成長段階に合わせた3ステージ制を採用。
幅広い教養を身につけ、変動する社会で柔軟に行動できる人材を育成
安田学園中学校・高等学校
2014年の共学化以降、大学合格実績が飛躍的に伸びている安田学園。21年3月には共学化2期生が卒業し、国公立大と早慶上理(早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大)を合わせた合格者数が過去最高人数となった。この躍進について、STAGEⅢ の主幹を務める志田憲一教諭(理科)と、同じくSTAGEⅢの主任を務める大河原克巳教諭(数学科)に話を聞いた。
3ステージ制で生徒を無理なく成長させる
安田学園では、中高の6年間を3つのステージに分けて、段階を踏んで成長できるようにしている。
STAGEⅠ(中1〜2)では、基本的な生活習慣や、学習習慣を身につけるのが目的だ。6年間かけて学んでいくための土台作りを行う。
STAGEⅡ(中3〜高1)では、自分の学習状況を客観的に分析したり、身のまわりの課題に対して自分なりの仮説を立てて検証したりする力を養う。
STAGEⅢ(高2〜高3)では、自分に合う学習方法を確立させ、将来を見据えた希望進路への学習を進めていく。
各ステージには定められた目標があり、教員はそれを達成するための具体策を考えて実施していく。ステージを統括するのが主幹の教員で、主幹を補佐するのが主任の教員だ。主幹および主任の教員と、学年主任を中心とする各学年の教員たちが協力しながら、学習面だけでなく生活面も含めた学校活動全般の運営にあたる。ステージ制の特徴について、大河原克巳教諭がこう話す。
「学年で区切られたステージにはそれぞれ異なった特性とサイクルがあります。そうした特徴をよく理解している教員や、核となる教員が中心にステージ全体を率いることで、ステージごとの目標を着実に達成することができます」
また、志田憲一教諭がこう続ける。
「ステージ間の連携も重要です。私たちは6年間のストーリーを大切にしたいと考えています。そのためにはステージごとの情報交換や打合せを週1回行い、各ステージの様々な活動について議論を行っています。いつも生徒が安心して活動できるように心がけています」
試行錯誤を重ねたコロナ禍での進路指導
進路指導は高1から段階的に実施している。高1では、志望する学部学科の方向性を定めることや、大学について知ることに主眼を置いている。情報の教科の時間を活用して職業適性検査を行ったり、夏休み期間中に行われる夢ナビライブなどのイベントを利用して、実際に大学教員の講義を受けたりする。
高2では、現役大学生である卒業生の話を聞く機会を設けている。コロナ禍では卒業生に受験体験記を書いてもらい、文集を作成した。加えて、メッセージを集めた動画を作成し、YouTubeに限定公開でアップロードして生徒に共有した。先輩がより身近に感じられたとのことで、例年よりも好評だったという。
一方、高3ではそれまでに培ってきた力を最大限に発揮し、第一志望の大学受験に向けて、勉強を進めていく。自分の弱点を知り、克服するために何をしなければならないかを把握して、自分でやってみることを主軸としている。昨年の休校期間中は、学校主体ではなく、自分で考えて時間を有効に使った高3生が多かったという。また、“高3生を最優先に”を学校のスローガンとして、夏に向けて学校全体で高3生をバックアップした。校内で行う夏期講習などは、高3生だけに絞ることにより、人数を最小限にして感染防止対策を徹底。自習室も席の間隔をあけて指定席を作り、使用時間も決めるなどして、高3生が校内で勉強できるように工夫した。
そうした試行錯誤の結果、2021年3月卒業生の大学合格実績は、国公立大や早慶上理を中心に大幅に伸びた。大河原教諭がこう考察する。
「一般選抜はもとより、総合型選抜で合格する生徒も増えてきました。高3オールスタッフで新入試制度をしっかりと理解した上で、生徒個々の強みを見極めた受験指導が結果につながったように思います」
幅広い教養や人間力を身につけ、これからの社会を生き抜く
今後、さらに国公立大の志望者を増やすことを目指している。具体的には、2029年度までに、高3生の50%が国公立大に合格するのが目標だという。大河原教諭がこう話す。
「世の中のニーズが、幅広い教養を持つ人材にシフトしていくように思います。今後の社会が大きく変容していく状況で、いかなる場面でも柔軟に対応できる力が求められていると予想しています。本校における探究、課外活動等を通じて生徒個々は関心、能力を一層高める一方、卒業後の目標を意識する過程で各教科で満遍なく学習することの重要さに気づき、学びを深めていくことを期待しています。その結果、国公立大学への進学を意識する生徒が自然と増加するのではないかと予想しています」
また、安田学園は道徳教育にも力を入れている。創立者である安田善次郎翁の教えをまとめた副読本を用いて、道徳の教科の時間を使って人間力教育を行っている。人としてどのように生きるべきかを考え、知識だけに偏らず、人間としての総合力の向上を目指すのが目的だ。
最後に、受験生に向けて、志田教諭がこうメッセージを送る。
「生きていくうえで、勉強だけではなく大切なものがたくさんあります。やり抜く力や、自分はできるんだという自己肯定感を持つこと、他人を思いやる力、好奇心などです。そういったものを本校で学んで身につけてほしいと思います」
取材日:2021.9.10