英語力・人間力を大きく伸ばす
ターム留学がスタート

本郷中学校・高等学校

「個性を尊重した教育を通して国家有為の人材を育成する」を建学の精神として掲げる本郷中学校・高等学校は、昨年100周年を迎えた。その節目の年に、建学の精神を具象化し、これからの100年をつくるグローバル人材を育成するターム留学がスタート。その内容について、井地薫先生と参加した生徒に話を聞いた。


100周年記念事業として始まったターム留学は、一般家庭に単身でホームステイしながら約3か月間、アメリカ・イギリス・ニュージーランド(NZ)の現地の学校に通うプログラムだ。言葉や文化、信条が異なる人々とともに社会をけん引していくグローバル人材を輩出する新たな取り組みの一つだという。ターム留学について、英語科の井地薫先生がこう説明する。

「約3か月間で英語力を伸ばしていくことはもちろん、人間力を高めていくことも重視しています。ホームステイで現地校に通うという、生徒にとって最も負荷がかかる留学形態なので、さまざまな苦労があるとは思います。その分、人間として大きく成長できるプログラムになっています。今は、困難なことを避ける若者が多いですが、このプログラムには数多くの希望者が集まりました」

選考にあたっては、年1回実施しているGTECのトータルスコアで、学年の上位10%以内に入った生徒を出願対象とするなど、応募基準を厳しく設定。その後、書類審査と面接を実施し、第一期生を選出した。

留学前、日本文化を伝えるために何ができるのかを各自で考え、話し合うなど事前学習を進めた上で、今年1月に第一期生を送り出した。現地では、英語力を伸ばすことはもちろん、人種や年齢を超えた人間関係を築き、他の国々の文化についても深く学んだ。多様な体験を経て、人間的にも大きく成長したようだ。ターム留学に参加した高3のH.I.さんがこう話す。

「最初は、授業についていくのが大変で、会話を続けられないなどの失敗を何度もしましたが、失敗しないためにはどうすればいいのかを自分で考えたり、人に相談することで克服し、そうした状況を楽しみながら乗り越えられました。いろんな体験をして成長した自分の姿を後輩にも見てもらうことで、『挑戦することの楽しさ』を伝え、彼らのチャレンジを後押ししていきたいと思います」

本郷では、ターム留学の他にも夏休みの2週間の海外研修プログラムを実施している。コロナ禍が落ち着き、プログラムが再開したことで、外に目を向ける生徒も増えているという。ターム留学で大きく成長した彼らの経験は、さまざまな形で後輩たちに受け継がれていくに違いない。

最後に、受験生や保護者に向けて、井地先生がこうメッセージを送る。「本郷は、さまざまなことにチャレンジして視野を広げ、自らの手でチャンスをつかむ生徒が多い学校です。どんなことにも臆せずに挑戦する生徒は、明るい未来を実現できると思います。慎重に考えすぎて、最初の一歩をまだ踏み出していない生徒もいますが、様々なタイプの生徒の居場所があることも、本郷の良いところだと思います」

井地 薫 先生

STUDENTS VOICE

高2 Y.Y.さん|イギリスの語学学校プログラムに参加

イギリスの学校は、ディスカッション形式の授業が多く、最初はその中に入っていくのが大変でしたが、少しずつ慣れ、友人も増えていきました。いろんな国の生徒がいたので、異文化について学ぶいい機会になりました。ホストファミリーは仕事で忙しく、家庭ではシッターさんとの交流が中心でしたが、学校では大学生から60代の人まで、幅広い年齢層の友人と交流できました。さまざまな経験をしている人が多く、大学進学についてや、社会に出たときに大切なことなど、将来に役立つことも教わりました。イギリスで学んだことを生かし、英語力をさらに高めていくために、英語で本格的に学べる大学を目指したいと思います。

高1 K.I.さん|ニュージーランドのプログラムに参加

本郷入学後に英語を一から学び始め、英語が得意な同級生に触発されて一生懸命に勉強しました。そのおかげで、このプログラムに参加できました。ターム留学では、英語力とコミュニケーション力の向上、異文化交流の目標を掲げて、意欲的に取り組みました。人間関係では苦労もしましたが、海外では自分の意見を積極的に相手に伝えることが大事だということも学びました。自分から話題を振ったり、積極的に話しかけるように心がけて、仲良く過ごせるようになりました。このプログラムを通じて、人を理解するためには会話をすることが大切だと気づき、将来はいろんな国の人たちと交流する仕事をしたいと思うようになりました。

DUMMY
高3 H.I.さん|アメリカのプログラムに参加

アメリカの公立校に通いましたが、生徒同士が学び、議論する授業が多くありました。その学校には、ミュージカルを上演するためのオーケストラと大道具の授業がありました。特に印象に残っているのが大道具の授業です。いろんな人と協力し合う中で、議論する力を高められたと思います。また、アメリカで生活する中で身につけたいと思ったのが相手を理解する力です。相手を理解しながら、自分の意見を論理的に説明していく力は、いろんなバックグラウンドをもつ人が集まるアメリカでは特に重要な力で、国際社会で働く上でも必要なことだと思いました。将来、海外で活躍できるように、留学先で学んだことをさらに磨いていきたいです。

DUMMY
高1 H.W.さん|ニュージーランドのプログラムに参加

出発するときに経由地が変更になり、到着時間が遅くなるなど、さまざまなトラブルがありました。体調を崩すことがありましたが、回復してからは友人も増え、人間関係を築くことでホームシックを乗り越えました。カルチャースタディという選択制の授業では、マオリ族やサモアの人と交流を深めながら相手の文化を知り、尊重することを学びました。英語力を伸ばしたかったので、現地の人と積極的に関わりながら楽しく学校生活を送り、今もSNSで約150人の友人とつながっています。NZで学んだことを糧に、英語の楽しさを後輩たちに伝えていくとともに、パイロットになるという将来の夢に向かって頑張りたいと思います。

DUMMY
高2 S.K.さん|ニュージーランドのプログラムに参加

ターム留学では、現地でしか学べない言葉の言い回しや、こういうシーンは英語でどう話すのかなど、実践的に英語を使えるのが良かったです。また、さまざまな国の人と交流する中で、日本人がどう思われているのかを知り、自分自身のアイデンティティを再認識することができました。人間関係に慣れるのは大変でしたが、昼休みにバスケットボールをするなど積極的に交流するうちに友人の輪が広がりました。最初は距離感がつかめなかったホストファミリーとも、アートや料理を通じて仲を深め、今もSNSで交流しています。留学で得た体験をもとに、大学では長期留学にもチャレンジし、将来は海外で働きたいと思います。

DUMMY
高2 Y.K.さん|ニュージーランドのプログラムに参加

ターム留学の情報を知り、絶対に参加したかったので書類の受付開始日に一番で提出しました。念願が叶いましたが、最初はホストファミリーとの接し方がわからず苦労しました。積極的に行動することで距離を縮めて家族の一員として過ごせるようになり、誕生日にはケーキやプレゼントを用意してくれて感激しました。学校では、地理の授業で世界のコーヒーをテーマにレポートを書きました。独自の視点で面白いという評価をもらい、自信がつきました。帰国後、社会部でペットボトルのリサイクル活動に取り組み、コンテストで3位を受賞。コミュニケーション力や自分の意見を自分の言葉で伝えることを学んだ留学の体験を生かせたと思います。

取材日:2023.9.2