学校独自の本数検など多彩な取り組みで、
自分で学ぶ習慣を身につける
本郷中学校・高等学校
1922年の創立以来、有為な人材を数多く輩出してきた本郷中高。ここ10年で、大学進学実績が飛躍的に伸びるとともに、運動部や文化部など、課外活動も活発に行われている。その教育方針と今後のビジョンについて、佐久間校長に話を聞いた。
ー教育方針である「文武両道」「自学自習」「生活習慣の確立」についてお聞かせください。
佐久間 本校は今年、94年目を迎えました。教育方針の三本柱のうち、「文武両道」は創立当初から引き継がれてきた精神です。
「文武両道」の“武”はスポーツや武道というイメージがありますが、本校の場合、勉強以外に学校生活を充実させるものとしてとらえています。運動部については、以前から全国レベルで活躍している部が数多くあります。文化部についても、地学部が「第40回全国高等学校総合文化祭」の東京代表に選ばれたり、社会部が「首都圏の中高生が考える鹿屋市の抱える100の課題コンテスト」で最優秀賞を受賞するなど、最近の活躍には目覚しいものがあります。
また、「自学自習」についてですが、本校には中学受験を通して、与えられた課題をきちんとこなせる生徒が多く入学しています。しかし、自主的に勉強しなければ本当の力にはなりませんから、中高時代に自分から積極的に勉強できる生徒を育てたいと考えています。そうした取り組みの一つが本数検です。これは数学の教員が独自で作った数学の検定試験で、毎学期初めに行っています。得点によって段級位制を採用しております。中学1・2年はそれまで学習した全ての内容が試験範囲ですが、中学3年以降は学年に関係なく同一問題で試験を行っています。そのため先輩や後輩の得点が分かりますので、励みになりますし、自身の勉強の手ごたえもつかめます。こうした取り組みによって、生徒自身、自分が何をすべきか考えながら学ぶ習慣が身につき始めました。その結果、早慶などの大学合格実績が上がっています。
また、生徒自身で学ぶ姿勢を身につけるためには「生活習慣の確立」が不可欠です。本校では全生徒が生活の手帳を活用することで、自分の生活を振り返りながら、将来を見通していく訓練をしています。こうした三つの教育方針はどれも自分の力で充実した学校生活を送るためには欠かせません。
近年、グローバル社会で活躍する人材の育成が急務となっています。そうした人材は本校が創立以来、目指してきた人物像と変わりありませんが、教育方法については時代のニーズに対応していく必要があります。そこで、生徒が自由に使える学習空間“ラーニング・コモンズ”を設置しました。ディスカッションや自習、クラブのミーティングなど、自分たちで使い方を考えながら学べる場所です。受け継いできた教育を生かしつつ、これからの社会で求められる教育についても対応しています。
ー今後のビジョンについてお聞かせください。
佐久間 先輩・後輩との関わりは、学校生活においてとても大きなものです。その関係をこれまで以上に深め、発展させていきたいと考えています。例えば、今年から、推薦で大学に合格した高校3年生に、3学期の間、中学生を指導してもらう取り組みを始めます。推薦で大学に進学する生徒は多くありませんが、彼らは勉強とクラブ活動を両立してきています。勉強や学校生活に悩んでいる後輩に対し、親身に指導をしてくれるはずです。このほか、卒業生の保護者が、在校生の保護者向けに受験時のアドバイスをする講演など、様々な取り組みを行っています。こうした縦のつながりを今後、さらに広げていきたいと考えています。
受験はある意味、作戦の立て方で決まると言っても過言ではありません。進路選択は生徒自身に任せていますが、「入学したい大学しか受けない」というような受験の仕方は避けるよう指導しています。たとえ浪人を選んだとしても、自分がどのレベルの大学まで現役で合格できたか、基準を知っておく必要があるからです。
また本校には、本数検などの独自の取り組みによって、楽しみながら自分で勉強する雰囲気があります。誰にどれだけ教わったかではなく、自分でどれだけ解いたかが、最後の伸びにつながっています。10年前と比べると、学校行事なども生徒主導で行われるようになりました。少しずつ、自学自習の精神が浸透してきたことが、現在の進学実績を支えているのだと思います。
取材日:2016.6.6