創立101年目を迎えた伝統校
文武両面での人づくりを目指し、生徒の未来を拓く
保善高等学校

探究学習を通じて、社会を生き抜く力を養う未来考動塾

大正12(1923)年に創立された保善高校。学業、部活動、友達作りなどにおいて全員が同じスタートを切る高校単独の男子校であり、文武両面で実績を上げる高校としても評価されている。その特色や教育にかける思いについて、教頭の奈佐有記先生に話を聞いた。


―保善高校の校風、特色について教えてください。

16~18歳というのは、「自分がどんな人間で、何者であるのか」と思い悩み、「アイデンティティ」を確立していく時期です。その大切な時期を、3年という限られた時間の中で充実したものにするために、本校の教員は高い意識をもって取り組んでいます。生徒に真摯に向き合い、日々語りかけ、励まし、温かく導く…一言で申し上げると“熱い”先生が多く、そのサポートを受けて生徒たちも、「やるぞ」とさまざまなことに挑戦し、何かを掴みとっていく。そのような“濃い”時間が保善高校で過ごす3年間であり、生徒一人ひとりの成長の原動力になっていると感じます。

保善生は、こちらが真剣に発した言葉を真摯に受け止めてくれる素直で穏やかな生徒が多い印象です。高校単独校で、仲間との関わりもフラットな状態から始まるためか、和気あいあいとしています。生徒からは、「異性の目を気にせず、変に気取ることもなく、伸び伸びと過ごせました」という声も聞かれます。

教頭|奈佐 有記 先生

―3つのクラスはそれぞれどのような特徴がありますか。

「特別進学」「大進選抜」「大学進学」という3つのクラスがあり、いずれも大学進学を目指すことが基本です。特別進学クラスは国公立大および早稲田大や慶應義塾大などの難関私立大、大進選抜クラスはGMARCH(学習院大・明治大・青山学院大・立教大・中央大・法政大)レベル以上、大学進学クラスは中堅以上の私立大の現役合格を目指し、クラス別のカリキュラムで学びます。

どの大学に進むかということは、生徒にとって人生の大きな選択の一つです。だからこそ、大学を名前だけで選ぶのではなく、自分は何に興味があって何を学びたいのかを第一に考えてほしいと思います。興味のありかを知る手がかりとして、文系や理系・総合大学など各系統の大学の先生をお招きし、講演をしていただく「秋の進路研究会」などのイベントをクラス別に開催しています。

―奈佐先生は長年、生徒指導部長を務めてこられました。

生徒が学業やさまざまな活動にポジティブに取り組めるよう、生活習慣や物の考え方を指導・支援するのが生徒指導部の役割です。現代のように変化の激しい時代においては、これまでの価値観や常識にとらわれることなく、私たち教員が柔軟にアップデートしながら、生徒に接することが重要だと考えています。SNSの使い方などはその代表的な一つです。

また、生徒が「本物」にふれる体験も大切にしています。今年6月の全学年の日には、NHK交響楽団によるクラシック鑑賞会を開催し、音楽鑑賞だけでなく、生徒参加型の企画も実施しました。豊かな人間性を育むことにもつながる文化芸術を一つでも多く体験してもらうため、毎年趣向を凝らしています。

―「文武両道」を実践し、部活動も盛んです。

部活動に積極的に取り組む生徒は、学業でも優秀な成績を修めています。指定強化クラブ(ラグビー部、陸上競技部、バスケットボール部、サッカー部、空手道部)に所属しながら、難関私立大に合格する生徒もめずらしくありません。これには生徒自身の努力に加えて、上級生やOBの存在も大きいと思います。部活動の先輩が試合でも勉学でも輝いている姿を目の当たりにして、「自分たちも頑張ろう」と後輩が奮起し、後に続く。先輩への憧れが、部活と勉強の両面で目標に向かうための大きなエネルギーになるわけですが、こうした流れが連綿と受け継がれています。これも本校の伝統の一つです。

―上級生や卒業生が生徒のロールモデルになっているのですね。

私立校の教員は基本的に異動がないということもあって、卒業して数十年が経っても本校を訪れてくれる卒業生が大勢います。そうしたつながりは100年の歴史の中で培われてきた財産ですから、それを生徒の進路選択などにも役立ててもらおうと、「OBセミナー」をはじめ、卒業生に大学生活や受験のリアルな体験談を語ってもらう場を設けています。

家族や友人といった身近な人たちとの関わりだけでなく、多くの人の多様な考え方や生き方にふれ、思考の幅を広げる。そのような生徒の成長に一役買ってくれる同性のロールモデルが本校には多く存在していますから、卒業生との交流を通して、生徒たちには人生の選択肢を増やし、自分の世界を広げてほしいと願っています。

―受験生や保護者に向けてメッセージをお願いします。

高校は次なる進路に向かう場であると同時に、自己実現を図る場です。「自分が望む自分」になること、それを生徒自身が実感できることが、本校における自己実現であると考えています。そのためにはさまざまな経験をし、ときに失敗することも必要です。将来や自分について、ああでもないこうでもないと思い悩む時間も欠かせません。人生の中で自分自身が大きく飛躍するかけがえのない3年間、たくさん挑戦して、思いきり失敗して、大いに成長できる。そのような高校を選んでほしいと思います。

故郷とは生まれ育った場所のみを指すのではなく、長い人生を生きていくうえでその人の根幹となるものを築いた場所もまた、故郷といえるのではないでしょうか。本校が生徒にとってそうした故郷になれるよう、多くの経験と出会いの場を用意しています。

取材日:2024.8.27