「すべてのことに挑戦する」意識を醸成
広尾学園小石川中学校・高等学校

「自学創造」を実現するきめ細かな教育プログラムを実践

2021年4月に誕生した広尾学園小石川中学校・高等学校は、教育連携を結んだ広尾学園と同等・同質の教育を実践しているのが特徴だ。新たな体制となって2年目を迎えた状況を踏まえ、教育の特徴について松尾廣茂校長に話を聞いた。


ー教育理念について教えてください

松尾 教育理念は「自律と共生」です。これからの世の中では、答えのない問題に積極的に取り組んでいくことが求められます。自ら問題を発見し、それを解決していく問題解決力が自律のベースとなるものです。

また、自律するためには、他者の存在も重要です。自発的に物事を動かしていくときに、周りの友人が支えてくれたり、認めてくれたり、大きな拍手を送ってくれたりするからこそ、自分がより大きく成長できます。周囲の人々から信頼され、常に感謝の気持ちを持って周りを明るくする人材を育成したいと考えています。

生徒には、チャレンジを恐れず、世界へ羽ばたいていけるようになってもらいたいです。また、大きな視点で物事を考える力を身につけてほしいと考えています。世界に目を向けて、将来の自分の活躍の場を広げるために、世界がいい意味で小さく見える、世界が身近に感じられるような環境づくりを心がけています。

ー具体的にどのような教育を行っていますか。

松尾 インターナショナルコースと本科コースの2コースがあります。インターナショナルコースのクラスは、帰国子女などのすでに英語力のある生徒のグループ「アドバンストグループ(AG)」と、これから英語力を身につける生徒のグループ「スタンダードグループ(SG)」に分かれています。

ホームルームや美術、技術家庭科などの授業は、AGとSGが一緒になって英語で授業を受けます。外国人教員と日本人教員のダブル担任制で、ホームルームは主に外国人教員が担当します。SGの生徒はAGの生徒に教えてもらいながら徐々に英語に慣れていき、1学期が終わる頃には外国人教員の話を正確に把握できるようになります。日本人教員もいるということが、SGの生徒にとっては安心感につながるようです。

海外で育った生徒は物おじせず質問をしたり、積極的に人の輪に入っていく様子が見られます。日本で育ったSGの生徒は、AGの生徒のそうした姿に刺激を受け、自然と積極性が増します。一方、学習面においては、日本は海外に比べて理数系科目の進度が速いため、SGの生徒がAGの生徒に教える場面もあります。お互いの長所を認め合いながら、いい影響を与えていく関係が構築されています。

本科コースは、自分の強みがまだわからない人や、将来の方向性をこれから考えていきたい人のためのコースです。興味・関心をゆっくり見出していくことはとても大切です。勉強など何でも速くこなせる生徒もいれば、時間がかかる生徒もいます。時間がかかるというのは、学力や能力の差ではなく、その生徒の特性のひとつだと考えています。生徒が皆、諦めずにさまざまなことに取り組めるような環境と機会ををたくさん用意したいと思っています。

ー広尾学園とはどのように関わっていくのでしょうか。

松尾 広尾学園のキャリア教育プログラムの一部に本校の生徒も一緒に参加しています。また、部活動においても、例えばサッカー部は週1で合同練習を行っています。このほか、本校のいちょう祭(学園祭)には、広尾学園の生徒を招待しました。さらに、今年の夏のオーストラリア短期語学研修も、広尾学園と合同で実施しました。ホームステイ先では広尾学園の生徒と本校の生徒を2人1組で組ませるなど、同じ学校のようなイメージで活動しています。今後も、連携した教育活動をより強化していきたいと考えています。

ーキャリア教育にも力を入れていらっしゃいますね。

松尾 「体験すること」「本物に触れること」を大切にしています。家庭ではなかなか体験できないようなこと、広尾学園小石川だからこそ体験できるプログラムを数多く用意しています。

各界の第一線で活躍している方々による「特別講演会」を筆頭に、「模擬裁判講座」や東京藝術大学との提携による「アート体験講座」、最先端を究める科学者や最前線で活躍するジャーナリストによる講義「広学スーパーアカデミア」など、キャリア教育プログラムは多岐にわたります。

今年の夏休みに開催した、東京都立産業技術高等専門学校との提携による「ロボットプログラミング講座」では、指導された先生が驚くほどの応用力を持った本校の生徒が参加していたそうです。学校の中だけでは見えない生徒の才能がクローズアップされるのも、キャリア教育の醍醐味だと思います。

一方、本校は文京区にあり、学校周辺には学びに関係するさまざまな施設があります。日本最古で最大の東洋学の図書館「東洋文庫」と博学教育連携を結び、ワークショップや付属ミュージアムの特別展見学を実施しています。また、歴史ある男子学生寮「和敬塾」とも連携協定を結び、入寮している学生と交流を深めています。このように、地の利を生かした教育活動も進めています。

ー最後に、受験生や保護者にメッセージをお願いします。

松尾 生徒が卒業後、社会で活躍するようになってから、自分の原点は広尾学園小石川での学園生活にあると思ってもらえるような教育を行っていきたいと考えています。受験生の皆さん、一緒に夢をかなえていきましょう。まだ夢が決まっていない人は、一緒に夢を考えていきましょう。人は皆、誰にも負けない強みを持っています。努力は無駄にはなりません。結果のみにこだわるのではなく、受験勉強を頑張ることで、諦めない心を育ててください。

取材日:2022.9.9