グローバルとICTに対応した
最先端の教育を実現次世代に求められる人材を育成する
城北中学校・高等学校
「人間形成と大学進学」を教育目標とする城北では現在、さまざまな改革が進行中だ。今後、グローバル化やICT教育について、新たな取り組みを進めていくという。その改革とこれからの教育について、紫藤潤一教諭、井上昭雄教諭、清水団教諭に話を聞いた。
2020年の大学入試改革に向けて英語の4技能(読む、聞く、書く、話す)が重視される中、同校では今年4月から国際教育委員会を設立。グローバル社会で求められる人材を育成するため、国際教育の改革に着手している。
例えば、20年前から実施している夏のオーストラリア語学研修では、今年から語学研修の前後にも研修を取り入れた。語学研修は夏休みを利用した15日間の研修で、中3と高1の希望者を対象としている。事前研修では、参加生徒への動機付けを行い、研修へのモチベーションを高める。事後研修では、研修での体験をまとめ、英語でプレゼンテーションを行うことで、研修の成果を定着させていく。今回の語学研修について、国際教育委員会委員長の紫藤潤一教諭は次のように言う。
「今年の研修で一番驚いたのは、事後研修の発表の順番を決める時、全員が率先して手をあげたことです。事前研修と本研修、事後研修を通して積極性を養うなど、生徒たちの意識が変わったようです」 今年の語学研修には約70名が参加した。午前中は大学で、少人数グループで語学力を高め、午後は現地の小学生とのアクティビティを通して文化交流を行った。また、企業訪問も実施。キャリア教育の一環として、大学受験の先の将来の職業について考える機会にもなった。
また、中3と高1向けに期末試験休みの3日間を利用して実施しているイングリッシュ・シャワーを、今年度から中1・中2にも門戸を広げた。イングリッシュ・シャワーでは、5、6人の生徒に1人のネイティブ講師がつき、ベーシッククラスでは自己表現、アドバンストクラスではディスカッションやディベートを行った。今年は170名の生徒が参加した。
一方、昨年度から始まったイングリッシュテーブルは、ALT(外国語指導助手)と英語で話しながらランチをとる。和気あいあいとした雰囲気の中で会話ができ、英語を使う楽しさを実感できる。 さらに今年、図書室には海外大学進学や留学向けのコーナーを設置した。今後、ターム留学を含めた長期留学や、トップ層を対象に現地の大学生と交流するプログラムなど、さまざまな取り組みを委員会で検討中だという。
通常の英語の教育体制の整備も進んでいる。今後はタブレットを使用した授業なども順次取り入れていく。紫藤教諭が言う。
「まずは、中1で英語嫌いをつくらないことを重視しています。本校にはシャイな生徒が多いのですが、グローバル社会では外に出て、自分をアピールすることが大切です。そのために生徒のレベルに応じた多彩な取り組みを実施していきたいと思います」
最先端のICTを活用した教育
昨年度から学校全体のICT設備について、ハード・ソフト両面の整備を進めている。今年は校内全域にWi-Fiを配置し、アクセスポイントを100ヵ所設置。職員室だけでなく、教室や体育館、プールなど、授業が行われる場所での使用が可能になった。また、昨年7月から教職員全員にセルラー型のiPadを配布し、授業への活用に向けて準備を始めている。今夏には生徒用に160台のセルラー型のiPadを用意。50の普通教室に大型テレビモニターを設置し、授業での利用を開始した。
例えば、清水団教諭の数学の授業では、生徒一人ひとりがiPadを使いながら授業を受けている。iPad上で証明問題を解き、できた人から順に黒板の横に設置された大型画面に答えが映し出される。生徒が問題を解く過程を教員が把握しながら授業を進められるメリットがあるという。
また、井上昭雄教諭の物理の授業でもiPad上の方眼紙にペンでグラフを書くなど、ICTを活用した多彩な取り組みを実施している。それだけでなく、井上教諭の授業はアクティブ・ラーニングをベースとしているという。生徒が自分で調べて、教え合うなどのグループワークを授業の中心に据えているのだ。その狙いについて、井上教諭が次のように説明する。
「生徒のモチベーションをあげることが最大の狙いです。授業では、与えられた課題を全員が解決していきます。分からない生徒は友達に教わることで、分かるようになりますし、できる子は教えることでより理解を深められます。主体的に授業に参加し、課題に取り組むことで、モチベーションを高く維持しながら授業を進めることができます」
現在、清水教諭や井上教諭のほか、4人の教員がICTを活用した授業を行っている。今後は、生徒の反応や理解度を見ながら、他の授業にも取り入れていくという。清水教諭が言う。
「社会に出ると、自分で考え、問題を解決していく力が必要になります。そうした力を養い、卒業後、日本や世界で活躍していくために、中高時代にどういう教育が必要か考え、いろんな可能性を模索しながら生徒の主体的な取り組みを喚起していきたいと考えています」
取材日:2016.6.6