茶道を通して「相手を思いやる心」を育てる
巣鴨の茶道班の取り組み

巣鴨中学校・高等学校

スーパーエリートと過ごし情熱に火をつける6日間巣鴨サマースクール

強く生きる心を育てる「硬教育」の教育方針のもと、学問だけでなく芸術や学校行事など、学校生活のすべてに真剣に取り組む校風の巣鴨中学校・高等学校。班(クラブ)活動も盛んで、多彩な種類がある。茶道班の前班長の蓮見剛さん(高3)、現班長の平林巧成さん(高1)、班員の佐々木春嘉さん(高1)に、茶道班の活動について話を聞いた。また、顧問の尾形光祐教諭、外部指導者で裏千家茶道教授の石塚宗修さんにも話を聞いた。


―茶道班の活動内容について教えてください。

蓮見 お茶を点(た)てる一連の所作を「お点前(てまえ)」と呼ぶのですが、決められたお点前や自分のやりたいお点前を練習しています。手順が書かれた指導書を読んで学び、細かい部分や美しくお点前をするコツなどを先生や先輩から教わります。

佐々木 普段は10人程度の班員が集まって活動していることが多いです。また月に数回、外部から先生を招いて指導を受けています。

平林 今年の7月には「Double Helix(ダブル・ヒーリックス)」という国際教育プログラムのために、巣鴨にお越しくださった海外の先生方に、お茶を振る舞う機会がありました。海外の方にお茶を出すのは初めてだったので、いい経験になりました。

前班長|蓮見 剛さん(高3)

―他の班と兼部している生徒はどれくらいいますか。

平林 班員の半数は兼部しています。僕たち3人は陸上競技班にも所属しています。茶道班の活動日は週3日ですので、うまくやりくりすれば兼部も可能です。

―どういうきっかけで茶道班に入班しましたか。

平林 茶道に興味があったので中1で入班しました。

佐々木 当時、僕たちの代の班員が平林くんしかおらず、平林くんに誘われて中3のときに入班しました。いざ入ってみると茶道の世界は予想以上に面白く、今ではすっかり夢中になっています。

蓮見 母が茶道をたしなんでいた影響で、小さい頃からお茶になじみがありました。また、茶道など「道」のつくものを習うと受験のときなどに心を落ち着けることができると聞いて入班しました。

現班長|平林 巧成さん(高1)

―茶道の魅力とは何でしょうか。

平林 お点前を披露したり頂戴したりするときの作法が、ひとつずつできるようになると達成感を得られます。作品のように成果が目に見える形で残るわけではありませんが、覚えたことを自分のものにできているという感覚は嬉しいものです。

佐々木 お点前の最初から最後までを綺麗にやり通せたときは、相手にもお茶を気持ちよく飲んでいただけるので、充実感があります。

蓮見 お点前の動作には無駄な動きが一切なく、それぞれにきちんと意味があることを先生に教えてもらったときに、茶道の面白みを感じました。一番顕著なのが道具を清める動作です。洗浄済みなのでもちろん清潔なのですが、相手の前でもう一度清める動作をすることで、相手に対する心遣いを表しています。そうした思いやりの心が込められていると知って、より茶道に興味を持ちました。

班員|佐々木 春嘉さん(高1)

―茶道班に入って良かったことは何ですか。

佐々木 茶道を始めてから集中力が上がりました。また、少しですが、日本の伝統文化に詳しくなれたのも、茶道班ならではのメリットだと思います。

蓮見 学校に行くのがより楽しくなりました。班員とお点前を教え合ったり、何気ない会話をしたりするのは、かけがえのない時間です。人とのつながりを大事にする茶道班だからこそ、ここまで仲良くなれたのかなと思います。

―茶道班の今後の目標について教えてください。

平林 現在はコロナ禍の影響で、巣園祭(文化祭)や新年の伝統行事「初釜」でお客様にお茶を出すことができていませんが、そういったイベントの復活に備えて、日々の活動により一層力を入れていきたいと思っています。また、外部のお茶会にも参加させていただきたいと考えています。都内の男子校で唯一の茶道部なので、誇りを持って活動していきたいです。

―巣鴨のいいところを教えてください。

蓮見 とにかく学校行事が盛んです。一晩中、山を歩く「大菩薩峠越え強歩大会」など大変なものもありますが、実際に経験すると意外に楽しく、いい思い出になります。

平林 巣鴨は厳しいというイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、構える必要はありません。礼儀を大切にしている学校なので、在学中に全員が一定レベルの礼儀作法を身につけられるようになります。

佐々木 国際教育プログラムが豊富です。「イートン校サマースクール」が有名ですが、それ以外にも短期から長期までさまざまなプログラムがあります。また、日々の補習や長期休みの補習もしっかり行っているので、学習サポートも万全です。

先生からのコメント

右:裏千家茶道教授|石塚 宗修さん 左:顧問|尾形 光祐 教諭

尾形 茶道のお点前は、相手のことを思いやるというのがすべてに通ずるところです。ひとつずつお点前を覚えていくという営みが、生徒にとって思いやりの心を学ぶいい活動になっていると思います。中1の頃はまだやんちゃだった生徒たちが先輩として後輩を指導している姿を見ると、成長したなと感じますね。本校は、興味のあることをとことん突き詰められる学校です。また、新しく何かを始める場合でも、チャレンジできる環境が整っています。さまざまなことに挑戦したい、意欲のある人をお待ちしています。

石塚 指導にあたっては、お点前の形だけにとらわれないように、なぜそういう作法になっているのかということを考えさせて、本質的なところに迫ってもらえるように心がけています。昔から大名や企業の社長などもコミュニケーションツールのひとつとして、茶道をたしなんできました。一流のリーダーが惹かれた茶道は、社会に出てからも多くの学びがあります。卒業して終わりではなく、長く茶道を続けてもらいたいと思っています。

取材日:2022.9.8