自然豊かな環境で
世界標準の生徒を育てる教育

逗子開成中学校・高等学校

自然豊かな環境で世界標準の生徒を育てる教育

今年121周年を迎えた逗子開成中学校・高等学校は1903年、私立東京開成中学校(現:開成中学校・高等学校)の分校、私立第二開成中学校として誕生。1909年に分離独立し、逗子開成中学校・高等学校として再スタートを切った、神奈川県の私立男子校で最も歴史ある伝統校だ。校名の由来になっている建学の精神「開物成務」は、中国の古典「易経」の言葉で、「人間性を開拓、啓発し、人としての務めをなす」ことを意味する。この建学の精神を土台に、「一人ひとりが目標を定め、達成するために能力・資質を伸ばしながら社会に貢献する」ことができる人材の育成に取り組んでいる。昨年度、校長に就任した小和田亜土先生に、逗子開成の特色ある教育や今後の展望について話を聞いた。


―自然あふれる唯一無二の環境が魅力です。

本校は、創設者のひとりである田邊新之助が、自然豊かな環境での教育の必要性を感じて、逗子のこの地に創設した学校です。建学の精神「開物成務」のもと、海洋教育や情操教育、国際理解教育など多方面の教育活動を展開。生徒たちは協同しながら様々なことに取り組み、主体性を育んでいます。

横浜や東京から通学する生徒も増えていますが、長い歴史の中で変わらないのが、どんな生徒も伸び伸びと学校生活を送っていること。スポーツが得意な生徒や活発な生徒ばかりではなく、大人しい生徒も数多くいます。逗子という自然豊かな環境と自由な校風が、どんな生徒にも居心地が良い学校生活を実現しています。

小和田 亜土 校長

―どのような教育を行っていますか?

逗子開成が現在の教育方針を打ち出したのは1985年頃。「21世紀の国際社会を担っていく生徒たちが、高度な知識や人間性豊かな情操、たくましい行動力を身につけられる学校」へと大きな改革を行いました。現在はさらに発展した形で、教育活動を進めています。

自然豊かな環境を生かした海洋教育も、その一端を担っています。すべての生徒がヨット帆走やヨット製作を体験する独自の海洋教育があります。入学直後は泳げない生徒や、海で泳いだことがない生徒が多いのですが、中1のプールの授業で体育科の全教員が丁寧に指導し、中3でその集大成となる海での遠泳にチャレンジします。泳げなかった生徒が泳げるようになることで、自信や達成感も高めています。

また、海洋教育特例校でもある本校の海洋教育は、海を取り巻く環境問題について多角的に考える機会にもなっています。約10年にわたって連携してきた東大の海洋アライアンスで最先端の研究に触れ、様々な課題に挑戦してきました。この連携をきっかけに、生徒たちが自主的に海洋を研究するグループ「うみけん」を立ち上げました。学年やクラブ活動の垣根を越えて発展的な研究を進めており、学会発表やコンテストなどで優秀な成績を修めています。

環境について考える別のサークルを立ち上げた生徒もいます。心と身体を鍛えるために始まった海洋教育ですが、自然環境について地球規模で考える活動へと広がりをみせています。

生徒が製作したヨット

―国際交流プログラムも充実しています。

今は、国や価値観、文化が異なる人たちと対話し、世界標準でものごとを考えていく必要があります。本校の国際理解教育は、英語力を高めるだけではなく、世界の人々と交流する中で文化や価値観の違いを理解し、体験を通して国際力を磨く機会になっています。中3では全員がNZでの1週間の研修旅行に参加。高2のアジア研究旅行ではマレーシア、韓国、ベトナム、オーストラリア、沖縄の5つのコースから自由に選択します。この他、希望者対象のアメリカ・カナダ・イギリス研修や、来日した留学生との校内での文化交流など、多彩なプログラムがあります。

今後、海洋教育と国際理解教育を結びつけた取り組みにも力を注いでいきたいと考えています。その一環として、海外の学校と提携し、各地域の海洋の問題を共有しあう機会を設ける予定です。海外と日常的に交流し、地球環境について世界標準で考える力を養ってほしいと思います。

―生徒の興味関心を高める様々な取り組みがあります。

土曜講座では、教員を中心に、外部の専門家や保護者にも協力してもらい、通常の授業ではできない希望者対象の講座を開講。青銅鏡づくりやたたら製鉄体験、保育士体験、ハイキングなど、レクリエーションから学際的なものまで、多彩です。参加者も多く、土曜講座をきっかけに、サークルを立ち上げる生徒もいます。

興味があることを自主的に追究し、外部のコンテストに挑戦する生徒も増えています。一昨年は中1の生徒が世界ロボットコンテストで準優勝しました。新潮社の読書エッセイコンクール「ワタシの一行大賞」に選ばれた生徒もいます。挑戦しているのは、積極性がある快活な生徒ばかりではなく、大人しい生徒もいます。それぞれがやりたいことに主体的に取り組んでいます。

―受験生や保護者に向けてメッセージをください。

「入学後、成績が悪くなったらどうしたらいいか」という質問を受験生の保護者からいただくことがあります。入学後に成績が悪化する理由の一つとして、授業で学んだことを復習し、自分で理解を深めていく練習が足りないケースも目立ちます。本校では授業内容の理解が十分でなかった生徒用の補習だけでなく、練習不足の生徒向けの補習も行っています。2種類の補習により、ほとんどの生徒は成績が回復しますので、安心してください。入試を突破することはまぐれではないので、自信を持って入学してほしいと思います。

取材日:2024.8.24