「秀英らしさ」を表現する2日間。
生徒の自主性を重んじる雄飛祭
昭和学院秀英中学校・高等学校
県内トップレベルの大学進学実績を誇る昭和学院秀英中学校・高等学校。学習面だけにとどまらず、学校行事にも力を入れている。中でも、生徒主体で、もっとも盛り上がる行事が9月の雄飛祭(文化祭)だ。今年は4年振りに制限のない雄飛祭を開催することができた。雄飛祭について、文化祭準備委員長の藤江智子先生と、実行委員の高校生たちに話を聞いた(取材は開催前)。
―雄飛祭の歴史と特徴について教えてください。
藤江 雄飛祭は創立以来続く行事で、今年で41回目を迎えます。学術的な発表という方向性よりは、各クラスで企画を考え、個性を生かした出し物を行います。部・同好会や有志によるステージ発表もあります。クラス参加は自由ですが、高3以外の全クラスが参加しています。雄飛祭は、生徒たちが自主性をもって外にアピールでき、ゼロからスタートできる行事です。特別な活動をしていない生徒でも、外部の方々とのやり取りの場が生まれる貴重な機会となっています。
運営の仕方などは、私が本校に着任した当時とは、随分変わってきています。これまでは、教員が与えたものの中でやっていることが多かったのですが、現在は、生徒たちで意見を出し合って、やりたいことを教員に直接交渉する力を付けさせています。先輩たちから引き継いだ伝統を守りつつも、新しいものを取り入れて、転換を図っています。
―準備に取り組む生徒たちの様子はいかがですか。
藤江 今回、実行委員長を任されて先生たちにお願いしたのは、生徒に指示を出さないことです。これまで以上に、生徒が自分で考えて行動するのを見守る姿勢をとりました。以前は、各団体の企画書のチェックも教員が行っていましたが、今年はまず、実行委員の生徒がチェックをしました。4月下旬から1回目の企画書で内容を確認し、文化祭にふさわしくない企画にはやり直しを求め、何回かやり取りをしてから、担当の教員に書類を提出しました。今年の生徒は、コロナ禍前の雄飛祭を経験していないため、苦労したと思います。ですが、フラットなところから構築できるチャンスですし、彼らならできるという確信があったので、全面的に任せました。普段から教員と生徒の距離が近く、コミュニケーションがとれていることも大きかったです。生徒が担った仕事量は多く責任重大でしたが、自由に動けたようです。
今回、生徒たちに任せたことで教えられることが多かったと感じています。自分自身も、教師として、大人として成長したと思います。今回だけではなく、普段の受験や学級活動といった場面でも、生徒たちから教えられることは多いです。
―雄飛祭は「もっとも秀英らしさに満ちた2日間」ということですが、「秀英らしさ」とは、どのようなことでしょうか。
藤江 先輩・後輩の壁がなく、生徒同士のつながりと、教員と生徒のつながりなど、人同士のつながりが強いことです。人への思いやりにあふれた生徒が多いことも特徴です。雄飛祭の準備段階で、クラス内で意見がまとまらずもめたりしますが、最後には、お互いを思いやる雰囲気が流れる事が多いのです。雄飛祭当日も、人に対して思いやりをもって接している場面を見かけます。小学生の来場者に対して、お化け屋敷を小さい子用にアドリブで改良したり、目線を合わせて話したり、といったことが自然とできています。こうした姿勢は将来、社会貢献として役立つと思います。先輩の面倒見が良いことも特徴です。例年、雄飛祭当日は高3の前年の実行委員の生徒が、スタッフポロシャツを着て、自主的にサポートしてくれています。
―受験生にメッセージをお願いします。
藤江 いろいろなことにチャレンジしたいという希望を持っている人に、ぜひ受験して欲しいと思います。すでに、具体的な夢や希望が定まっている人は、発言して表現してください。それを支えてくれる先生がたくさんいます。実際、在校生の中には、学校以外の活動や、個人的な習い事で表彰されたり、全国レベルで頑張っている人もいます。秀英には、優しくて、勉強に熱心に取り組む生徒が集まっています。お互いにやりたいことを認め合い、応援する空気感があるので、何にでも打ち込める雰囲気です。今はまだ決まっていなくても、さまざまなことにアンテナを張って、のんびりとした空気の中で、やりたいことを見つけて欲しいと思います。
STUDENTS VOICE
―今年の雄飛祭のテーマ「マテリアル」について教えてください。
吉田 テーマは全校生徒から募集して、その中から、「実行委員が作りたい雄飛祭」に合ったテーマを選びました。マテリアルは素材という意味です。生徒、校舎も個性豊かなマテリアルで、これらが集まり、生かし合うことで、今までの何倍にも盛り上がる雄飛祭を作りあげることできるという意味が込められています。
―昨年までとの違いと苦労した点を教えてください。
布川 中1から制限された雄飛祭しか体験していないので、コロナ禍前に行っていた業務のやり方が分からず、難しかったです。先輩たちが残してくれたデータを参照して、みんなで話し合い、助け合って業務を進めました。
西牧 今年はやっと、一般公開と、飲食販売を緩和することができました。新企画として、スタンプラリーを実施しました。入場者の事前予約はWebで受け付けましたが、数あるサービスの中から、最適の予約システムを選定するのが難しかったです。来場者が使いやすく、自分たちも管理しやすいシステムを選びました。
―中高合同開催ですが、学年が離れた生徒同士はどのようにコミュニケーションをとりましたか。
布川 「雑談タイム」を設けたり、実行委員の各部長が、中学生と高校生が仲良くなれる企画を考えました。中学生が質問しやすいように、SNSを活用したりして、コミュニケーションをとりました。
―実行委員の活動での経験を、今後、どう生かしますか。
布川 雄飛祭の活動を通して、なにごとも裏で準備している人がたくさんいることが分かりました。これからも、裏で関わっている人たちに感謝の気持ちを忘れないようにしたいと思います。
吉田 実行委員会の活動では、人を指揮したり、資料を作ったりすることを経験できました。この経験を、将来の仕事にも役立てたいと思います。
西牧 将来はエンジニアになることが夢で、企業に所属して働くという考えしかありませんでした。ですが、実行委員会を経験したことによって、起業する道もあると気づきました。自分がトップとなって会社を動かすという選択肢が増えました。
―後輩に受け継いでいきたいことはありますか。
布川 雄飛祭実行委員は、幅広い学年で仲良く活動している委員会です。自分たちが楽しんで、みんなも楽しませる、という姿勢を忘れずに、活動して欲しいと思います。
吉田 コミュニケーションをとっていかないと、実行委員会は成り立ちません。全員がコミュニケーションをとれるような形を、これからも続けて欲しいと思います。
西牧 代々、過年度の書類を参考にして引き継いでいますが、後輩には、不要だと思うことは、切り捨てて欲しいと思います。新しい道を取り入れて、最良の選択をしてください。
―昭和学院秀英の良いところを教えてください。
布川 先輩・後輩関係なく仲が良く、また、先生と生徒の距離も近いところです。学校行事から勉強まで幅広い選択肢があるので、楽しい学校生活を送ることができます。
取材日:2023.9.6