生徒のやる気に応えるための環境を整え、社会に貢献し、
世の中を変える可能性を持つ人材を育成
埼玉栄中学・高等学校
生徒一人ひとりの可能性を引き出し、広げていくための教育に力を入れている埼玉栄中学・高等学校。部活動の成績だけでなく、大学合格実績や学習面でのさまざまな新しい取り組みが注目を集めている。どのような学校作りを行っているのか、林昭雄教頭に話を聞いた。
「人間是宝(にんげんこれたから)」の建学の精神のもと、一人ひとりの潜在能力を引き出し、高めていく教育を実践している。特に力を入れているのが、主体的な活動を促す取り組みだ。
授業は、覚えた知識を発表するアウトプット型の学習を多く取り入れている。例えば、国語では与えられたテーマに対し、生徒が5分間ほどスピーチする時間を設けている。社会ではディスカッションの機会が多い。英語は「話す・書く」ことに重点を置いた授業を行っている。
希望者対象の演習授業があるのも特徴だ。朝は7時40分から弱点補強のための0時限授業を、放課後は16時から発展的な内容の7時限授業を実施している。自分で自由に授業を選択することができ、中学生が高校生の講座を受けることも可能だ。
また、部活動では、創設3年目となる総合型探究部が活発に活動している。興味のある事柄から自分でテーマを設定し、課題を見つけて解決方法を考え、世の中に発信していくのが主な活動内容だ。企業訪問、プレゼンテーションやディベートのコンテストへの挑戦も積極的に行っている。小中学生対象のプレゼンテーションアワード「スタートアップJr.アワード」に出場し、2年連続で決勝に進出した。林昭雄教頭が次のように話す。
「自分で課題を探すことはとても大変ですが、これからの世の中に必要な力です。教えられたことだけを考えるのではなく、どうすれば社会がより良くなるのかという視点で物事を考えるのが重要です。本校ではプレゼンテーション教育を行っていますが、総合型探究部を含め、すべての生徒が探究的な学びを深めてほしいと思います」
ルーブリックを活用し、目標を具体化
中学のクラスは、医学、難関大、進学の3クラス編成だ。医学クラスは、将来、医師を目指す生徒が対象だ。北里大、筑波大、東大、日本大などの医学部と連携し、講義を受けたり研究室を見学したりしている。難関大クラスは国公立大学をはじめとする難関大学への合格を目指し、進学クラスでは幅広い進路に対応している。
「医学クラスでは定期的に大学を訪問し、医師として社会貢献するという気持ちを固めてモチベーションを高めます。また、主として医学・難関大クラスを対象に、外部の方を招いた出前授業を実施しています」(林教頭)
一方、新たな評価方法としてルーブリックを導入した。学習の達成度を、評価基準を示した表を用いて測定するもので、新しい評価方法として注目されている。教員と生徒の双方が評価基準を共有することで、互いに到達点を確認しながら学習に臨めるという。林教頭がこう話す。
「探究学習でのプレゼンテーションを円滑に進めるために導入したのがきっかけです。現在は各教科でルーブリック表を作成しています。目標が具体化されて学習に取り組みやすくなりました。その結果、進学クラスの生徒の中で、上位の難関大クラスへの変更を希望する生徒も増えています。より高みを目指すという意識の変化が出てきました」
ICT環境を充実させ、チャレンジする気持ちを後押し
今年の中1と高1からiPadを一人一台導入し、普段の授業や校外学習などさまざまな場で活用している。授業では、デジタル教科書のほかにAI教材を使用し、一人ひとりの習熟スピードに合わせて学習を進めている。校外学習では、iPadで写真を撮るなどして、プレゼンテーションの資料作りに役立てている。
また、今秋以降に学校の敷地内で第5世代移動通信システム(5G)のエリア化が予定されている。高速大容量に加え、多数同時接続、高信頼・低遅延通信が実現されることで、教育内容の可能性が広がる。
「ICTの活用で授業の効率が上がりました。その結果生じた時間を教科横断型の課題解決型学習などにあてていきます。5Gエリア化の実現後は、VRゴーグルを使用した授業を展開したり、企業と連携して生徒が教育ソフトを開発したりすることを期待しています。本校ではこうしたICT環境に関する一連の取り組みを『未来の学びプロジェクト』と名付け、力を入れて取り組んでいます」(林教頭)
あらゆる教育活動を通じてキャリア教育を実施
キャリア教育として、中学では企業のトップを招いた教育講演会を開催、高校では様々な分野の第一線で活躍する社会人講師とともに一人ひとりが輝く未来を探究する。また、中学生は毎日朝読書を実施し、視野を広げている。さらに、中1の長瀞、中2のつくば、中3の鎌倉の校外学習でも多彩な体験を通して興味・関心の幅を広げている。
進路指導では、校内の各部署が連携して学校全体でバックアップしている。進路指導センターを設置して生徒の相談にも随時応じている。
最後に、林教頭がメッセージを送る。
「本校では、何かやりたいことや、挑戦したい気持ちがある生徒のために、それらを十分に生かせる活動の場を用意しています。教員も全力でサポートします。やる気のある生徒が大勢いるので、周りに影響されて自然と頑張れるようになります。将来、社会に貢献したい人や、世の中を変えるようなアイディアを生み出したい人は、ぜひ一度見学に来てください」
取材日:2022.5.16