創立100周年。
生徒の学ぶ力を養う、進化し続ける学校

本郷中学校・高等学校

すべての経験から学ぶ姿勢を身につける本郷の教育

今年、100周年を迎えた本郷中学校・高等学校。1922年、旧高松藩松平家第12代当主であり、本郷区(現在の文京区)の教育長だった松平賴壽(よりなが)により創立された男子校だ。以来、建学の精神である「個性を尊重した教育を通して国家有為の人材を育成する」を実現し、数多くの有為な人材を世に送り出してきた。これまで、三つの教育方針「文武両道」「自学自習」「生活習慣の確立」の下で、時代のニーズに応える様々な改革を実施してきた。これからの100年に向けた、佐久間昭浩校長の思いとは。


―創立100周年という節目の年を迎えています。長い歴史の中で、最も変わった点は何ですか。

佐久間 本校は、時代の状況や要請に合わせて守るべきものは守り、変えるべきものは変えていく柔軟な姿勢を貫きながら、様々な改革を行ってきました。近年の改革で大きく変わったのが、補習や講習に対する考え方です。

以前は、生徒に教えることを重視しており、時間が許す限り補習などを行っていました。しかし、教員が生徒に教え込む、という教育では生徒が自ら勉強する姿勢が育ちにくくなります。当然ながら、自分の意志で勉強するほうが実力は付きやすいので、そうした反省を踏まえながら改革を進めました。今は、どうすれば生徒が自分で勉強するようになるのかを全教員が考えながら指導に当たっています。

―教育の特色を教えてください。

佐久間 昭浩 校長

佐久間 生徒が自分で学ぶ力を高めていく取り組みが多いことが、本校の特色です。本校独自の本数検(本郷数学基礎学力検定試験)もその一つです。年3回実施する数学のテストで、得点に応じて級・段が認定されます。成績優秀者を表彰することで、頑張った生徒を評価しています。また、数学の合同授業では、中2が中1に数学の学習に関するアドバイスを行います。中1は学校生活に慣れていく時期でもあります。先輩に数学を学びつつ、我々教員が伝えきれない学校生活に関する情報を伝えていく機会にもなっています。

英検の2次面接の対策では、対象の級を持っている生徒が面接官役になって指導します。教える側と教えられる側のどちらのためにもなる取り組みです。

探究学習が重視されるようになっていますが、本校では以前から中2・3の2年間かけて卒業論文に取り組んでいます。各自がテーマを決めて探究していくことで、主体的な学習姿勢を育んでいます。これまでの生徒指導は担当を中心に行っていましたが、現在は社会科がその役割を担っており授業を分割して行うなど、生徒一人ひとりにきめ細かく対応できる体制が整いました。

全体的なバランスを重視し、大学入試には直接関係ない科目にもしっかり取り組んでいることも、本校の特色です。家庭科実習室などの施設・設備が充実しており、調理実習をはじめとする家庭科教育にも力を注いでいます。

―クラブ活動も盛んです。

佐久間 運動部は、以前から目覚ましい活躍をみせてくれています。本校はラグビーの強豪校で、18・19年には2年連続で花園に出場しました。陸上部はインターハイやJr.オリンピック出場の実績があります。水泳部やフェンシング部も関東大会レベルの活躍をしていますし、スキー部は21年に全国大会に出場しました。

最近は、文化部の活躍も目立ちます。科学部や社会部はここ数年、学外で行われる大会などに出場して高い評価を受けています。現代社会が直面する課題に取り組む社会部は、町おこしや地域活性化など、自分たちでテーマを選んで活動しています。地学部は今年、「とうきょう総文2022」に出場したほか、歴史研究部は全国高校生歴史フォーラムで学長賞を受賞しています。

こうした生徒の多くが、勉強とクラブ活動を両立させています。運動部の場合、高3の秋まで活動している生徒が多いものの、引退してから勉強に集中して、第一志望の大学に合格する生徒も珍しくありません。クラブ活動を最後まで続けると決めた生徒たちは、それを言い訳にせず、全力で受験勉強に励む姿勢を見せてくれます。そんな先輩の姿を見て、後輩も勉強やクラブ活動に、積極的に励む。本校にはそういう伝統があります。

―これからの社会に向けて、学校で養うべき力とはどのようなものでしょうか。

佐久間 今は、数年先の未来ですら、どんな世の中になっているのかを予想できない時代になりました。そんな不確かな時代における学校教育で最も大切なのは、"どんな社会になるのか、分からないからこそ、勉強し続ける姿勢を生徒につけさせること”だと思います。勉強を続けるための精神力や体力はこれまで以上に必要となりますので、それらを養う学校であり続けることが大切だと感じています。そのためにも、生徒が自主的に学ぶ姿勢を身につける教育を続けていきます。

―受験生や保護者に向けてメッセージをお願いします。

佐久間 中学受験は、受験生と保護者が一緒に頑張っていくのが一般的な形だと思います。親としてどう考え、どういう大人になってほしいのかを子どもに伝える良い機会でもありますから、そういうメッセージをぜひお子さんに伝えてほしいです。また、合格・不合格の結果は出ますが、中学受験にチャレンジしたこと自体が、成功体験だと私は考えています。そういう感覚で受験に臨んでください。そうすれば、受験が終わってもずっと、成長し続けていけると思います。

取材日:2022.9.13