創立160周年
一本筋の通った「攻玉社男子」を育てる教育
攻玉社中学校・高等学校
今年創立160周年を迎えた攻玉社中高。歴史に名を残す卒業生が多く、現在も数々の『攻玉社男子』が多彩な分野で活躍している。今年校長に就任した藤田陽一先生に、攻玉社の教育と今後の目標について話を聞いた。
―攻玉社のこれまでの歩みについて教えてください。
藤田 攻玉社の歴史は1863(文久3)年の幕末期、江戸四谷坂町の鳥羽藩邸内に創立した蘭学塾に始まります。創立者の近藤真琴先生は、蘭学者であるとともに、数理や航海・測量術、兵学を学んだ人物です。50年先の日本を支える人材の育成を志に、「和魂漢洋才」を追究する教育に力を注いでいました。近藤先生の意志や精神は、今の『攻玉社男子』にも受け継がれています。
また、攻玉社の校名は中国最古の詩集『詩経』の一節にある「他山の石を以て玉を攻くべし」に由来しています。解釈は諸説ありますが、本校では「周りから刺激をうけて自分の良いところを伸ばしていく」と捉えています。「自らを攻(みが)いていく」という攻玉社の精神を受け継ぎながら、校訓である「誠意・礼譲・質実剛健」を実践しています。「誠意」とは、自分の良心に従い、相手に対して誠実に接する力のこと。「礼譲」とは、相手に信頼されるように礼儀正しく対応すること。「質実剛健」とは、飾り気なく、自身の能力や役割をわきまえて、できることとできないことを見極める強い心を醸成すること。6年間の学校生活の中でこうした力を育んでいます。
私は昭和54年に本校を卒業しました。制服は当時から変わっていませんが、生徒の雰囲気は少し変わりました。当時はやんちゃな生徒もいましたが、今は真面目でおとなしい生徒も多く、多様な生徒が伸び伸びと学校生活を送っています。
―教育の特色を教えてください。
藤田 特に身につけてほしいのが、説明する力やプレゼンテーション能力、コミュニケーション能力です。50年以上続いている自由研究発表会や芸術科合同発表会など、様々な発表の機会を用意し、そうした力を養っています。この他、自己管理力や協調する力、自律する力も、日々の学校生活の中で身につけられるように指導しています。
一方、失敗することを恐れずにチャレンジすることも大切です。一生懸命取り組んだ結果、失敗したとしても次に生かせますから、どんどん失敗して大きく成長してもらいたいと考えています。
―6年間のカリキュラムを教えてください。
藤田 本校では6年間を2年ずつ3つのステージに分け、ステージごとに独自のプログラムを用意しています。1年生から4年生までは6クラス編成ですが、5・6年生からは進路に対応した8クラス編成になります。
1・2年次は学校での生活習慣や学習習慣などを身につけ、6年間を通じて着実にステップアップできる基礎力をしっかりと固める時期です。3・4年次では主体性や自律性を大切にしながら、一人ひとりの個の力を伸ばしていきます。キャリアについて考える機会も多く、自分の将来についてじっくり考えていくためのフォロー体制があります。大学進学やその先の将来を明確に意識するようになる5・6年次では、受験対策はもちろん、その先を見据えた教育指導を行い、目標を実現していきます。
卒業後、学校に立ち寄った卒業生をみると、飛躍的な成長に驚くことがあります。社会でたくさんの刺激を受けながら、攻玉社で培った力を大きく伸ばしているのだと思います。
―どんな改革を進めていきますか。
藤田 コロナ禍では、様々な学校行事を中止せざるを得ない状況がありましたが、まずはこれまでの学校行事を復元させ、もとの攻玉社に戻していく必要があると感じています。今年、4年ぶりに中1の2泊3日のオリエンテーションを行いました。また、東日本大震災以降、中止になっていた臨海学校を中3の希望者を対象に再開。今年は91人の生徒が集まり、沼津で1・5キロの遠泳に挑戦しました。私も生徒のときに参加した、思い出に残る行事の一つです。やり終えたときは達成感や充実感があり、「景色が変わって見えた」という生徒の声もありました。
施設・設備の改装にも着手しています。今年、160周年記念事業の一環として、校舎1階にある生徒ホールをリニューアルしました。以前はテーブルと椅子があるだけでしたが、昼は食堂として、放課後は生徒同士の憩いの場として、気軽に使用できる施設が誕生しました。また、校舎の壁を塗り替え、西階段と東階段の色を変えたことで、学校全体が明るい雰囲気に生まれ変わりました。
―攻玉社の魅力について教えてください。
藤田 小さな学校なので、先生との距離が近く、どこにいても目が届くアットホームな雰囲気があります。また、駅から徒歩2分と通いやすく、遠方から通学している生徒も大勢います。
国際学級があることも魅力の一つで、様々な国を体験した帰国生が在籍しています。中学3年間、別クラスで学んでいますが、学校行事やクラブ活動などは一緒に活動しています。彼らの存在は一般クラスの生徒にもいい刺激になっています。お互いの良さを認め合える環境で切磋琢磨しながら、『攻玉社男子』として羽ばたいてほしいと思います。
取材日:2023.7.19