自然に、楽しみながらICTを活用。
将来を見据えたICT教育

日本大学明誠高等学校

のびのびとした環境が魅力の日本大学明誠高等学校。ICT教育では、「デジタルを強要しないこと」をモットーに、アナログとの併用を目指している。ICT教育の方針について、ICT委員長の金田真幸先生に話を聞いた。


豊かな自然に恵まれ、広大なキャンパスを誇る日本大学明誠高等学校。人工芝の運動場や野球場、屋内練習場など、充実した体育施設も擁している。2024年度には新校舎が完成予定で、さらに教育環境が整備される。校舎のある山梨県上野原市は東京都や神奈川県からのアクセスが便利なため、県外生が9割を占めている。

ICT教育は、20年から導入した。他校に比べてやや遅めのスタートだが、慎重に、段階的に取り入れ、明誠高校らしい仕組みを作ってきた。1年目は教員に、2年目は1・2年生にiPadを配付。そして今年、1人1台のiPadが全学年に行き渡った。導入当初は、コミュニケーションツールの一つとして、情報のやりとり、課題の提出、家庭学習時間の管理をメインに使用していた。時間と場所を選ばずに情報のやりとりが可能となった結果、自分の意見を発信し、人の意見に触れる機会も増え、社会性が広がったという効果が見られた。

ICT委員長の金田先生は、ICT教育の方針についてこう説明する。

「ICTの使用を強要するのではなく、教員、生徒ともICTを使わない選択を残しています。アナログの良さも生かしつつ、デジタルとのハイブリッドを目指します。本校の教育方針として『人間力の育成』を掲げているため、人と人とのつながりは、会話を重視しています。また、できるだけ利用制限をかけないことも特徴です。生徒をルールで縛るのではなく、対話をしながら、判断力を養います」

金田 真幸 先生

金田先生は社会科の担当だ。文系の教員がICTを担当することで、“やれば誰でもできるようになる”ということを示しているという。デジタルをうまく使いこなせない人に対しては、一緒に模索しながらやっていこうという姿勢で寄り添うので、内面的な安心感を与えている。

授業では、教員の指示があった場合のみiPadを使用している。ICTの導入により、より深い学びを進めることが可能になった。使用例を見てみよう。協働学習の際、シンキングツールを使って生徒同士の意見を共有し、他者理解につなげている。社会科では地図や画像の閲覧、理科では実験の画像などを視聴して理解を深める。家庭科では、教員が裁縫の動画を撮影し、それを手本にしながら、何度も見返して作業を進めることができる、などだ。欠席した生徒に授業動画を共有できることも大きな利点だ。

さらに、今年の1年生からは、「総合的な探究の時間」において、企業が提供するオンラインプログラムを使った双方向のICT学習体験を実施している。これは、各界で活躍する著名人などの、さまざまなテーマの動画を視聴して、多様な価値観に触れる授業だ。動画の途中で生徒に向けて質問が投げかけられ、各自がアウトプットを投稿する。他の生徒のコメントをシェアしながら、お互いにやりとりをする。新たな気づきを得て、「自己理解と他者理解」を深めることを目指している。

あらゆる場面でICTを活用クリエイティビティも伸張

授業以外でも、iPadを活用している。今年6月に開催した「アカデミア明誠」という行事では、1年生はクラスのCMを制作する企画を行った。班ごとにiPadを駆使して写真やSNS画面を編集し、CMを制作。全校生徒に発表して、好評を得た。また、3年生のダンスの企画では、練習中にiPadを活用。ダンスが上手な生徒の動画を撮ってその場で共有したり、撮影した動画にコメントを付けて拡散したりと、幅広い機能を使いこなした。

生徒に配付する端末にiPadを選択したのは、アプリが豊富なため、クリエイティビティを伸ばす効果が期待できるからだ。また、大半の生徒が中学校ですでにクロームブックを使っていることも影響している。さまざまなOSやアプリに慣れておけば、社会に出た時に役に立つからだ。ただ単に勉強のためだけのICTではなく、卒業後の将来までを見据え、生徒の可能性を伸ばす環境を整えている。

ICT教育の今後の展望について、金田先生がこう話す。

「ICTの特別感をなくすことが目標です。服を着ている感覚と同じくらい、当たり前であり自由に使いこなせることを目指しています。今後は、生徒がデジタルで取り組んだ成果物を掲示することで、良い作品から刺激を受け、高め合ってほしいと考えています。授業の中でもICTを使わなければ解けないような仕掛けを作っていく予定です。さらに、楽しみながら使う中で、より深くICTを究めてアプリを開発するような『スペシャルな生徒』が出てくることを期待しています」

24年度に完成予定の新校舎には、全館、Wi-Fiが整備される。さらに、黒板がなくなり、プロジェクタ・電子黒板の機能を備えた大型掲示装置が導入される。これにより、あらゆる授業形態に対応でき、授業の幅が広がる。また、大型テレビをカフェテリアなどに配置し、情報を発信していく仕掛けを計画中だ。

最後に、受験生と保護者に向けて、金田先生がメッセージを送る。

「チャンスにあふれた学校です。学校生活全般は生徒に委ねられており、やりたいことを具現化することができます。付属校のメリットとして、卒業後は、多彩な学部・学科を設置する日本大学への進学が可能です。一方で他大学受験も奨励しており、勉強に打ち込みたい生徒には寄り添ってサポートします。自由に高校生活を満喫した後は、多様な選択肢が広がっています。自分の可能性を広げ、何にでもチャレンジできるスクールライフが待っています」

取材日:2022.9.12