「先輩から後輩につなぐ、『自学自習』の精神」
学生チューターが語る、自主性を育む成城の教育力

成城中学校・高等学校

1885(明治18)年の創立以来、社会に貢献できる人材の育成を推進してきた成城中学校・成城高等学校。文武両道の伝統のもと、近年はグローバル教育にも力を入れている。同校では、学校生活を通して、先輩が後輩の手本となり導き、後輩が先輩を尊敬し目標として研鑽していく、先輩と後輩の絆の伝統がある。卒業生による学生チューター制度もその一つで、自修館(自習室)を利用する生徒たちの相談に広く応じている。チューターを務める實方隆大郎さん(早稲田大学商学部4年生)と八木瞳磨さん(上智大学法学部4年生)に、チューターとしてのやりがいや中高6年間の思い出をうかがった。


―学生チューターは、希望者が採用面接を経て就任するそうですね。応募したきっかけを教えてください。

實方 直接のきっかけは友人に誘われたためです。僕自身も自修館でチューターの先輩がたにお世話になったため、「ぜひ自分も後輩のサポートがしたい」と考えて応募しました。中高生の時から、友達と勉強する時に得意な科目を教えていたので、もともと人に教えることが好きなんです。

八木 實方さんが留学のためしばらくチューターを休むことになり、「やってみないか」と声を掛けられたのがきっかけです。僕は一人で勉強するのが好きなタイプで、自修館はあまり利用していなかったのですが、母校に恩返しをしたいという気持ちがずっとあったので、「いいチャンスだ」と思って応募しました。

先輩だから伝えられる成城の生徒に合った学び方

―学生チューターは、どのようなサポートを行なっているのですか?

實方 毎日放課後、自修館に2人ずつが常駐しています。自修館の利用者は中学1年生から高校3年生まで幅広いので、サポート内容もいろいろで、授業でわからなかった問題の解説をする時もあれば、勉強のやり方を一緒に考えたり進路に関する相談にのったりすることもありますね。僕は留学経験があるので、留学生活について聞きたいという後輩もいます。

實方 隆大郎さん(早稲田大学商学部4年生)

八木 夏休み前は、大学や学部など進路に関する相談が多くなりますね。自分の通っている大学以外でも、友人の話など参考になりそうな話をすることもあります。代によって変わりますが、チューターはだいたい文系理系両方の学生がいるので、理工系志望者には理工系学部のチューターにも相談するように勧めますね。

―サポート内容はかなり幅広いのですね。どんなことに気をつけて対応されていますか?

八木 自分の意見の押し付けにならない

ように気をつけています。進路相談の際にはときに厳しい内容になることもありますが、あくまでも一意見。やる気をそがず、自分で判断して進む道を決めてもらえるように、後輩一人ひとりの性格なども考えながら、伝え方に工夫をしています。
八木 瞳磨さん(上智大学法学部4年生)

實方 例えば問題の解き方は何通りもある場合があります。僕が教えたことは絶対ではないので、それを参考にぜひ自分で考えてほしいということをしっかり伝えるようにしています。勉強は「自学自習」がとても大切で、自分で考えて行動できなければ、受験もうまくいかないと思います。勉強そのものだけではなく、そういう精神を後輩に伝えられればいいですね。

八木 確かに、成城の先輩だからこそ、後輩に伝えていきたい精神はあります。ほかにも実用的な面で、学校行事など年間のスケジュールを知っていると勉強計画の立て方なども提案しやすいですし、知っている先生も多いので、「この分野について相談するなら、この先生がいいよ」勧めることができます。僕は塾講師もしていますが、チューターは先生と生徒ではなく先輩後輩というつながりなので、より身近な距離感で接することができるんです。

實方 サポートをした後輩の成績が上がったり、志望校に合格したという報告をもらえたりすると、自分のことのように嬉しくなります。

生涯にわたる大事なものを得ることができる6年間

―お二人は現在大学4年生ですが、大学の選択や将来の進路選択に、中高6年間はどのように関わっていますか?大事な思い出はありますか?

實方 中高6年間の一番の思い出は、テニス部での活動です。練習や試合、部の運営など、苦労もありましたが、いい経験ができたと思います。

進路を考えるうえで影響があったのは、中学3年生の時に参加した「エンパワーメントプログラム※」という海外からの留学生とともに社会問題を考えるプログラムです。英語をツールとして使いこなすことで、新たな世界や価値観に触れられることを体験し、日本以外の国のことをもっと知りたいと考えるようになりました。商学部を選んだのは、もっと社会のことを知り、実用的な知識を得たいと思ったからで、留学への思いも大学で実現することができました。

八木 上智大学の法学部を選んだのは、普段の授業などから国際関係の仕事に興味を持ったためで、国内外にわたる社会問題解決に貢献したいという思いからでした。そのために英語の勉強はがんばりましたね。

進路選択に直接は関わっていないのですが、学校生活全体を通して、自主的に考え、行動する力を身につけることができたのは将来にわたる大きな財産だと思っています。成城は伝統校ということもあって厳しいイメージがあるかも知れませんが、基本的にとても自由な校風なんです。先生から強制されることがほとんどない。勉強は周囲のみんなが頑張るから、自分もやる気になれました。文化祭や体育祭などの学校行事も、上の学年が全力で取り組んでいる姿を見て、「自分たちも負けていられない!」とどんどん盛り上がっていきました。

―最後に成城のよさを教えてください。

實方 のびのび自由に過ごせる中高一貫の男子校だからこそ、一生つきあえる友人と出会えるんじゃないかと思います。まだ卒業して4年ですが、中高時代の仲間とは大学が別々になってもつきあいが続いています。また、「エンパワーメントプログラム※」のような、新しい世界を知ることができる授業やプログラムがたくさんあるので、何か新しいことをやってみたい人に向いていると思います。

八木 これまでの卒業生がチューターとして関わってきたように、卒業してからも大事にしたい思える学校です。学校行事や部活動、勉強などを通して、先輩と後輩がつながっていることが、一番の魅力。個人的には校舎がきれいで快適な学校生活が送れたことも、勉強や部活のモチベーションを高めてくれました。本当にかけがえのない6年間でした。

取材日:2024.8.5