知的好奇心を高める自由研究により
原石を掘り起こす城北の理科教育
城北中学校・高等学校
「着実・勤勉・自主」を校訓に、生徒の主体性を重んじながら、きめ細かな指導を行う城北中高。理科教育では実験や観察を多く取り入れ、その成果を発揮するのが夏休みの自由研究だ。小俣力校長と、理科の中村純教諭、竹村英紀教諭に理科教育と自由研究について話を聞いた。
創立以来、「人間形成と大学進学」の教育方針の下、社会で活躍する有為な人材を数多く輩出してきた。カリキュラムには、生徒の発達段階に応じた3期指導体制を導入。一人ひとりが目標に向かって努力し、成長していく指導を徹底している。
それだけではない。行事やクラブ活動が活発なことも大きな特色だ。こうした活動を通じて自主性を育み、主体的に動ける力を養っている。小俣力校長がこう話す。
「クラブ活動や文化祭などの行事では、中1から高3の生徒たちが同じ空間で活動するので、異世代間の関係性を深めるいい機会となっています。先輩が後輩を指導する場面もよくみられ、先輩の意見は教員の指導より、素直に聞くことができるようです」
城北の理科教育
特徴あるのが理科教育だ。理科実験室は中学棟に2つ、高校棟に6つもある。高校棟の実験室は物理と化学が各2教室、生物と地学が1教室ずつある。授業が重なっても対応できるつくりとなっている。こうした環境の下、実験や観察を多く取り入れ、生徒の理科力を伸ばしている。化学担当の中村純教諭が言う。
「理科は日常生活に深く関わる学問です。実験では授業で得た知識を応用し、身の回りの現象と教科書に載っている内容がどう関連しているのか、自分で考えていく力を身につけてもらうことをめざしています」
特に、中1では実験の機会を多く設けている。年間20〜25回の実験を行い、レポートを作成する。その際、グラフやスケッチを駆使したレポートの書き方も身につけていく。
こうした実験の成果を発揮するのが、中学の3年間で、夏休みに各自で進めていく自由研究だ。そして、自由研究の発表会を実施してから今年で29年目になる。この取り組みを始めたきっかけについて、小俣校長が言う。
「本校では、中学生の約8割が運動部に所属していますが、運動部の中にも理科好きな生徒がたくさんいます。そういう生徒の輝く場も作りたいと考えました。好きなことや興味があるものについて研究していくことが、自分に自信を持つきっかけにもなっているようです」
自由研究では各自で設定したテーマの下、夏休み中に実験や観察に取り組む。テーマを設定することが最も大変だという。理科教員は生徒がテーマを見つけられるよう相談に応じるほか、実験器具や薬品の使用などについてもフォローしている。地学担当の竹村英紀教諭が言う。
「授業から離れて、興味のあることを研究できる絶好の機会なので、楽しんで取り組んでもらいたいと考えています。ただ、好き勝手にやらせてしまうと研究の形になりませんし、危険なこともあります。そこをうまく誘導していくのが理科教員の役割です」
自由研究では、身近なテーマだけでなく地震や津波など、そのとき話題に上っているような現象について研究する生徒が多いという。毎年、約900の自由研究が9月1日に提出され、理科4科目の内容に応じて教員がチェックし、各科目で金賞・銀賞・銅賞の入賞者を決定する。金賞受賞者の作品は、文化祭で展示・発表される。その中から来場者の投票も考慮して優秀作品が選ばれ、受賞者は発表会でその研究内容を披露する。
自由研究の優秀作品は、日本学生科学賞などの学外のコンクールでも多くの入賞を果たしている。また、自由研究で自主的に探究する面白さに目覚めた生徒は、その分野に強い大学へ進学したり、研究者を目指す生徒も増えているという。この取り組みは進路や職業選択にも大きな影響を与えているようだ。
取材日:2015.6.6