生徒一人ひとりに目を向けた少人数教育を通して、
生徒が互いに他者を尊重し、共に学び合える人間に成長できる

普連土学園中学校・高等学校

生徒一人ひとりに目を向けた少人数教育を通して、生徒が互いに他者を尊重し、共に学び合える人間に成長できる

港区の閑静な住宅地にある、完全中高一貫の女子校である普連土学園中学校・高等学校。日本唯一のキリスト教フレンド派(クエーカー)の学校として、140年近い歴史と伝統を持つ。1学年3クラスの少人数制で、対話を重視し、体験を掘り下げる同校の教育をはじめとする、「普連土学園らしさ」がここ数年注目され、入学希望者が増加しているという。長年受け継がれてきた同校の教育理念や力を入れている教育、「普連土学園らしさ」などについて、広報部長を務める池田雄史先生にうかがった。


―御校が教育の中で大切にされているのはどんなことですか?

池田 本校は1887年に創立された日本で唯一のキリスト教フレンド派の学校です。フレンド派の理念に基づき、あらゆる権威・伝統からの「自由」、神の前での「平等」、粘り強い「対話」、そして絶対的な「平和主義」を大切にしています。このような価値観は、まったく古びないどころか、今の世の中でより重みを増しているのではないでしょうか。

生徒には、学校生活の中で「対話」を実践していく大切さを伝えています。社会の中ではよく何かを決める時に多数決という手法をとりますが、多数決では少数側の意見がなかったことにされてしまいます。そうではなく、みんなの意見が尊重されるように可能な限り、対話を通して解決にたどり着けるように努めてほしいと思っています。

フレンド派をひらいたジョージ・フォックスの言葉に“Let Your Lives Speak”というものがあります。私たちはこれを「あなたの生き方をもって示しなさい」と訳しています。理想を言葉で語ることは簡単ですが実践することは難しい。だからこそ生徒たちには、少しずつでもできることに取り組んでいってほしいと考えているのです。

広報部長|池田 雄史 先生

英語と理科教育で生徒の進路選択を広げる

―グローバル社会において主体的に行動していく人になるために、英語教育や国際教育に力を入れているそうですね。

池田 中学では英語が週6時間あり、全学年で分割クラスによる少人数授業を徹底しています。スピーキングや、ペアワーク、グループワークを積極的に取り入れ、英語を話す時間を十分にとることを意識しています。

授業だけでなく、コミュニケーションベースの生きた英語教育として、週に1回ネイティブ教員と生徒が英語で話しながら昼食をとるイングリッシュ・ランチも開いており、いつも生徒でにぎわっています。

また、中学3年生を対象にホームステイをしながら現地で英語のレッスンを受けるカナダ研修プログラム、高校1、2年生対象にイギリスでフレンド派のルーツを尋ねるジョージ・フォックスツアーなどの短期海外研修もあります。そのほかにも、ニュージーランドターム留学、長期留学など生徒の希望に合わせた、さまざまな国際教育プログラムを用意しています。英語は受験科目としてほぼ全ての学部学科で必須ですから、高い英語力があれば希望の進路選択の際に大きな助けになるでしょう。

―進路実績を拝見すると、理系進学率が約40%と女子校にしては高めです。理科教育でどのような工夫をされていますか?

池田 多くの実験・観察によって、生徒の自然科学への興味関心を引き出す授業づくりに取り組んでいます。具体的には 中学1年生で年間約50回、高校1年生は年間30回の実験・観察を行っています。実験後には考察と関連する自然現象についてのレポートを作成し、体験を学びへと落とし込みます。実験や観察を通して、理科が好きになる生徒も多く、進路にも反映されているのではないかと思います。

ただ、それだけでなく、理系分野に分類される仕事にもともと興味を持っている潜在的な理系進学希望者が、実は多いのではないかと思っています。ただ、理数系が苦手だと文理選択の際に諦めてしまう。本校では理科好きの生徒が多いため、将来の志望に合わせた選択ができているのかもしれません。

生徒と生徒、生徒と教員が平等な立場で向き合う

―先生が感じる、「普連土学園らしさ」やよさとはどういった点でしょうか?

池田 キリスト教系の女子校ということで、真面目で物静かな生徒が多いという印象を持たれているようです。本校は小規模な学校ですが、生徒のタイプはさまざまで、元気で活発な生徒も大人しい生徒もいます。また、人と少しちがったタイプの生徒もいます。ただ、「自由」「平等」の理念の通り、お互いの個性を尊重する姿勢があるため、どんな生徒も排除されることなく、自分の居場所を持っているのが特徴の一つですね。

小規模校ゆえにすべての生徒が生徒会をはじめとする委員会に所属し、活動をしているため、みんなが前向きに学校生活をよくしていこうという意識を持っているのはとてもよいことだと思います。例えば、本校では生徒が学校見学者の案内役を務め、学外の相談会などにも参加するのですが、中3から高2の有志の生徒による学園広報係が担当をしています。

一方、生徒が「やりたい」と思ったことに柔軟に対応できるのも、本校ならではのよさだと思います。例えば、本校では2017年から毎年生徒、保護者、教職員から集まった献金を、カンボジアの地雷撤去活動を進めるNGOに寄付してきたのですが、高校2年生の生徒が「地雷撤去の現場に行くことはできませんか?」と校長に直接要望を伝えた結果、地雷撤去の現場を視察し、帰国後、全校生徒にその様子を報告するというカンボジア研修が実現しました。

本校の教育理念である「平等」は生徒と教員の関係においても同様です。教員が生徒と人間として対等に向き合い、共に成長して行こうとする姿勢も、本校のよさだと思います。

―最後に受験生やその保護者へのメッセージをお願いします。

池田 首都圏には数多くの中高があり、なかでも私学はそれぞれ特色があります。沿革や教育理念、カリキュラム、学校の広さ、生徒数、学校行事、教員や生徒の雰囲気など、パンフレットやウェブサイトを見て伝わるものもあれば、実際に足を運んで初めて感じることもあります。偏差値や大学合格実績など学校を測る物差しはいろいろとありますが、私は人生の礎を築く大切な中高6年間を過ごし学ぶ場所として、お子様に合っているかどうかが最も大切だと思います。そうした場所でこそ、健やかに成長することができます。どうか興味を持った学校があれば、ぜひお子様と一緒に足を運んでください。そして、お子様と話し合いながら、最終的な学校選びをしていただけるとよいと思います。

取材日:2024.9.17