁寧に教え、演習や確認テストを頻繁に実施しています。一学年に対して教員二人の体制で生徒の反応をみながら柔軟に対応しているので、ペースが速すぎるといった声はありません。何よりも、数学の面白さや楽しさを伝えられるような授業の展開を日々心掛けています」

今坂 直哉 先生

巣鴨では中1・2の早期から学習習慣や勉強方法を身に付け、基礎基本を養っていくことに重きを置いている。そうしておかないと、その後の学習を積み重ねていくことが難しくなるからだ。森山敦史先生が言う。

「学習の習慣づけをするために、週1ペースで小テストを実施しています。テストがあればちゃんと勉強しますし、そこで生徒の理解度を確認できるからです。数学が得意でない生徒にはフォローアップ講習を行うことで、基礎基本がしっかり身に付くようサポートしています」

森山 敦史 先生

フォローアップ体制が整っていることも、巣鴨の特色の一つだ。勉強につまずいてしまうと、学校生活全般に影響が出る場合もあるからだ。爲貝基文先生がこう続ける。

「フォローアップ講習も、なぜ残って勉強するのかを考えさせてから行うなど、数学ができないことで疎外感を持たないよう、様々な形で生徒をフォローしています。数学が苦手な生徒を伸ばしていくことは、彼らの成長だけでなく、数学が得意な生徒にとって勉強しやすい環境をつくる上でも大切なことです」

巣鴨には数学が好きで、もっと勉強したいと意欲にあふれた生徒が多い。そういう生徒には、ステップアップ講座を2〜3週間に1回実施している。夏や冬などの長期休暇中にも開催しており、自由参加にもかかわらず、多い時には100人弱の生徒が集まるという。普段の授業では扱わないような難しい問題にも挑戦することが、数学への好奇心をさらに高めていくきっかけになっている。

また、最大の特徴が、数学の成績上位者を集めた数学クラスを中3・高1で設置していることだ。進度は一般クラスと同じだが、内容をより深く掘り下げて学んでいる。学期ごとに行われる定期テストなどの結果によって入れ替えがあるため、数学クラスを目指して勉強に励む生徒も多いようだ。爲貝先生が言う。

「学習範囲をいち早く終わらせて、よりレベルの高い問題に挑戦することで、数学的な思考力を高めていくクラスです。知的好奇心の塊のような生徒が数多く集まり、お互いに高め合っていく雰囲気があります。数学を重視したクラスではありますが、音楽や剣道など必修の実技科目も含め、全教科にわたってバランスが取れている生徒が目立ちます」

爲貝 基文 先生

高2からフラットなクラスに戻るものの、数学クラス出身の生徒が中心になって、クラス全体で大学受験に立ち向かっていく空気がある。数学クラスは学校全体にいい影響を及ぼしているようだ。

独自の問題で、国語力も判断する算数選抜

一方、中学入試では算数の1科目入試で合否を判定する算数選抜を2年前から実施。定員240人のうち、20人を算数選抜で募集している。4科入試の算数より難度が高く、試験時間も10分長く設定されている。

この入試では、計算力や数学的な素養だけでなく、長文を精読する国語力なども求められる総合的な問題が出題される。算数選抜の入学者は、他の教科についても高い学力を持つ生徒が多いという。今坂先生がこう続ける。

「算数選抜で入学した生徒は、群を抜いて数学への興味・関心が高いです。数学のことを毎日考えているような生徒も多く、数学に関する月刊誌を購読し、学力コンテストに応募するような生徒もいます。そういう生徒の数学への熱い思いが他のクラスメートに伝わり、クラス全体がいい影響を受けています」

大学合格実績も堅調だ。2021年度は東大をはじめとする国公立大に64人が合格。文系の生徒も高3まで数学を学ぶなど、全教科をバランスよく学ぶ姿勢が、国公立大の実績につながっている。

最後に、受験生に向けて森山先生がこうメッセージを送る。

「コロナ禍で大変な社会情勢ではありますが、そんな中でもモチベーションを保ちながら勉強していることは、今後の財産になるはずです。また、今勉強ができているのは保護者の協力があってこそ。周りの人に感謝しながら、残りの受験勉強を頑張ってもらいたいと思います」

取材日:2021.9.21